L'art de croire             竹下節子ブログ

2017年 05月 29日 ( 1 )

G7サミット、マクロン、トランプ、ローマ法王

トランプ大統領は「無難にこなした」初外遊を終えて、嵐の吹きまくる自国に戻って今頃は大変だろうなあ。

もともとトランプとローマ法王の会談の三つのテーマは、移民難民、イスラム、エコロジーだった。

トランプがメキシコとの「壁」を公約した時にローマ法王は「橋でなく壁を作るのはキリスト者ではない」と言っている。イスラム教国からの入国禁止の処置も基本的に「国教のない」カトリック教会と真っ向からぶつかるものだし、オバマによるパリ会議の批准(守らなくても罰則規定はない)を無視しようという公約も、地球環境保護キャンペーンの先頭に立って回勅を出しているローマ法王と対立する。

でもフランシスコ教皇はエジプトから帰る飛行機の中の記者会見では、「会わないで人をジャッジすることはできない」と言って、トランプをあらかじめ弾劾することはなかった。

パリ条約はいうまでもなくフランスの誇りみたいなイベントだった。大規模テロのあったすぐ後だったけれど世界中の代表者を集めて成功させたという文脈があるし、京都議定書と違って、二酸化炭素の最大の排出国アメリカと中国にも批准させたからだ。

で、フランスはローマ法王がまずトランプにエコロジーのことで「説教」するのを期待していた。その後でマクロンがNATOでのトランプとの会見でプッシュして、G7で合意させる、と。

結局ローマ法王との会見はほぼ意味がなかった。

難民移民問題についてはもともと移民国家であるアメリカの内部で司法や議会が機能してトランプは譲歩せざるを得ない状況だから、ローマ法王がことさら何か言う必要はない。

イスラムへの偏見の問題にしても、ローマに来る前にサウジアラビアで「兵器産業の上客」へのリップサービスで平和を訴えたし、イスラエル・パレスティナでもちゃんと模範的にふるまった。

だから残りはエコロジー問題だけだったのだけれど、結局、「平和を目指す」合意のようなものしか出なかった。トランプに環境問題の回勅をプレゼントしているから、まずこれを読みなさい、ということになったのかもしれない。

(でもサウジでスカーフを被らなかったメラニアさんは、バチカンではちゃんと黒服で黒ヴェールを被っていたし、ミケランジェロの最後の審判の前にも夫婦で立った。メラニアさんは歴史的にはハプスブルク圏カトリック国スロバキアに生まれたのだが、当時の共産主義下で幼児洗礼は受けていなかった。現在はきっちりと日曜ミサに出るカトリックで、今回も聖母像の前に花束を捧げたり、教皇にロザリオを祝福してもらったりしていた。カトリック国の首長夫人は教皇に合う時に白服と決まっている。ヴェールはプロトコルの義務ではなくメルケルはバチカンでもかぶっていない。オバマ夫人はかぶっていた

ついでに言うと聖公会の長であるエリザベス女王は前はプロトコルに従っていたが、自分が教皇より年長になってから?は、「規制緩和」した。最後は薄いパープルのスーツだった。)

でG7に話を戻そう。マクロンのことを、最初は「上級生の運動場に出ていく下級生(高学年の遊んでいるところに混ざる低学年の生徒、または高校生の中庭に出る中学生のようなイメージ)」みたいな表現があった。

テレザ・メイやトランプだってこれが初G7だったけれど、見るからに貫禄がある。

マクロンは「貫禄」がない。若さとエネルギーでは「貫禄」に立ち向かえないのでオーラが必要だ。

で、フランスのメディアからの評価はまずまずだ。

世間では「フランス人もEU離脱を望んでいる」などという報道のされ方もあるが、

フランス人は、EUが嫌いなのではない。

フランス主導のEUは好きなのだ。

第二次大戦後、最初にドイツと和解してEUの元を立ち上げた時から、

ドイツに稼がせて貢がせて、

うちは戦勝国だけど、お宅を対等に扱いますよ、

と「政治主導」のヘゲモニーを持つ、

というEUが好きなのだ。

だから、マクロンがEUの中で存在感を増して、

イギリスは勝手に出ていくから、G7参加のEU3ヵ国のうちで、

ドイツとイタリアって、敗戦した枢軸国だしさあ(うちは占領されていたけれどそれは関係なし)、

ヨーロッパの真の旗手はイエス・キリストやナポレオンと同じ若いボクだよね、

というオーラを振りまいてくれるなら、

EUもフランス人に好感度アップというところか。

実際、メルケル首相が、環境問題の合意を妨げたアメリカの態度に不満を隠さなかったのに、マクロンはなぜかオプティミストだ。

自信満々なので、一週間後だと言われるトランプの方針表明がパリ協定寄りになることを知っているかのようだと希望的に推測する人さえいるくらいだ。

アメリカがパリ協定離脱を表明すれば中国やインドだって続くかもしれないし、批准した途上国への援助も難しくなる。マクロンがなんというのか聞いてみたい。

まあ、今は、G7の様子がネットなどを通してあちこちに配信されるので、全体としてマクロンが例の父性的演出を駆使して堂々とプロとしてふるまったのに比べて、トランプの方は、しぐさも発言も、アマチュア感がぬぐえなかった。

そういえばG7で、マクロンがトルドー首相との雑談で、「子供の話」が出て「私には孫が7人」と答えていた。

日本に昔「七人の孫」っていうテレビドラマがあったのを思い出す。

孫も七人になると、家父長のオーラが出てくるのだ。

トランプは3人の夫人との間に5人の子と8人の孫がいる「部族長」だけれど、「若い妻」がいるというクラシックなオーラでは新鮮味に欠ける。

フランスの総選挙が迫っているが、これまでは、フランス人はロジックだからいったん新大統領が選出されたら大統領の党に過半数の議席を与えて一貫性を求めるというのが通説だった。

はたしてどうなるのだろう。


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by mariastella | 2017-05-29 00:13 | 雑感



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