L'art de croire             竹下節子ブログ

カテゴリ:フランス( 162 )

トランプ就任式の報道の差

前に就任式の中継を見て記事を書いた翌日、日本のメディアの報道を少し見た。

「反対派のデモの一部が暴徒化した」という感じの記事が割と目立ったのが気になる。

もちろんフランスの報道でも、襲われた銀行とか催涙弾とか、いろいろ報道されていたけれど、あれはフランス的に言っても、「デモの一部が暴徒化」したのではなく、最初から「暴徒」が侵入したのが明らかだった。
残念ながら、フランスでも、どんな種類のデモにだって必ず現れる「便乗型暴徒」である。

もちろんだから大したことではないというわけではないけれど、フランスの報道では、平和裏にデモをしていた反対派もトランプ信奉者も互いをリスペクトしあっていて、衝突、摩擦は起こらなかった、と強調していた。

第一、反対デモにやってくる人と、トランプ支持で地方から出てきた人たちというのは、互いに初めて見る異星人のようなもので、いがみ合うほどの接点がないというのだった。

そして反対派にとっても、伝統的に就任式の政権交代の成功は「アメリカン・デモクラシー」のピークだとみなされている上に、次の日に大規模デモを予定していたのだから、当日に秩序を乱すという発想はない。

しかしこういう便乗型暴徒が必ず繰り出してくる光景というのは、日本人には理解できないと思う。
日本人って行儀がよくて、「行儀の悪さ」への想像力がなかなか働かなくなっているのかもしれない。

もう一つ、不法移民を追い出すとかいうトランプのディスクールについて、フランスの解説者が、次のようにコメントしていた。

もともとアメリカとフランスでは、移民という言葉の含意が違うんですよ。

フランスでは移民は、労働力がほしい時(炭鉱労働者をアルジェリアから受け入れるなど)に旧植民地(つまりフランス語を解する人)から来てもらった人たちか、経済・政治難民など自国にいられなくなって着の身着のままやってくる人たちのようなイメージですが、

移民の国アメリカでは、移民とは「働く移民」です。努力して働かない移民は認めない、必死で働く移民だけが認められるというのがベースにあるんです。

という趣旨だった。 なるほどと思う。

この感覚はむしろ、フランスと日本の方が似ているかもしれない。

「移民ではない生粋の自国人」みたいなアイデンティティの幻想があって、

「困難を抱えるよその国からやってくる移民」をどこか見下しているのではないかと思う。

日本やフランスの極右の排外主義と、
アメリカがアメリカ・ファーストだとか言っている時の排外主義とは、
ポピュリズムの煽り方が微妙に違うのだろう。

さて、フランスでは社会党の予備選の決選投票が、ヴァルス対アモンに決まった。

ヴァルスが、

本選になったら第一次投票で敗退確実のアモンか
勝利の可能性がある自分か

という言い回しでアピールしていたのは情けない。
これでアモンが代表に選ばれれば、ヴァルスは「さあ、皆さん、アモンのもとに団結しましょう」なんてしらじらしく言えるのだろうか。

どちらが選ばれてもオランド大統領の積極的支持を受けられない可能性もある。
オランドはマクロンを支持したりして。

マクロンとヴァルスの政策は似ていて、民主進歩主義みたいな路線である。
社会党的な部分はソシエタルだけだ。

アモンの政策はメランションに近い。

今回アモンがヴァルスを抑えてトップだったのは、なんだか、アメリカ民主党の予備選で、サンダースを選ばずにクリントンを選んだことでと本選でトランプに敗れた教訓を生かそうとしているかのようだ。左派だから左派らしい政策を、ということで。

けれど、アメリカならサンダースが選ばれていれば本選は「トランプ対サンダース」だったろうだが、フランスではたとえアモンが選ばれても、本選で「アモン対フィヨン」になる可能性は限りなく少ない。左派にはマクロンもメランションもいるのだから。

水曜のディベートで「本選」を視野に入れた言葉がどのくらい出てくるのかが見ものである。
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by mariastella | 2017-01-24 01:36 | フランス

フランス社会党予備選

フランス社会党の予備選も、共和党にならってか、候補が7人で、うち女性が1人だけ。

10日間で3度も公開ディベートがあるあわただしさで、1度目が12日の夜にあったが、盛り上がりはなかった。

それと並行してマクロンやメランションがミーティングで盛り上がっていた。

社会党と離れて中道左派を行って大人気の若いマクロン。
彼の周りに集まる人々が本当に投票所に出かけるのかどうかは問題だ。

社会党との共闘にうんざりして「本当の左派」を行くメランションは5年前より人気がある。

左派はこの5年間の社会党政権にうんざりしている。社会党予備選に出ている7人のうち4人までがヴァルスを含めて現政権の大臣経験者だから、予備選で勝って正式な社会党の候補になったとしても、4月末の決選投票にまで進める確率は少ない。
今の社会党は、ENA出身のエリート中心のエスタブリッシュメントが采配を振るってきたから、「民衆」から見放されている。

