L'art de croire             竹下節子ブログ

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トランプ大統領、パリ祭(7月14日、フランス革命記念日)への招待に応じる

6/28にマクロン大統領がトランプ大統領と電話で15分話して、7/14の革命記念日のシャンゼリゼでの軍事パレードにトランプを招待したのをトランプが応諾したんだそうだ。

シリアのアサド大統領がまた化学兵器による攻撃を準備しているとかいう情報でマクロンは、オバマとオランドは見逃したが今回はそんなことがあったらフランスは単独でもシリア軍を攻撃する、と宣言したばかりで、トランプも「じゃあ、うちも」ということになったところだった。

マクロンが今回トランプを招待するのも、別にアメリカ大切でトランプに尾を振っているわけではなく、どちらかというと、プーチンをヴェルサイユに招待したように自分の権威を強化するためだということがある。
同時に、トランプがパリ協定から抜けると声明を出した時に

私はパリ市民に選ばれたんじゃない、ピッツバーグ市民に選ばれたんだ」

などと言ってのけたことに対して、「パリ」を見せつけ、しかも、パリ協定に背を向けたアメリカを追い出すのではなく対話を続ける用意がある、ひいては懐柔する、という意味もある。

国民の祝日で派手に軍事パレードをするのは、社会主義国家や全体主義国家、軍事政権国家以外の「先進国」ではフランスだけだ。以前には軍隊パレードを見直す、と言った大統領候補者が叩かれたこともあった。その時の記事に私の考えも少し書いている

軍隊と言えば世界最大の軍事国家はもちろん桁違いでアメリカなのだけれど、そのアメリカのトランプを敢えてパレードに招いたことは、トランプが力の誇示の好きな人だからけっこう乗り気になるだろう、という見とおしがうまくいったとも言われる。

私自身は

力を誇示したり崇めたりするところでは魂は必ずひずみを受ける」

というシモーヌ・ヴェイユの言葉の信奉者だから、軍事パレードなんてもちろん嫌いだ。

しかも、フランスがアメリカと組んで軍事的に目立ったりすると、またテロリストの標的になるだけで迷惑だという忌避感もある。

マクロンとトランプって「力の誇示好き」ってところで似た者同士なのかもしれない。やだやだ。

でもそもそも「国際政治」とは力の誇示で成り立っているのだとしたら、そういう人しか政治家にならないのかもしれない。

プーチンがインタビューで「力のバランスだけが力の行使を防ぐ」と言っていたけれど、彼の口から語られると、「抑止力」とか「必要悪」という言葉がリアリティを持って迫ってくる。

それでも平和への道は別にもあると信じながらジャン・ラプラスやアンドレ・ルーフの本を読んでいる。

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by mariastella | 2017-06-30 01:27 | フランス

披露宴のスピーチ--- 新郎の場合

週末の結婚披露パーティでの新郎の父のスピーチのことを昨日書いたが、新郎のスピーチにも少し触れると、

彼は

「今日は特に数字をひとつ挙げたいと思います。それは66です」

と言った。

666なら黙示録の悪魔の数字?かと思ったけれど、すぐに説明が続いた。

まず、フランス大統領選でマクロンが獲得した66%の数字。

そして、アメリカのトランプ大統領の不支持率。

だそうだ。

で、最後は、自分たちは3度の披露宴をやるので、2度目の今日が終わったところで、3分の2が終わるので66%だという。

66.666・・・%という気もするが。

カップルはもう数年前からロンドンで暮らしていて、去年の暮れにボストンに赴任が決まった時に、グリーンカードの取得ができるようにと、11月にロンドンで結婚式を挙げて1度目の披露宴もやったのだ。

で、今回がフランスでの披露宴、来年の夏がカナダ(モントリオール)での披露宴と決まっている。

3度とも出席する人もいるようだ。

新郎の両親は、アメリカの大学を出た母親とフランスのビジネススクールを出た父親がカナダの大学院で出会って結婚した歴史がある。両親が中東に赴任した時に息子がモントリオールの大学に留学してその後でボストンのMITで博士号をとった。

国籍もフランスとカナダとの両方を持っている。

で、息子(新郎)のスピーチの最後は、

今日は聖ヨハネの祝日です」

ということだった。

なるほど、再々従弟のイエスよりも半年前に生まれた洗礼者ヨハネの誕生日はクリスマスより半年早い6/24だ。

グレゴリオ暦でずれが生じていて、昔はこれが夏至と冬至に当たっていた。

日照時間が一番長い日と短い日が「太陽神」の儀礼の日となっていたものを、キリスト教化するために、イエスとヨハネの誕生日にあてたのだ。

で、カナダのケベック州では、17世紀の初めからフランス人がこれを広めて、1834年からはケベックの国家祝日(フェット・ナショナル)となっている。つまり、ケベックのアイデンティティと結びついた最大のお祭りなのだ。

