L'art de croire             竹下節子ブログ

カテゴリ:フランス( 163 )

首相夫人と大統領夫人

日本についてから散々目にし耳にしたのがやはり森友学園疑惑。
国会喚問の籠池さんのキャラがユニークだ。
首相夫人はメールといい「私人」認定といい支離滅裂な状況。

思えば、フランスでは、大統領夫人といえば、法律的にはともかく、非公式の陳情窓口として表向きに機能していた。

もっとも、特別の配慮とか利益誘導を願うのとは反対で、いろいろなレベルの行政から不当な搾取や損害を受けている人の駆け込み寺という位置づけだった。

コネもなく、弁護士に払う金もなく困っていて助けを求めている人、またそういう人を助けてあげたいと思っている人が、大統領あてではなく夫人宛に手紙を書く。
専任の係りが取捨選択しているのだろうが、まず間違いなく、読んでもらえて、返事が来る。

今は政治家もローマ法王もツイッターのアカウントをもっていて、メッセージを送ると少なくとも多分オートマティックに返事が来たりするのでて、それだけで一定の満足感を得られる人もいることだろう。

大統領夫人への訴えも、フランス人ファーストではなく、誰にでも開かれていた。
お役所仕事の緩慢さ、複雑さをスルーして、弱者優先の精神があった。
必要とあらばちゃんと「忖度」なり「口利き」があって救済措置が取られたようだ。

私も、今となってはもう何であったか覚えていないけれど、シラク大統領夫人に手紙を書いて、秘書の人だかに返事をもらったことがある。日本だったら考えもつかなかった。

もっともこの「伝統」はシラクの後途絶えたといってもいい。

サルコジ大統領は就任前から妻に逃げられていたし、いったん家族でエリゼ宮入りしたもののすぐ離婚し、再婚相手はよく知られたイタリア人歌手だった。

その後のオランド大統領は、4人の子をなしたロワイヤル女史とすら結婚しておらず、就任したときにいっしょだったジャーナリストとも別れて暴露本を書かれる始末だった。
その後の恋人の女優とも一緒にすんでいない。

すでにフランスでは「夫婦」「結婚」という制度自体がマイナーになりつつあるので(これに夢を持ち?こだわるのは同性愛カップルだったりする)、「セーフティネットとしての大統領夫人」はもう出てこないかもしれない。
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by mariastella | 2017-03-28 11:46 | フランス

大統領選立候補者の睡眠時間など

フランスの大統領選に出馬して選挙運動中の候補たちの睡眠時間。

社会党のアモンは4時間で、でも移動中の車の中で10分とかの仮眠をとるのがうまく、毎日、筋トレ、スポーツなどで鍛えているそうだ。

マクロンはナポレオン並みの3時間睡眠で、週に数回、1時間のジョギング。ミーティングに出る時は丹念に化粧して目の下のクマを隠しているとか。

マリーヌ・ル・ペンは7時間睡眠で、食習慣を劇的に変え、アルコールもほとんど口にせず麻油を愛用、10キロ減量したそうだ。

彼らより年輩のメランションは、疲れたら別荘に行ってガーデニングをして8時間眠り、リフレッシュするとか。

こういう人たちは「体力勝負」というのは分かるけれど、こうして具体的に聞いてみると、なるほどそれぞれのキャラに合っているなあ、と思えてくる。

今のオランド大統領も選挙戦の前に前立腺手術をしたり、減量したりして一時は精悍な感じだったが、後は緩んだ。

選ばれた後こそ、選挙戦で見せる禁欲的な自制を全うしてほしい。
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by mariastella | 2017-03-16 00:37 | フランス

仏大統領選の候補者が日本語を話すこと

フランスの大統領選に出馬するには市町村の長による認可署名が500以上必要だ。

「面白半分」の候補や奇矯な人を取り除くためで、これをクリアできた人が今のところ7人。

フィヨン、マクロン、ル・ペン、アモン、メランションらのメジャーの他に、「へえっ」と注意を引かれたのが、UPRのフランソワ・アスリノーという今年60歳の人。

UPRという政党はこの人が立ち上げ、メンバーが600人しかいなかった5年前には500の署名が集まらずに立候補を断念したが、今は1万8000人のメンバーがいて、署名も集まり、晴れて正式に立候補という。

ユーロ、EU、NATO からの離脱を公約していて、「アメリカ嫌いの陰謀論者」というのが彼を形容する言葉だ。彼と彼の党の「躍進」もポピュリズムの高まりの表れであることは間違いない。