ここで、メランションのような「真正左派」のような受け皿に、「民衆」が向かうのならいいけれど、それがないとマリーヌ・ル・ペンのような極右に向かう。
アメリカの民主党予備選でバーニー・サンダースに希望をつないでいた人たちの票が、サンダースが敗れてからトランプに流れたことの二の舞になってもおかしくない。
実際、メランションとル・ペンの政策は重なって、この両極の二人がアンチEUと言っていい。その意味で逆に、ル・ペンの票を回収するかもしれない。

けれど、アンチEUではない「慎重で常識的な」左派は、そうするとメランションに投票することは控えるだろう。
でも社会党にはノンを突き付けたい。
かといって共和党のフィヨンには原則として投票したくない。

そこで、マクロンの登場。
しかしマクロンもついこの前までオランド政権の経済相だった。
ネオ・リベラリズム財界との相性もいい。
社会党に愛想をつかした「民衆」がマクロンなんかに投票してもいいのだろうか。

しかし、民衆がうんざりしているのは共和党・社会党にかかわらずここ20年の政権の無能さだ。

民衆が期待しているのは「変革」。
ラディカルな変革は、近代革命の旗手だったフランスのお家芸でもある。

それなら、経歴にかかわらず、わずか38歳のマクロンは、大いに「新しく」見える。

フランス革命が始まった年、ダントンが30歳でロベスピエールは31歳だった。ナポレオンは35歳で皇帝になった。マクロンはそれを意識しているし、それが伝わっている。

社会党予備選の第一回目のディベートは、かれらの間で互いを批判しない、という申し合わせがあるようで、上品だけれど覇気のないものだった。
まあ、社会党の現政権が不人気だと分かっているのだから、下手に批判すると藪蛇でもある。

番組後の視聴者アンケートではヴァルス、モンブール、アモンの三人が有力とか。

この3人を見てフランスっぽいと思うのは、プライベートだ。

ヴァルスがスペイン生まれでフランスに帰化していて、連れ合いは有名なヴァイオリニストだ。

モントブールは女性にもてて、最初の妻が貴族。他に女優、ジャーナリスト、元大臣などの女性と関わっている。

アモンの連れ合いはデンマークとカタルーニャのハーフのエリートで、高級ブランド・グループLVMHで要職についている。

アメリカならヴァルスなど大統領選に出る資格もない。他の候補もいろいろ言われそうだ。

ヴァルスの攻撃的な雰囲気は今やサルコジを彷彿とさせるし、アモンは大統領という雰囲気ではない。

「見た目」だけで言うとヴァンサン・ペイヨンが一番「大学教授風」の品格で、こういう人が、軍事と外交と共和国の統合という本来の大統領ポストを守って、内政はもっと民主的なシステムにすればいいんじゃないかと思ってしまう。

ともかく「社会党」は、右をマクロンに左をメランションにはさまれて、今の政権政党だというのに、冷ややかに見られている。

本選でマクロンが選ばれればまさにマーケティングの勝利だなあと思う。
今の時代の「若さ至上主義」もベースにあるかもしれない。

ともかく、来週の今頃は、社会党予備選の決選投票に出る2人が決まっている。
その2人のディベートには少しまともに耳を傾けるつもりだ。
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by mariastella | 2017-01-15 02:09 | フランス

ベルナノスの言葉 その2

<< Les dernières chances du monde sont entre les mains des nations pauvres ou appauvries. C’est, en effet, la dernière chance qui reste au monde de se réformer, et si généreuse et magnanime qu’elle puisse être, une nation opulente ne serait pas capable de mettre beaucoup d’empressement à réformer un système économique et social qui lui a donné la prospérité. Or, si le monde ne se réforme pas, il est perdu. Je veux dire qu’il retombera tôt ou tard à la merci d’un démagogue génial, d’un militaire sans scrupules ou d’une oligarchie de banquiers. >> (Le Chemin de la Croix des Ames)

「世界の最後のチャンスは貧しい国、貧しくなった国々の手にある。富める国はたとえどんなに寛大であっても、自らの繁栄をもたらしてくれた経済と社会のシステムを改革するのに本気でとりくむ力などない。しかし、世界は、変革しないなら、滅びる。遅かれ早かれこの世は巧みな扇動者、勇ましい軍人、少数の金融業者たちの意のままになってしまうということだ。」

この言葉も、まるで今の世界についてのコメントのようだ。
というより、もう、遅いんじゃないか、世界はもう扇動者や軍産共同体の意のままに動かされているのではないかという気もする。
でも、先日書いたベネズエラの「エル・システマ」だとか、キューバの医療制度とか、新自由主義経済の恩恵を受けていない貧しい国で新しい取り組みがなされてきたのは事実だ。

今、これらの国のシステムは揺らいでいるけれど、大国や大資本にすべてつぶされていくのではなく、問題提起が続いてくれるように 願うばかりだ。
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by mariastella | 2017-01-05 02:24 | フランス