ちなみに新郎も新婦もカトリックの洗礼を受けているが、カトリック教会での結婚式はスルーしている。

私はこの「新郎」が26年前に「コミュニオン・ソロネル」(初聖体ではなく、フランスでは11歳くらいでやる教会の行事で、まあ「元服」にやや近い通過儀礼の一種)のパーティをやった時、当時すでにルイ・ロートレックらと組んでいたアンサンブルでコンサートを担当したその時も100人くらいは集まって3日くらいかけたパーティだったけれど、もちろん両親が全面的にオーガナイズしていた。

パーティを盛り上げるコンサートだったので、バロック曲でなくほとんどがポピュラー曲やラテン・アメリカの曲だった。

今の私のトリオのMも加わった6人のアンサンブルで、食事や滞在や観光もついたいいアルバイトになっていた。

トリオのHはまだ学生だったのでその時のメンバーではなかった。

その時の少年は、翌年、父親と共にベルギーに引っ越して6年を過ごしてから単身でモントリオールで学んだのだ。

ベルギーのリセ・フランセでは最初ドイツ語を第一外国語にしていたのを途中で英語に変えていた。

その少年が、ボストンに住み、「新郎」になって故郷に戻って英語とフランス語でスピーチをしているのかと思うと、不思議だ。彼の親の世代はみな白髪となり、同世代は世界を動かしている。

私はあいかわらずアンサンブルをやっている。



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by mariastella | 2017-06-28 02:27 | フランス

泉と教会

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サルトから帰る途中で寄った教会。15世紀から建築がはじまったノートルダム ド マレ教会です。
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ORA PRO NOBIS(我らのために 祈り給え)と書いてありますね。
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教会の前に泉があります。湧き水の周りに礼拝所ができた後で、キリスト教の聖所に置き換わった典型です。

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パリに戻って来ました。観光客が歩いているのを見ると、テロの脅威とかどこの国の話かという気がしてきます。


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by mariastella | 2017-06-26 03:14 | フランス

猛暑のフランスと新大臣とドレスコード

このところパリで35度を超す日が続いている。

6月の気温としてはフランス中で戦後最高記録の日々だ。

東京と違って交通機関にも事務所にもクーラーが少ないから、通勤者はつらい。

一般の人と接触する職場はたいてい男だけにドレスコードがある。サンダル、半ズボンが禁止だそうだ。

女性はサンダルにミニのワンピースでも何とも言われないから、圧倒的に女性の方が優遇されている。

それで、男性から性差別だと文句が出るのではないかと思っていたら、昨日、ナントのバス(と市電)の男性運転手たちがスカートで出勤したのをニュースでやっていた。

スコットランドのキルトなどがあるから、そうショックキングでもない。みんなデニムのような地味なスカートだし。

確かに、今の時代、女性の方が服装規定は自由だ。

公式の場所にズボンをはいていっても、どんな丈のスカートでも、上着があろうと肩を出そうと大丈夫だ。

男性のフォーマルは、イギリスのような気候のところがルーツだからいろいろと無理があるなあと思うが、軍隊の伝統と同じで男の方が「制服」っぽいものを受け入れるハードルが低かったのだろうか。

フィリップ首相の新内閣で、国防省の名がまた変わって今度は「陸軍省(と日本語訳で出てきたが、すべての軍が含まれる)」の大臣がフロランス・パルリーになった。史上二人目の軍隊の大臣グラールに引き続いての3人目。この人はジョスパン内閣の時に政権に関わり、その後エールフランスやフランスの国鉄の要職にもついていたという経歴の54歳だ。任命されたその日にさっそく引継ぎ式をしていた。

重そうで暑苦しそうな軍隊の前にスカート姿の二人の女性が立つ。グラールはさすがに上着を着ていたが、パルリーは半袖ワンピース。

記録的暑さの日なのだから正しい選択だけれど、ずらりと並ぶ制服組の方はさぞ暑いだろうと思うとなんとなく違和感を覚える。女性が軍のトップにいるのがおかしいとかいう問題ではなくて、全軍を率いるジュピターを気取るマクロンによる周到な「印象操作(この言葉、使い勝手がいいですね)」のような気がするからだ。

