L'art de croire             竹下節子ブログ

2017年 02月 27日 ( 1 )

ル・ペン、バイルー、メディ・メクラット

また、寄り道。

マリーヌ・ル・ペンのベイルートでのイスラム・スカーフ拒否や、バイル―とマクロンの共闘についてさらにいろいろな記事などを読んだ。今朝26日にバイル―のインタビューも耳にした。

ル・ペンについては、極左のメランションが評価したのは極右の取り込みに必要だとか、あれはレバノンのムスリムに向けた言葉ではなくて、ただフランスでの自分の支援者に向けたパフォーマンスだとか、ローマ教皇に会うんだったらヴェールをつけるにちがいない、とか言われていた。

EUの公金疑惑問題が露わになればなるほど支持率が上がるというのは、トランプの暴言が全くマイナスに働かなかったのと似ている。

バイル―とマクロンについては、「地に足がついていない」感じのマクロンに対して「地に足のついた」地元の基盤があり実績もあるバイル―が並ぶことがかえってマイナスになる、マクロンの売りはそのヴァーチャルさと若さなのにその両方ともダメージを受ける、という意見もある。
まあ私のように、バイル―のおかげでむしろ信用が増したと感じる人も多い。

そしてバイルーは、「大統領になる」ことを想定する候補者というのは、大統領の役目が「公正(司法)を守ること」、「つまり司法のシステムや現在の制度、メディアの表現の自由を守ることだ」と言う。これは、事情聴取に応じないル・ペンや、スキャンダルはメディアの陰謀だ、司法も先入観を持っていると居直るフィヨンらを批判しているわけだ。

この辺も、「メディアは人民の敵」みたいな暴言を吐いているトランプ大統領のことも意識しているのだろう。

そのほかに、SNSについて考えさせられる話題があった。それは、いわゆる移民の子弟のゲットー化していると言われているような地域の24歳の若者メディ・メクラット、しっかりとした知見をブログで展開し、他のメディアにも取り上げられて、「当事者の星」のような扱いで共和国主義の成果、若い世代のムスリムに期待できる希望の存在として人気を博していたという青年の話だ。何しろ一流の出版社(le Seuil)から本まで出しているし、様々なディベートに招待される常連だった。この人が、実は、別のハンドルネーム(マルスラン・デシャンというフランス人っぽい名)を使って、政治家矢シャルリーエブドを(実際のテロの前から)誹謗し首を斬るといったり、ユダヤ人、同性愛者、黒人にもひどいヘイトスピーチを2015年まで延々とtweetしていたことが明るみに出た。
本人もそれを認めて、あれは自分の中のもう一つの自分、悪の声、ジキルとハイド、と居直っている。過激がどんなものなのか、挑発して試してみたかったと言ったり、二重人格だと言ったりもしている。彼を持ち上げていたメディアにとってはすごいショックだった。

今の世の中、市井の名もない青年がブログ一つで、寵児になることもできるし、一方で匿名に隠れてどんな醜く下品なことでも堂々と書き散らすことができるのだと今更ながら驚く。せっかく一方で社会的に認知されたのだから、リスク管理というか、tweetを完全に消去するとか、メディアの視聴者が期待することだけを発信するにとどめるとかで満足できなかったのだろうか。

だれでも本音と建て前というのがあるのはもちろん分かるけれど、例えばヘイトスピーチはれっきとした犯罪だし、たとえ本音で思っていてもそれを口にしたり文字にしたりするどのような必要があったというのだろう。見たところはいかにもそこいらの「当事者」で、麻薬のディーラーになったりジハディストになったりしても不思議ではないという偏見で見られる「タイプ」である。だからこそ彼の発する知的で建設的な言葉が高く評価されていたのだ。
(今は一転して、不当に攻撃されて身の危険を感じるから一時フランスから出る、と言っている。差別されている側に落とし込むつもりなのだろうか)

「フランス語」一般に言えることだが、フランス語というのはその気になれば、だれでもしっかり内容のあることが言える言葉だ。いつも感心するのだけれど、いわゆる知識人などは当然としても、テレビなどに出てくる「一般人」の体験談などでも、中高生から超高齢者まで、理路整然と分析したり判断したりしている。スポーツ選手などもそうで、今朝も21歳のサッカー選手がラジオで延々と、すごく論理的で説得力のある発言をしていた。

日本だとスポーツ選手は「お相撲さん」を筆頭になんとなく口数が少ない、というイメージがあるし、口数が多いものは軽薄だととられることすらある。

それこそ今はSNS文化によって変わってきたけれど、手紙ひとつ書くにも、気候の挨拶みたいなもので雰囲気を作ったり、相手との年齢を含めた上下関係の枠をまずはめたりと「本題」の部分への切り込み角度が鈍くなる。

私自身もフランス語で書いたり話したりするときの方がずっと楽に言いたいことのエッセンスを言える。このブログには「想定読者」がいないので楽だけれど。

(でもこう毎日書いていると、近頃「ブロガー」さんになったような気がしてきた。よく見ると、毎日更新をしている人も少なくないし。で、たいていの人は、どの記事にも整合性があるというか、ぶれない。そんな安心できるブロガーさんが他のハンドルネームで差別や憎悪を吐き出しているというのがもし分かったら、やはりショックを受けるだろうなあ。ハイド氏は内輪で飼い殺ししておいてくれないと困る)
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by mariastella | 2017-02-27 01:46 | フランス



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