L'art de croire             竹下節子ブログ

2017年 09月 04日 ( 1 )

ウィーンの話 その13  ウィーンは踊る

ウィーンでは音楽関係の展示ではモーツァルトハウスや体験型音楽博物館で人気のハウス・デア・ムジークを見た。


私はウィーンのカフェにたむろしていた貧乏アーティストたちのサークルの名にちなんだ「シューベルティアード」というNPOを主宰しているのだからと、一応シューベルトの眼鏡なんかも見た。

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ウィーン・フィルの映像を見ながら、曲を選んでスコアを観ながら指揮体験(と言ってもテンポを変えられるだけだけれど)ができる人気のアトラクションもやってみたかったのだけれど、例のごとく中国人の団体が朝から詰めかけていて、指揮体験のコーナーには小学5,6年くらいの子供たちが押し合いへし合いしている。

たくさんいるのに、どの子も一曲全部を指揮する。皆が次々30秒くらいずつ分けて楽しんでもいいのに。しかも、並んでいない。一人が終わると、どこからか、強引な割り込みのできる子が登場して指揮台に上がるのだ。

部屋の後ろの席に大人が二人腰かけているから、修学旅行の付き添いかとも思うが、何の注意もしないでしゃべっている。

他の場所も中国人の子供だらけで駆け回って騒がしい。


彼らのいないコーナーで、スピノザの音楽やウィンナワルツを作曲するモノだけ「体験」した。(ウィーンの話 その2 参照)


それでも、ウィーンの音楽の歴史を眺めていき、ますます、ウィーン音楽(オーストリア音楽というよりウィーン音楽なのだ)とドイツ音楽の微妙な差に気づくようになった。


マーラーにあってワーグナーにないもの。

ハプスブルク家の繁栄の中で醸成されていったもの。

マニエリズムの一種なのだがもっと微妙なもの。


で、1814年のウィーン会議のことを思い出した。

「会議は踊る」というやつだ。

あの時、ウィーンでどんな踊りを踊っていたのだろう。

当時のカリカチュアではロシア皇帝とオーストラリア皇帝とプロイセン王が手を取り合って踊っている図(これは明らかにワルツではない)があり、イングランドやフランスは観察している。この踊りを分析した記事もある。


当時のウィーンではすでに、民衆の踊り由来のワルツがはやり始めていたという。

その百年前にはフランスの宮廷で踊られるバロック・バレーがヨーロッパの頂点を極めていたのだけれど。ウィーン会議でルイ一八世を擁するタレランがフランスに「外交官はいらないから料理人を送り込んでくれ」と要請していたそうだから、ウィーンではもはや踊りを制することはできない代わりにフランス料理の力でことを有利に運ぼうとしていたのだろう。

ともかく、皇帝たちや王たちの偽善と欺瞞と保身と権力欲とが渦巻くウィーンで、そのすべてを了解しながらうやむやにしてしまうのがウィンナワルツだったのだとしたら、ウィーンの音楽とドイツ音楽の微妙な差を説明する鍵は、きっと、そこに隠れている。


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by mariastella | 2017-09-04 01:58 | 踊り



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