バイルーやフェランのようなベテランの後を埋めたのは、結局マクロンのお仲間で、例の同い年のバンジャマン・グリヴォーだとか「マクロンボーイ」と呼ばれる36歳のジュリアン・ドゥノルマンディなどだ。

マクロンに心酔している優秀な若者のようだが、どこの香水の宣伝のモデルですか、というような見た目だなあ。

まあ、ともかく徹底的に企業型成果主義でやっていくという新政権のお手並みを見るしかない。


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by mariastella | 2017-06-23 02:48 | フランス

マクロン・チームの最初の危機?

総選挙で悠々の過半数の議席を獲得したマクロン新党、選挙に参加した大臣たちも全員当選したのに、ここにきて、選挙後の内閣再編を前にして、ひと月半前の新閣僚4人が次々と振り落とされたり自分から辞退したりした。

まず、過去の金銭スキャンダルが出てきたのにもかかわらず無事に当選したことで選挙民の信任を得たはずのリシャール・フェラン(元社会党)が、新議員たちを導くためと言って辞職したのに続いて、マクロンの当選に大きな力となった中道MoDemのフランソワ・バイルー、マリエル・ド・サルネス(この人は42議席を獲得したMoDemのリーダーとして専念するために辞めるのだと言っている)、そして国防大臣のシルヴィー・グラール(欧州議員として専念するから、と言っている。この人については前にも書いた )らだ。

MoDemは、FN と同じく、EU議員に対して交付される秘書の費用を自国内の党本部の経費に回していた疑いをかけられた。ルペンなどは、もともと反EUだから、「EUの金をフランスに還元したのだ」と言って開き直っていたが、バイルーは議員のモラルについての法案を提出したばかりなので、タイミングが最悪だった。

共和党のフィヨンを落選させた金銭スキャンダルのもとになった「妻子など家族を議員アシスタントとして雇う」ことを禁止するなど、政治家が私腹を肥やしたり身内を優先することを防ぐ法案だ。脱税がないかなど私産の透明化も推進する。

こうしてマクロン大統領下の新政府の重鎮があっさりやめてしまったので、一見するとマクロンの人選が悪かった、任命責任があることで打撃を蒙ったかのように見えるが、実はあまりそういう印象はない。

この「重鎮」たちはいずれもマクロンより年長のベテラン政治家で、この道で何年もやってきたら、みんなが当然のようにやってきた暗黙の金の使い方をしていた経歴があること自体は不思議ではない。

しかも、スキャンダルのせいで議席を失ったのではなく、再選されているのだから投票者から弾劾された形でもない。野党に問い詰められて辞職を余儀なくされたのでもない。

でも、マクロン新政権に影を落とすのはよくないから、自主的にやめた、

という印象を与える。

マクロンやフィリップ首相から勧告されて辞退したとか、新内閣から「落とされた」というイメージでもなく、組閣発表前に次々と「より役に立つ場所で働くため」に少なくとも形としては自主的に辞意を表明している。

これを書いている時点ではまだ新内閣のメンバーは発表されていないけれど、新メンバーは、よりマクロン大統領やマクロン新党の新議員たちのイメージに合致する新鮮なメンバーという可能性もあるだろう。

政治経験が浅かったりなかったりする若い人たちや一般人はまだ「地位や権力」がもたらす「甘い汁」を吸う機会がないから身辺は比較的きれいだろうと期待できるかもしれない。

最初の内閣も任命前に十分「身体検査」をされたはずだけれど、個人でなくEUから党へというタイプの資金流用の疑惑などは視野に入っていなかったかもしれないし、彼ら自身も不正の自覚などなかったのだろう、と思わせる。(バイルーさん、短い間だけれどこのモラル法案提出にがんばって存在感を発揮してよかったね。)

もちろん、内側では、しっかりマクロンやフィリップから圧力をかけられて「粛清」されたのかもしれないけれど、ともかく、外側から見ると、「人々の誤解を招くことのないように自発的に辞職した」というスタイルなので、対面は保てた。

フィリップ首相は40代だが十分ベテランで、「甘い汁」の誘惑は今までになかったのだろうか。マクロン自身は??