でも決して「政治かぶれの変なおじさん」などではなくて、フランスの政治家として超エリートのHEC、ENAを出て、財務省でキャリアを築いてきた。

それはいいのだけれど、驚いたのは「日本ファン」で「日本語ぺらぺら」で知られていることだ。このビデオで日本語をしゃべっている。


1981年に日本のフランス大使館の経済部で働いていたそうだ。

日本は欧米の植民地にならなかった数少ない国、それなのにアメリカの占領軍に憲法を押し付けられて天皇が人間宣言をしてしまった、と、なんだか「美しい国、日本」のファンのようだ。

先日の記事のウィルダースもそうなのだけれど、極右のグループで、「人種差別」だと批判されるを否定する根拠に、「自分もインドネシアとのハーフで差別された」ことで正当化する人や、

「私は差別主義者ではない、マンガのファンだから」

などという人がいる。

アスリノーも似たようなもので

「日本ファン」

であることを自分が「差別主義者ではない」ことの担保にしているわけだ。

まさに、日本は過去に「植民地」ではなかったから使い勝手がいいのだろう。

「名誉白人」、「クール・ジャパン」。

シラク大統領も日本好きで知られていたが、彼はアフリカや他のアジアの国や文化も好きだった。

ああ、そういえばアスリノーも、「オセアニアも好き」らしい。
中東やアフリカのような都合の悪い国々とちがって、日本とかオセアニアなら突っ込まれどころが少ないのかも。

ル・ペンの国民戦線にも、ある意味で広告塔のような黒人やアラブ人が加わっている。No2のフロリアン・フィリポが同性愛者というのもイメージアップに役立っている。

アメリカ嫌いのアスリノーは、

「美しい国、日本」を取り戻そうとしている首相がトランプ大統領とお友達

ってことは、スルーできるわけだ。

政治家の言説ってそんなもんだと思っても、それに簡単に取り込まれていく人々がいるのだから、「泡沫候補」だとしてもこちらはスルーしてはいけない。
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by mariastella | 2017-03-15 00:17 | フランス

フランスとイスラム その11

カメル・ダウドの2012/9/16の記事の続き。

「国際社会」が過激派対策を暗中で模索している間、サウジアラビアやイランの宗教エリートたちは多くの思想書を出版し、解説し、改宗させ、彼らの意見、イデオロギー、世界の見方を流布させていく。
そのスピードは速い。

メッカで発せられたファトワと中央アフリカの思春期の青年の頭の間には時間差も空間差ももはやない。
至る所でそれを見て、実践することができる。

このイデオロギーには資金と学校があり、ネットワークは拡大する。

過激派はどんどん時間をさかのぼり、彼らのやり方に従わない者は殺されたり、公開処刑されたり、地下に葬られたり、破門されたりする。
それに対抗するには、「原因」を攻撃するべきで、「結果」を攻撃してもどうにもならない。
それなのに、欧米諸国も、アラブの独裁者たちも「過激派」と共犯関係にある。

どの独裁政権にも、管理し、勇気づけ、存在を隠す「お抱えの過激派」がいる。
アメリカも同様だ。
石油とテロリストを同時に産出するサウジアラビアに対する姿勢を見るだけでそれが分かる。(続く)
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by mariastella | 2017-03-09 00:02 | フランス

「噂があるという噂」印象操作と「見た目」

先日の記事で、TV出のフィヨンのインタビューで先週の水曜に妻の自殺のデマさえあった、というのを受けて「自殺」という言葉を書いた。そのことを、フェミニストの友達に昨日話したら、彼女もこの言葉にショックを受けていた。

そしたら、今朝になって、「そんなデマなどなかった、むしろフィヨン派が流したフェイク」という「エクスプレス」誌の検証記事が送られてきた。

これを読むと、そうか、「噂がある、という噂」を流すのも「印象操作」のひとつなんだなあと思った。

私も友人も「自殺」という言葉に弱い。相手がいかに正しくなくても、追い詰められて死んでしまったなどという状況になれば猛烈に自分を責めるタイプだ。

政治家なんてみんな「役者」だなあ、と改めて思う。うまい「役者」でなければ政治家になれないのかもしれない。

「役者」だから「見た目」も大切。

トランプ大統領がもし170cmくらいのアメリカ人として「小男」だったら、プーチンやサルコジくらいだったら、あの暴言が同じように通用しただろうか。

今のフィヨンは伝統的な「フランス大統領」の「絵」としては、一番似合っている。
ル・ペンは「女」、マクロンは「若造」、と潜在的な弱点を持っている。
それを逆手にとって「新鮮」とできるかどうかはまた別問題だ。
緑の党のジャドはトランプと同じくらい高身長だし好漢だが、彼が組んだアモンは何だか貧弱だし「大統領顔」ではない。
今にして思うと、あれほど低身長を下品に揶揄されたサルコジが、あれほどのカリスマを振りまいたのは不思議なくらいだ。

