L'art de croire             竹下節子ブログ

2017年 02月 13日 ( 1 )

『沈黙』をめぐって  その9

スコセッシのインタビューの続き。(カトリック雑誌より)

--- 『沈黙』の最期にロドリゴの棺の中に小さな木の十字架がある意味は?

これは原作にはない。私は何年も、エピローグを読んでいなかった。エピローグに東インド会社のオランダ人によって、ロドリゴが何度も棄教の宣言をさせられたとある。つまり、彼は何度もキリスト教に戻ったのだ。遠藤は彼が信仰を持ち続けていたと言いたかったのだろう。遠藤は別のところで、第二次大戦後にイエズス会を去った還俗司祭を1950年代初めにあるレストランで見かけたことを書いている。食事が出された時、その人が十字を切って食膳の祈りをするのを見たという。それもヒントになった。信仰は何かとてもパーソナルなものになったのだ。

(これは今のフランスでは決して珍しくない妻帯司祭の例にもある。彼らの多くは教会法上、司祭職を続けることはできないけれど、信仰はまったく変わらないと言っている。制度としての宗教のさまざまな制約に抵触することで帰属を放棄せざるを得ないことと、キリストの愛に生き、弱い立場の者に寄り添い続けることは別だ。それこそパウロが割礼の有無についての議論の中で「わたしたちは、義とされた者の希望が実現することを、“霊”により、信仰に基づいて切に待ち望んでいるのです。キリスト・イエスに結ばれていれば、割礼の有無は問題ではなく、愛の実践を伴う信仰こそ大切です。(ガラテヤ5)」と言っているように、キリスト教は「軛としての律法」から人々を自由にするために出発した。しかし、典礼や規則の体系を伴う宗教という社会的な表現なしには「信仰」は形にならない。
人間は社会的存在だから、生まれた瞬間から、時代や場所、所属社会の文化や伝統を背負っている。「宗教」は長い間そのような逃れられない属性の一つだった(サウジアラビアのような国に生まれれば今でもそうだ)。今の「先進諸国」では信仰の有無も、宗教の有無も強制されない。「棄教」の形も進化し続ける)

---信仰とは、共同体で分かち合うことがなく心の奥で生きる親密なものであり得ると思いますか?

全くそう思う。信仰は日常の行動を通して生きることができる。宣教師の役割は変わった。助け合いの次元はもう布教の中にない。「国境なき医師団」のような様々な団体は天使の働きをしている。信仰のあるなしにかかわらず義となるやり方で働いている。

(特定の共同体への帰属意識がなくて決められた典礼に従わないで生きることは難しくないが、宗教行為を通して表現しない信仰は、やはり他者との関係の中で生きられなければ意味がない。一人で自分の「無病息災」を祈っているようなものは信仰ではなく別の次元の原始的な「神頼み」に過ぎないのだろう。「宗教」としてのカトリック教会でさえ、今の教皇は教会の外へ出ていきなさい、野戦病院であれ、などと言っている)
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by mariastella | 2017-02-13 04:32 | 映画



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