この2人はいくら探られても公明正大なのだろうか。

まあ、そんなに潔癖に追求していっても、抗菌グッズに囲まれて育った子供たちみたいな公務員ばかりでは免疫力がなくなるかもなあ、とも思う。

結果さえよければタレラン(政局が変わる度に時の権力者の右腕となった)でもOKだと、やはりだれでも少しは思っているのではないだろうか。

「国内」でいくら潔癖に襟を正したところで、一歩「国際社会」に出れば「陰謀論」とはいかないまでも、どんなあやしいことだってまかり通っているかもしれないのだから、「海千山千」の手腕だって必要だろう。

昨年の東京都の舛添知事のバッシングを見た時にも書いたけれど、どんな立場にも曖昧ゾーンというのはある。本当に必要とされるのは、「絶対の清廉潔白」などではなくて、時代の流れを見て、文脈を読んで、危機管理をする能力なのかもしれない。





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by mariastella | 2017-06-22 02:26 | フランス

総選挙後の声明を聞いて

(これはすぐ前の記事の続きです。)

フランス国民議会選挙の決選投票の後、またもや記録的な棄権率の判明した日曜の夜、主な党の代表が最初のコメントをしたのをテレビで見て、いろいろなことを考えさせられた。

民主主義の選挙政治という文化はヨーロッパ系言語の中で生まれたものだということが影響するのかなあ、と思うほど、政治家のディスクールはよくできている。

前も書いたが、特にフランス語は、市井の人が中身が何もない屁理屈をいう時でさえなかなか立派な押し出しの構成で驚かされる。

日本語のように寡黙が言語文化の中にポジティヴに組み込まれている国とは根本的に違うのかなあと思う。
近頃見聞きする日本の政治家の弁舌の貧しさに愕然としていたが、そもそも、「論戦」や政治的雄弁に合わない言葉なんだろうか、と思ってしまう。

今回、最初にコメントしたのは、自分自身が第一回投票でまさかの敗退をした社会党の書記長カンバレデリスだった。

この人は見るからにカリスマ性のない人で、今までちゃんと話を聞いたことがなかった。予備戦にも出ていなかったし。
今回、自分も含めて社会党が大きく敗退したことを受けて、自分の辞意も表明したのだけれど、言っていることはすごく説得力があった。

自分たちが抵抗しているのは新自由主義(マクロン)とナショナリズム(ルペン)であること、

選挙戦には敗れたが(社会の)不平等との戦争は終わらない、ということ、

今こそ「集合知」が必要とされる時だということ、

自分の責任は引き受けること、

などだ。

なんだかとっても潔くかつ信念を感じさせるし、「集合知」という言葉が気に入った。
ポピュリズムの対極にある「知性」に訴えるところがフランスらしい。
自分たちの望むのは何よりもフランスの共通善であり政権の成功を祈るという態度もいい。

その次がルペン女史の声明。

今まで4度落選していて今回が国民議会初当選だそうでけっこうご機嫌だった。
先週は3議席とか予測されていたのに、声明を出した時点で7議席は固いということだった(結局前回の2議席から8議席に「躍進」)。
「マクロン新党の圧勝」という予測に反応した人が、棄権したり共和党やFNに回って全体のバランスをやや良くしたという感じだ。
マリーヌ・ル・ペンの伴侶アリオー氏も当選したが、右腕であるフロリアン・フィリポ(兄さんも出馬していた)は落選した(EU議会の議員ではある)。
彼女も堂々と戦いの継続をまくしたてたけれど、聞いていて気分が悪くなった。

その次に声明を出したのが、大統領戦の第一回投票の時の勢いに比べるとぱっとしなかったメランションの極左「不服従フランス」党(声明の時点では19議席の予測: 最終的にも19議席だった。メランション自身もルペンと同じく初当選であり、極右と極左の代表が国会に行くことになる)だ。でも今まで存在しなかった党だという意味ではマクロン新党と同じくメランション新党だ。この人もまくしたてたが、聞いていてやはり気分が悪かった。
これだけ棄権が多いというのは市民がシステムに対してストをして抵抗をしているということで頼もしい、と言い、今のシステムに正当性がないと叫び、マクロン新党の勝利は不当だという(それなのに自分が当選していることには正当性ありだ)。 

ここ何十年もフランス共産党でさえ、投票結果を否定するようなこういう煽り方をしないのに、メランションは自己陶酔しているようで、これも気分が悪くなった。

社会党のカンバレデリスが見せた品格がまったくない。

次の共和党のバロワンは、これも話の構成に品格があった。民主主義の結果を受け入れて大統領がフランスのために最善を尽くすのを支えるという基本を押さえている。声がいいのはいつも通りだが、なんだか一回り痩せたような。まあ、みんな疲労困憊なのだろうけれど。