プーチンもすごいなあと思う。ナポレオン・コンプレックスというのがあって、「同じ種では体が小さい方が攻撃的である」という説も一時流布していた。

今のようなネットの時代、「見た目」がますます拡散されるから、国際舞台に立つ政治家は大変だし、政治をチェックする方も「見た目」に惑わされない識別力が必要だけれど簡単なことではない。
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by mariastella | 2017-03-08 19:59 | フランス

フィヨンの奥さんと日本の首相夫人

フィヨンは「晴れて?」新たに共和党からお墨付きをもらってリスタートの様子。

私の周りではジュッペが不出馬スピーチで見せた知性が評価されている。

でも、周りのインテリ左派無神論フェミニストが、フィヨン夫人のことを攻撃しているのを見て論理的ではないと思った。

フェミニストらは、

自ら「夫の仕事に関わったことありません」と言っていた「ウェールズ出身の田舎住まいの5人の子の母」であるフィヨン夫人は、園芸をして料理して編み物をしていたのだから公金を横領した、と切って捨てるのだ。

一方、私の周りのこれはリタイア世代の人たちで妻子のいる人たちは、

「自分たちの母親も父親をいつもフォローしていた。」
「自営業者や第一次産業に関わる人は妻も夫と全く同じに働いている。」
「自分の妻も、海外赴任の自分をあらゆる点でアシストしていた。給料をよこせと言われていたくらいだ」
「フィヨン夫人は弁護士の資格を持っている。微妙な問題について絶対に信頼が置けて能力もある妻にアシストしてもらったのは不思議ではない」

などと、口をそろえて弁護。

私は一応、彼らに、

「それは、私企業や私人ならいくら妻に払おうと問題ないけれど、公設秘書として公金を払った時点で問題なのよ」

と反論したのだが、

「専業主婦だと宣伝していたくせに普通の人には考えられないくらいの高給をもらっていたのがけしからん」

みたいな嫉妬めいた攻撃よりは好感が持てるなあと思って、

このことをフェミニストの友人に話したら、

そういう観点からは見ていなかった、

と認めた。

インテリ左派フェミニストたちはみな自分で自分の生活費をしっかり稼いでいるから、「私、働いたことありませーん」という存在自体を忌避しているのだ。

海の向こうの日本では、「アッキード」疑獄が取りざたされているようで、つい比べてしまう。

「私の妻を犯罪者扱いにするのか、失礼な!(怒)」

なんて「むきになる」と言われている日本の首相のことを、「愛妻家」だなどという日本の男っているのかなあ。「昔の話」でなくて現役の首相の現在進行形の話なのだから、重要度も責任度もまったく違うものだけれど、「妻を守る」というスタイルで一定の共感を一定の男に口にさせたフィヨンのケースを見ていて、いろいろ考えさせられた。

逆に、「妻を守るフィヨン」という形で共感を口にしたフランス女性は見たことがない。

フィヨン以外には共和党の候補は考えられないから、
フィヨンの政策に共感していることには変わりがないから、

という冷静なものばかり。

国民性、世代の差、男女の差、観察していると興味深いことばかり。
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by mariastella | 2017-03-08 06:06 | フランス

ペネロップゲート

これはさっきの続き。寄り道です。

わずか4ヵ月前には次期大統領の最有力候補と言われていたフランソワ・フィヨンが、選挙まで2ヶ月を切った今、ここまでスキャンダルまみれになるとは、確かに信じがたい。

ラジオのフランス・キュルチュールでは、過去の大統領選でバイルーを応援した中道の政治家(ジャン=リュック・ブルランジュ)がフィヨンのことを「ずる賢く傲慢で腐敗している、右派最悪の候補」、などと言った。

それ自体がすごいのではなく、そのことをフィヨン派から抗議されたこの名門ラジオ局がその政治家を大統領選後まで出入り禁止として、それに怒った政治家がもう二度と戻らないと言ったなどというやりとりがすごい。

