L'art de croire             竹下節子ブログ

2016年 12月 19日 ( 1 )

アレッポのカトリック司教の証言

アレッポの惨状を見るのはつらい。

反政府軍に300人ばかりのイスラム過激派がいようとも、ためらいなく病院を空爆していくような政府軍(ロシアやイランも加わっている)のやり方は正当化できない。

シリアではこの5年で30万人の戦死者、うち9万人が子供も含む非戦闘員という犠牲者を出し、故郷を捨てた難民は何百万人に上る。

クリスマス気分になれない。

そんな時、アレッポのマロン典礼カトリック教会の司教の証言記事を目にした。 

1971年生まれ、40代なのに髪が真っ白で、それでもにこやかな笑顔が印象的だ。

2015年4月26日、アレッポの聖エリアスカテドラルの屋根が2発の爆弾によって破壊された。

アレップ生まれで25歳に司祭叙階されたヨゼフ・トブジ司教はその年のクリスマスに司教として着座した。

シリア内戦とキリスト教の関係は複雑だ。

これまでもこんな記事、

こんな記事

こんな記事

こんな記事を書いてきた。

イスラムがマジョリティだが「国教」を定めないシリアは、キリスト教コミュニティも守ってきた。
キリスト教会がアサドの共犯者だと言われるのもそのためだ。

実際、今回アレッポが政府軍の手に渡ったことを、「キリスト教徒の解放」などと形容する人すらある。

イラクのサダム・フセインが政教分離でキリスト教徒もリスペクトしていたのが、英米軍の侵攻によって体制が崩壊した途端に、イスラム過激派やISに占領されてキリスト教徒が激減したのと基本的には似ている。

まずはトブジ司教の話を聞いてみよう。(La Vie No.3720より)

----戦争は死です。私たちはこの死を生きています。アレッポの住民は毎日、自分は爆弾に当たるか銃弾に当たるか、死ぬのか生きるのかと不安を抱いています。安全な場所はどこにもなく、家の中にいても、窓から砲弾が飛び込んで家族全員が死ぬこともあるし、建物が崩壊して下敷きになることもあります。

(このインタビューは今回の政府軍侵攻以前のもので、東側が反政府軍やイスラミストの統治下にあり、西側が政府軍で、キリスト教徒の大部分は西側にいた。)

数か月前私の住居の前で砲弾が炸裂し、私は3日間、地下室で寝ました。洗礼式の12倍の数の葬儀を司式します。私の眼前で死んだ人も3人います。

私はアレッポで生まれ、毎日曜日、教会の鐘の音と共に父に起こされ、用意されていた朝食を食べて5人の兄弟姉妹と共に車でミサに向かいました。イエスは友のような存在になりました。
ボーイスカウトに14歳まで、その後キリスト教学生グループに入りました。

19歳の時、助祭だった兄と一緒に教会にいる時に、30秒間、心臓が高鳴り、大きな愛を感じました。
半年間迷いましたが、ある司祭から「跳べ、後は主が答えてくれる」と言われて、跳びました。

当時のアレッポの生活はスペインのリズムでした。
遅く起きて遅く寝る。
シリア第一の産業都市で、世界中に輸出している企業がいくつもありました。
職を求める人々がシリア中からやってきました。-----

うーん、こう聞くと、あらためて、いろいろなことを考えさせられる。

私も「観光都市」だったアレッポを間接的に知っている。有名な「石鹸」にもお世話になった。

この司教の話をここまで聞く限りでは、フランスに住むフランス人の司祭のライフ・ストーリーと変わらない。

「独裁者」が君臨する軍事政権で虐げられていた人、という部分はひとつもない。

けれども、藤永茂さんのブログを読むまでもなく、中東情勢におけるアメリカやトルコの思惑も見え見えだ。

その中で、ロマン典礼のカトリック教会って、どういう立場で何を考えているのだろう。
そして、つい数年前まで、少なくとも司教にとっては「平和に繫栄」していたはずの町が、このように完膚なきまでに崩壊させられてしまうなど、なんという悪夢だろう。

こんなことが実際に起きたのだから、世界の他の地域の「平和で繁栄」している都市が実はどういう地雷を抱えているのか、どういう欺瞞の上に見かけの繁栄がなりたっているのか、などと考えると、おそろしくなる。

2011年に反政府軍の台頭が始まりアサド政権が過酷な弾圧に踏み切ったときも、アレッポの住民には、まだ、それが遠い場所の出来事のように映っていた。(続く)
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by mariastella | 2016-12-19 04:23 | 宗教



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