共和党の別の政治家ペクレスが、次からはもう社会党をまねた「予備選」はしない、と言っていた。予備選が内部の亀裂をあらわにして脆弱にしたからだという。そしてフランスは聞かれた時に自分は「左派」だというのがシックな国だから、予備戦でわざわざ右派だとレッテル貼りをする結果になったこと自体が間違っていた、と。

フランスでは左派がシック、というのをこういう風にはっきり保守政治家が口にするのははじめて聞いた。
ともかく、なにしろフランス革命にルーツを置くことを国是と決めた共和国だから、右派左派(この言葉自体がフランス革命政権にルーツを持つ)はともかく、「革新」というのが「保守」よりも知的、文化的、啓蒙的なイメージと結びついているのだ。

最後にマクロン新党のフィリップ首相の声明。
共和党から引き抜かれたこの人も、信頼のおけそうな力強い話し方をする。
「大きな謙虚の気持ちと大きな決意を持って」という言葉の並べ方もうまい。

この人の政府は、大臣たちにやるべきことのリストを与え、それがいつまでにどこまで進んでいるかを細かくチェックして、怠けていたり目標に達していなかったりしたら馘にする、というマクロン流の分かりやすい成果主義だ。
その手並みは見てみたいが、やり方を聞くと、なるほどこういう風にやったら確かに改革が進むのだろうなあ、私はこんなチームの一員になるのはまっぴらごめんだなあ、などと思ってしまう。まあ、ほんとうに「やる気満々」の人たちが憑かれたように国を動かすのならそれはそれで見ものだけれど。

マクロン新党は当選した人を集めて来週末にミーティングをして、政治家としての心得を伝授するのだそうだ。政治の素人が半数を占めているからだ。

蜘蛛のブローチの数学者も無事当選したので、今度は「政治家研修」に出るのだろう。
日本の政党が「有名人枠」で政治の素人を選挙に立てて票を取ることがよくあるけれど、その後にプロの政治家としてのレクチャー、研修ってどのくらいやっているのだろう、などと思ってしまった。

(昨日はまたロンドンでテロ、今日はまたシャンゼリゼでテロがあったらしい。ロンドンのものはイスラム教徒を狙ったそうで、アメリカで民主党支持者が共和党議員を狙ったように、なんだか、報復という負の連鎖の始まりのようなイメージだ。シャンゼリゼのものはここ最近のものと同じく「無差別テロ」ではなく警察とか警備の兵士とか治安車両などに「特化」したものだから、相対的にインパクトは少ないけれど、ノートルダムとかルーブルだとかシャンゼリゼだとかいうブランドイメージを攻撃するという意味では効果絶大なのだろう。ラマダンはまだ続く。
新展開として本当に衝撃的なのはテヘランでのテロだと思う。)

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by mariastella | 2017-06-20 02:35 | フランス

フランスの総選挙が終わった

フランス国民議会の総選挙の決選投票、
予想よりもさらに棄権が多く、
しかし予想よりもマクロン新党に対する「野党」勢力が生き残った。

これは、極右や極左の支持者は棄権率が少ないこと、
マクロン新党の独裁はまずいと判断した人たちが「どちらにしても過半数は占めるマクロン新党」にわざわざ投票することをしなかったこと

の相乗効果らしい。

実際、わざわざ投票所に行き、いろいろ議論しながら、投票はしないという人にも出会った。

新議員は23歳から79歳まで、平均年齢が50歳を切っていて、学生1名、工場労働者1名 を含むあらゆる階層の議員が誕生、与党の首相ですらマクロン新党新議員の10分の1しか知らないのでこれから親睦と研修を始めるそうだ。

マクロン新党は、アメリカやイギリスでもあったような「国民の怒り」をオプティミズムに変えるのに成功した、というのが大方の見方だ。

昔ながらの右派と左派が解体するのか統合に向かうかの微妙な段階だが、ポピュリズムはしっかりと極右と極左で花開いている。

でもポピュリズムの煽動は、エネルギーを最大には見せない、という「フレンチ・エレガンス」の対極にあるから長い目で見ると大きな力にはならないだろうと期待しよう。

マクロン新党の党首になるだろうと言われているのがマクロンと同い年のバンジャマン・グリヴォーで、私はこの人が首相になるのかと一時は思っていたけれど、あまり似たような若者を立てることを避けたのは賢明だった。