日曜のフィヨンの集まりにしても、

2012年、結局はオランドに負けたサルコジが投票前の数日前にトロカデロに集めたのは20万人だったが、フィヨンのは実は5万人にも満たなかったとか、

あれは「ポチョムキン村(クリミアの総督グレゴーリイ・ポチョムキンがエカテリーナ二世の視察のためにでっちあげた村)」だったとか(それをいうならあらゆる政治のミーティングやマニフェストは「ポチョムキン村」の一種という気がするが)、

フィヨン夫妻の夫婦愛と結婚の神聖さに感動したとか、

ざっとみてもいろいろと騒がしく言い立てられている。

ある銀行家は、フィヨンがこのまま突っ走るのは、その方が、財政的にペイするからだと細かく計算しているし

今日(月曜)の夜の番組はまだ見ていないから分からないけれど、このようなリアクションと、その展開と、それが結局どういう結果になるのか、今度の大統領選はえらく波乱含みで、フランス人のメンタリティを考える上ではとても興味深い。
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by mariastella | 2017-03-07 02:49 | フランス

フィヨンがんばり、ジュッペが引く

アラン・ジュッペが出馬しないとさっき宣言した。

当然の判断だ。

共和党メンバーだけでなく4百万人が投票した予備選で大きく水をあけられてフィヨンに敗れたのは、「政策」のレベルであって、「正直さ」ではなかった。ジュッペと言えば、パリ市庁の架空雇用で「有罪」になって、執行猶予の間カナダに逼塞していた経歴があるのだから、今回、過去の、妻の架空雇用疑惑で退陣を迫られているフィヨンの後釜というのはジョークになる。左派との政権交代での改革、新風、をイメージさせるのも、今年72歳になるジュッペには難しい。

昨日のトロカデロの集会も、最初は、一連のスキャンダルについてメディアや司法の陰謀だ、戦争だ、などと息まいて、すっかり極右ル・ペン化していたフィヨンだが、上品に謙虚にまとめあげて、彼を見捨てていない層に好感と満足を与えたと思われる。

離婚するだの、妻が家出した、自殺した、などひどいデマが飛び交っていたここ数日だが、昨日は妻の方もはじめて新聞のインタビューで夫を支える決意を述べていた。

夜の公営放送のニュースでのフィヨンのインタビューを見たが、かなり突っ込んだ皮肉なことを言われていたが、誠実にかわす様子は、ル・ペンやサルコジやマクロンやメランションよりも「大統領」っぽかった。

私はそもそもフィヨンの政策に批判的だが、ともかくここはフィヨンにしっかりとどまってもらわなくては、彼が消えると、昨日トロカデロに集まった人の半分はル・ペンになびくと懸念される。

今の状態では、決選投票はマクロンとル・ペンでマクロンが勝つというのが統計上の「予想」なのだが、その差は縮まりそうで、五年後にはどうなるか分からない。共和党のような伝統的な保守派と、伝統的な社会党がしっかり両方でバランスを取り、牽制しあっている形での「中道」の勝利なら期待が持てる。どこが勝っても、今の日本のように各種の「強行採決」がどんどんできてしまうような体制にはなってほしくない。
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by mariastella | 2017-03-06 21:16 | フランス

フランスとイスラム その8

ケペルによると、イスラモ・ゴーシストたちは2012年の国会選挙に「(マグレブ系)移民の子弟」がはじめて400人も立候補したことを「政治参加の意思」として高く評価していた。
『ル・モンド』紙も同じ路線だった。
けれどもそれは実は、セラフィスム(イスラム過激派)が移民の子弟に浸透したことの表れでもあり、アラン・ソレルら、マルキシストを称する極右反ユダヤ主義者と、「移民の子弟」の世界に連携が生まれることにもなった。

ケペルはまた、フランスにおけるアラビア語学の伝統の終焉を語る。

移民の増加によってアラビア語人口そのものは増えているにもかかわらずだ。

フランスと言えば、一昔前までは、そうそうたる哲学者「オリエンタリスト」たちが存在していた。

今は、アラビア語は「移民のことば」であり、社会学者や政治学者が、移民の子弟のゲットーについて研究するのにアラビア語は必要ないと言っている。

政治エリートを輩出するパリの政治学院でケペルらが立ち上げて25年間続いていたアラビア語を含むアラブ世界の講座は、2010年に閉鎖された。

それ以来、「アラブの春」事件が起こり、フランス生まれのジハディストが生まれている状況なのに、政治学院でアラビア語を学んだ学生は一人もいない。

今やアラブ世界について学びたい学生は外国に出ていくありさまだという。 (続く)
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by mariastella | 2017-03-04 00:28 | フランス