このバンジャマン・グリヴォーは、マクロンのような過剰な教祖的カリスマがないけれど、すごく好感が持てる人で、話し方も気に入っている。「マクロン新政権」の主要メンバーの中で個人的に一番ほっとさせられる人だ。私の目からはほとんど「親戚の男の子」みたいなこういう感じ。

日曜の開票後の各党代表者のコメントについていろいろ考えさせられたことは、この続きに書きます。

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by mariastella | 2017-06-19 22:44 | フランス

フランス総選挙でマクロン新党が圧倒的多数を占めるという予測について

次の週末はフランス国民議会の総選挙の決選投票だ。
このままいけばマクロン新党の圧倒的勝利となりそうで、大統領の「君主」ぶりが想定される第五共和制自体への疑問が投げかけられている。

日本で自民= 公明の与党がどんな法案をどんな形でも通せてしまっている現状を見るにつけ、フランスの未来についても誰でも心配になってくる。

日本よりましなのは、
アメリカからの圧力には屈しないこと、
ジャーナリズムがまあまあ機能していること、
デモやストなどの直接民主制の力が健在なこと、などなどかもしれない。

今回、キリスト教信徒であることを公言しているフィヨン派(=共和党。分かりやすいように大統領選候補だったフィヨン派とこの記事では呼ぶ)の議員候補が軒並みにマクロン党の候補に追い出される現状を見て、保守ばかりでなくリベラル・カトリックもあせっている。
マクロンも、勝てば勝つほど、カルト「教祖」風の顔になってくる。

大統領選の第一回投票ではいろいろ分散していた票が、総選挙でどっとマクロン派に流れたのはいろいろな理由があると思うが、私のごく周辺の人々を観察しているといくつかの要素が見えてくる。

まず私の周りの親しい人々で観察しやすいのは大きく分けて、

1.インテリ・ブルジョワ
2.インテリ・アーティスト

の二種類がある。

このうちのインテリ・ブルジョワのグループは
大統領選の第一回投票で保守フィヨンに投票。
フィヨンに架空雇用スキャンダルがあったが気にしない。
国のためになって結果さえよければモラルは関係がない。
何度も寝返ったタレランが結局フランスを救ったではないか。
と、とってもプラグマティック。
レランについては今まであまり書いていない。このブログでこれくらいだ。

この層に多い団塊リタイア組はマクロンなど信じていなかった。


インテリ・アーティストのグループは、第一回投票でたいてい極左メランションを支持した。オランドの社会党政権が失敗して分裂していたのでインテリ左翼無神論系は自然にメランションに向かったのだ。

これがメランション躍進の理由だった。

社会党候補のアモンのカリスマ性のなさも大きく作用した。


私や少数の知人は、それでもアモンを支持していた。脱原発に一番はっきりした態度をとっていたから。私は個人的にヤニック・ジャド(アモンの支持に回った緑の党の候補者)が好みだったせいもあるけれど。


で、第二回投票は、フィヨン派もメランション派もアモン派も、ルペンを落とすためにそろってマクロンに投票した。


結果、マクロン政権誕生。


その後、今回の総選挙。


1.2のグループはどう反応したか。


1の、(私の周辺の)フィヨン派だった人の半分近くは、棄権またはマクロン派に投票したと思われる。


棄権の理由は、


フィヨン派の敗退と分裂を前にして見限った、

第五共和制ではどうせマクロン派が勝つのだから意味がない、


といったところか。


マクロン派に積極的に投票した人の理由は、


マクロン政権がフィリップ首相やル・メール経済相など旧フィヨン派を取り込むことに成功したので敷居が低くなった、


ということの他になるほどというものがある。


それは、インテリ・ブルジョワで「子供のいる人」ということだ。

これらの人は、フランスで初めて、自分たちの子弟を英語を第一外国語として学ばせた世代だ。で、子弟はたいていイギリスやアメリカやオーストラリアなどの英語圏に一度は留学して英語圏の学位を持っている。

そして、インターナショナルでグローバルな仕事について活躍している。日本で言うと団塊ジュニア世代で、マクロンももろ入っている。

で、インテリ・ブルジョワの子供たちの世代は大統領選の第一回投票からほぼマクロン派だった。親たちはマクロン政権なら自分たちの年金が減るし、社会政策風のものもあまり関係ないから、フィヨンを支持していた。