フランスとイスラム  その7

これは前の記事の続きです。

フランス国内のムスリムを「ISのテロのせいで混同される加害者意識の罪悪感」から「イスラモフォビーの差別の被害者」感情でまとめあげようというCCIFの戦略についてのジル・ケペルの説明は納得がいく。

では、少なからぬメディアや、左派の知識人、社会学者らがそもそもCCIFに呼応するのはどうしてだろう。

実際、フランスのメディアにおいては、何十人という犠牲者を出したニースのテロと、たった一人のムスリム女性が市の条例の行き過ぎた執行によってニースで不当な扱いを受けたという事件とをほぼ同じ情報量で扱った。

これはCCIFのプロパガンダだけでは説明できない。

それには二つの理由がある。

まずCCIFがメディアの扱いにすばらしく長けているという事実だ。

もう一つは、イデオロギーとしてのCCIFの後ろには、イスラモ・ゴーシスト(親イスラム左派)というアクティヴな活動が連携している事実である。

若い世代のムスリムが活発な政治的発言をするようになった(その代表がボンディ・ブログ出身のメディ・メクラットで、彼はイスラモフォビーを告発するメディアの寵児となった。その彼の本性については以前の記事で書いた)。

フランスの左派知識人が彼らを応援し、持ち上げた。

社会学者のエマニュエル・トッドやメディアパールのジャーナリストのプレネルなどだ。

フランスのイスラモフォビーは、1905年の政教分離法におけるカトリックとの関係を引き合いに出して強調された。

いわく、政教分離があっても政府はカトリック司祭がスータン(黒い司祭服)を着て歩くことを禁止したわけではなかった、などだ。

フランスの政教分離とカトリックの関係は、イスラムとの関係とは歴史的にも政治的にもまったく異なっていて同列に語れないことは自明なのだが、なぜ、イスラモ・ゴーシストが「不当に差別されているムスリムの擁護」を新しいイデオロギーにしたのだろうか。

政治学者のジル・ケペルは、過去に同じ「トロツキスト」であり、同年代のエドウィ・プレネルの「イスラモ・ゴーシスム」をこう説明する。

フランスに68年五月革命の嵐が吹き荒れた時、サルトルなど左派哲学者らとともに、多くの若者が共産主義シンパとなり、文化大革命の毛沢東を支持するマオイスト、ソ連内のトロツキー主義を支持するトロツキストを自称した。

「極左」は人類の輝かしい未来に向かうメシア的な存在としてプロレタリアを理想化した。労働運動内部での多くの矛盾には気づかないままだった。 

そのうち、冷戦は終わり、彼らの理想化していた「共産主義」が「全体主義」だったことも分かり、彼らが「共闘」しようとしていたフランスの「労働者」たちも「共産党」を離れて、大量に極右国民戦線に投票するようになった。
極左活動家にとってはそれは「裏切り」だった。

そこで彼らは、極右になびく労働者たちから離れて、「共闘」の対象をフランスのムスリムに方向転換したのだ。

フランスのムスリムは、かつてのプロレタリアのようにいまだ未分化の潜在的力であって、イスラム過激派は彼らの「政党」のように見えた。
彼らはプロレタリア階級のように貧しい地域で生まれ、社会的に将来を閉ざされて、共和国市民よりもムスリムであるというアイデンティティを持つようになった。

そこで、非ムスリム労働者を極右に奪われた左派知識人の一部が、ムスリムの庇護者として、かつての「支配者と被支配者との戦い」を「イスラモフォビーとムスリムの戦い」すり替えてムスリムと「共闘」するようになったのだ。

その背景には、イスラエル植民者によるパレスティナの支配を弾劾する伝統的な親パレスティナの運動もあった。1970年代、中東からはるか離れた日本にすら「日本赤軍」ができて、テルアビブ空港の銃乱射のテロを起こしていたわけだ。

イスラモ・ゴーシストの根は結構深い。
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by mariastella | 2017-03-03 06:20 | フランス



竹下節子が考えてることの断片です。サイトはhttp://www.setukotakeshita.com/
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