でも、決選投票ではル・ペンに対してマクロンに投票せざるを得なくなったので、そのすぐ後の総選挙では「慣れ」というか「慣性」が働く。


また、その後のマクロンのエネルギー全開ぶりを見て、自分の子供たちの姿と重なって、


「まあ世代交代も無理ないか、自分の子供たちの世代に有利な体制になれば、自分たちの年金が多少減ったとしても、子供たちに助けてもらえるし」


と意識下で考えたとしても不思議ではない。


というわけだ。インテリ・ブルジョワには子供のいる人が多いし。


それに比べて、インテリ・アーティスト系でメランションに投票した人は、総選挙でマクロン派に転向したというより、多くが棄権したと思われる。


インテリ・アーティスト系の人は子供がいない人が多いので、マクロンを「自分の子供の世代」に投影することはない。

既成の右派左派とかいう構図から逃れたいという「自由と冒険」の志向は強いから、総選挙でもメランション派に投票した人は少なくない。

でも、このカテゴリーの人にとってはメランション派は「党」としてよりもメランション個人のカリスマに反応する人が多かったので、総選挙のレベルではモチヴェーションが落ちて「棄権」が多かった、というわけだ。


以上があくまでも私の周辺にいるほぼ同世代二つのカテゴリーが大統領選に続く総選挙でどういう動きをしたかということを分析してみたものだ。


一方、大統領選の第一次投票や決選投票でルペン支持者だった人が総選挙では多くが棄権したり、フィヨン派やマクロン派に回ったりしたらしい理由については、メディアがインタビューしたり分析したりしている。

でも私の周りにはさすがにルペン支持者はまったくいないので分からない。


たった一人、楽器奏者でルペン支持を公言する女性がいたけれど、そのことで壁(私が勝手に作った壁だけど)ができたので、私はその人が総選挙でだれに投票したかとかマクロン政権をどう思っているかなどとは聞きだす気持ちにもなれなかった…。


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by mariastella | 2017-06-16 02:56 | フランス

フランス総選挙とマクロン新党

第一回投票の結果は、予想通り、

1.マクロン新党の圧勝
2.過半数の棄権という投票率の低さ

となった。

フランスでは大統領選のすぐ後の総選挙で、大統領選の余波もある上、選ばれた大統領に議席の単独過半数を与えて公約を実行させてみる、という暗黙の合意があるので、たいていはこういう結果になる。

でも、今回の特徴は、議会には新顔である新党でもそれが通用するのか、という興味があった。
結果は、社会党の党首や、大統領選公式候補だったブノワ・アモンなどベテランが新党の新顔に敗退して決選投票にさえ残らないなどという過激なものだった。

棄権率の高さの理由としては、今回の大統領選は、はじめて共和党も社会党も予備選をやったので、選挙運動期間が長すぎで、もうみんながうんざりしたこと、ほおっておいてもマクロン新党で決まりでいいかと思ったこと、日曜の天気が良すぎてみな出かけてしまったこと、
などなどがある。

もちろん、マクロン新党以外はみな口をそろえて、

このような低投票率の選挙には信憑性がない、
従って、マクロンがそれほど支持されているわけではない、
圧倒的な単独過半数を許してはいけない、
民主主義の危機、

などと言っている。

これは一理ある。
こんなことなら、大統領選と同時に総選挙もして、
大統領選の第一回投票の票数の割合に合致する数の議員にすべきだ、
という意見もある。
そうすれば、真の討議ができる、と。

単独過半数など占めるとどうしても驕りや寡頭政治につながりやすい。
少数派の意見が聞えてこない。
まあマクロン新党については「政治家」として素人が半数いることだし、
右派からも左派からも構成されているので、内部だけでも意見のすり合わせが必要だろうから「独裁」の方には逸脱しにくいだろうけれど。
そして、アメリカと同様、ジャーナリズムがわりあいよく機能していると思われるのが救いだ。

私が個人的に注目していた新党の二人は、

例の神学者のクレマンス・ルヴィエと、超ユニークな有名人数学者のセドリック・ヴィラニだ。

前者は決選投票には残るが一位に大差をつけられているのでまず無理だろう。

後者は、市井の医者や看護師やホラー映画製作者など無名の新人が半数を占めるマクロン新党で、突出して目立つキャラなので、実際、47%を超える得票率だった。第二次投票も楽勝だろう。
フィールズ賞も受賞した天才肌だが、多動症っぽくも見える。
この人がどんな「政治家」になるのかを見るのが楽しみだ。

共和党や社会党を「裏切って」大臣になったブルノー・ル・メールやリシャール・フェラン(おまけに金銭スキャンダルでもたたかれた)は、それぞれが共和党や社会党からの候補として立候補した前回よりも高得票率を得たので、対立候補者からの「裏切り」というプロパガンダはうまく機能しなかったようだ。

週末はテロについてとトランプについてのサルマン・ラシュデイの記事を読んだ。
彼は今アメリカに住むが、まさかのトランプ当選にはいろいろな理由が挙げられるものの、最も本音の部分は、アメリカの白人たちが、8年間もオバマに牛耳られていたのががまんできなかったからだというのだ。とてもリアリティのある証言が続いていた。怖い。








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by mariastella | 2017-06-13 02:12 | フランス

ローマ法王とフランス大統領 その5


その5

最後の共通点はヨーロッパ。

「新大陸」出身のローマ法王は「旧大陸」ヨーロッパのことを「おばあさん」と形容する。もう新しいものを産まないが元気に生きている。
フランシスコ教皇の祖父母はイタリアからアルゼンチンへの移民だった。
EU議会で各国首脳の前で、「人権とデモクラシーと自由の志士であるユマニスト・ヨーロッパはいったいどうなったのか?」と喝を入れたことがある。ヨーロッパは先祖たちのキリスト教インスピレーションとルーツを取り戻せば袋小路から抜け出せる。それはキリスト教世界の再建という妄想ではない「魂」の問題だ。

マクロンの方は、大統領選のマニフェストの中でヨーロッパを基軸にした唯一の候補だった。就任セレモニーでEUの公式音楽「喜びのうた」を流して登場したのも記憶に新しい。今のヨーロッパを無条件に賛美しているのではなく、フランス国民をよりよく守るようにEUを再構築するという。東欧からの労働者の給与システムの改正についてはすでにEUの議題に乗せた。EU規模の投資は強化しようとしている。

この五つ目の「共通点」は、よりEUのルーツ(『キリスト教の謎』第12章参照)に寄りそう教皇に対して、経済共同体としてのEUのプラグマティズムに立脚するマクロンのアプローチの仕方の違いがはっきりしている。

ヨーロッパのように、ギリシャ、ラテン、ケルト、ゲルマンとルーツがばらばらで、貴族の姻戚により混血が進み(それを可能にしたのはキリスト教文化圏の形成だった)、しかもアフリカ、中近東と近いことと植民地の歴史のせいで「異文化」からの移民が多いという多元的な地域は、ある意味で異種共生の可能性を探るかっこうのモデルでもある。
それを可能にするのは、やはりキリスト教型、それが世俗化したフランス共和国型の「普遍主義」の追求であると思う。

アングロサクソン型の共同体主義では、「同種」ばかりが固まって、出身地域の文化や伝統を維持しながらやっていけることになる。共同体内部の「掟」が基本的人権や民主主義といった近代国家の理念より優先することも往々にして看過される。
イギリスで続いたテロの操作において、そういったアングロサクソン型共同体主義の弱点がはじめて語られるようになった。
早い話がこういうことだ。

人間の共同体が同質で、掲げている理念が同じであると、異質な人は目立つ。

日本のような同質性が高い社会の場合もそうだ。「人と違うと目立つ」ので、ある意味でセキュリティチェックが自然に働く。
これがフランスだと、移民が来ても、全員をフランス語と共和国主義によって統合、同質化しようとするので、そこから逸脱する人はある程度目立つことになる。
イギリスだと、共存する個々の共同体が何語を話していても、独自の服装規定などを持っていても干渉されない。だから、ある共同体が過激化しても、あるいは過激な共同体(つまり自分たちの価値観と異なるものを弾劾する共同体)が定着しても、チェックしにくい。

ヨーロッパ単位で言うと、個々の国には独自の言語も習慣もあるのだけれど、その中のどれかがやはり過激化(つまりナチスドイツのように)するリスクを避けるために、共通の価値観を定めようとしたのだ。

共同体主義のイギリスがEUとなじめず離脱を決めたのはその難しさを表している。

ヨーロッパの真の共生が成功するなら、いつかそれが地球全体で成功するかもしれない。でもEUがこのまま崩壊するなら、普遍主義も地球の平和も夢物語だ。
「夢」を「夢」で終わらせないために、精神主義だろうがプラグマティズムだろうが、EUの理念を掲げるリーダーは存在し続けてほしい。

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by mariastella | 2017-06-11 03:13 | フランス



竹下節子が考えてることの断片です。サイトはhttp://www.setukotakeshita.com/
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