ベルナノスの言葉 その1

ジョルジュ・ベルナノスは60年の生涯の中で第一次大戦と第二次大戦の両方にしっかり遭遇した。そのせいで、フランスやヨーロッパや政治や宗教について観察し考え抜いた人でもある。今聞いてもなるほどと納得できる言葉がたくさんある。

<< Une Démocratie sans démocrates, une République sans citoyens, c’est déjà une dictature, c’est la dictature de l’intrigue et de la corruption. >> (La France contre les robots)
「民主主義者抜きの民主主義、市民抜きの共和国は、すでに一つの独裁だ。謀略と腐敗の独裁である。」


主義や理念だけ掲げていても、その実践者が内部で常に生きた対話を通してそれを更新続けなければ、残るのは私利私欲にとらわれた「独裁」と独裁者による支配だ。

共産主義も社会主義もそうやって壊れていった。
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by mariastella | 2017-01-04 03:34 | フランス

仏大統領予備選 社会党の場合

フランス社会党(緑の党も含む)の大統領予備選の第一回投票は来年の1/22だ。
立候補しているのは共和党と同じく7人で、うち女性も共和党と同じく1人だけ。

普通でいうと、首相を辞任して立候補したマニュエル・ヴァルスが「優勢」というか、現政府の後継として社会党を代表する候補者になってもいいのだけれど、なぜか、メディアは、そういう予想をしない。

共和党の予備選で長い間、口をそろえてジュッペとサルコジの対決と言っていたのが見事に外れたので、もうそういう予想を口にしないという自制が働いているらしい。

分裂していると批判される社会党をまとめるために、みなしきりに、自分はrassemblerする候補だとかとかrassemblementの候補だとか強調している。

「結集する」とか「団結する」という意味だ。

いったん大統領になったら左右の溝を超えてフランス人すべてをまとめあげるというのが大統領制の建前だけれど、予備選までひと月、本選挙まであと4ヶ月だというのに、社会党をまとめあげることすら難しい。

7人の候補者がみなこの言葉を使っているのも滑稽だ(ジュッペもフィヨンももちろん使っていた)。

この言葉の「一致団結」というニュアンスは、自然に統合に向かうという意味ではなく、誰かが主体的に呼びかけて、そこに皆が集まる、という含意があるから、いわば団長のもとに団結するということになる。

だから、7人の候補者がみなこの言葉を使うと、団長7人でむしろ立派な分裂だなあという感じだ。

アメリカではトランプがヘイトスピーチを罪に問わない方向に向かうようだ。

そんな中で、カズヌーヴ新首相がカトリック左派の雑誌でとても重要なことを口にしていた。
フランスの理念は「福音的」だというのだ。

「キリスト教的」というのと「福音的」というのは似て非なるものだ。
私が今書いている本はそのことに光を当てている。
いったん行き先が見えてくると、同じ途上にいる人たちの姿が見えてくる。
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by mariastella | 2016-12-20 04:40 | フランス

ジェローム・カユザックとジャクリーヌ・ソヴァージュ

前にも書いたことがあるジェローム・カユザック元予算担当大臣。

結局隠し財産は何百万ユーロにも達すると分かって、元妻と共に、執行猶予なしの実刑判決が出た。
ごまかした税金は罰金と共にもう支払い済み。

実刑判決が重すぎるという意見もある。 

納税は共和国の根幹にあるものだからそれをごまかしたというのは確かに罪である。
そんな人が、こともあろうに脱税対策を掲げた予算担当大臣に就任していたことがそれに加わる。
普通の人よりも罪が重くなるというのも分かる。

でも、なんだか見せしめ、リンチという感じもぬぐえない。

彼を徹底的に罰することで他の権力者は手を洗っているような。

彼が国会で問われた時に、「外国の口座など持ったことは過去も現在もない」と堂々と嘘をついた映像が何度も流れた。
社会党のユダだとも言われた。

けれども、嘘は罪ではない。

宣誓の後の偽証や、偽造文書を作るとか虚偽の告発をするなどは軽犯罪法や刑法の罪になるけれど、単なる嘘は、それによって被害を受けた人からの告訴がなければ罪にはならない。
モーセの十戒にも、「噓をつくな」とあるわけではなく、「偽証をしてはならない」とあるだけだ。

実際、「嘘も方便」というように、日常生活を円滑にするための嘘はどこにでもあるし、時によっては礼儀でさえある。

カユザックの場合はすでに税法上の罪を犯していて、それを隠すために嘘をついたので、「容疑者」の権利みたいなものだ。

けれども、顔色一つ変えずに堂々と嘘をつき、社会党やフリーメイスンから除名されても、逮捕されても、ポーカーフェイスでいた彼のどこか非現実的な感じが、多くの人に悪印象を与えたのだろう。
私はむしろ、非常に好奇心をそそられるキャラクターだと思ったけれど。

離婚訴訟における不和で妻に密告された。正確に言うと妻が雇った2人の私立探偵から足がついた?
妻のパトリシアはこの前の共和党予備選で惨敗したジャン=フランソワ・コッペの妹だそうだ。コッペも政治に絡んだ金銭スキャンダルの中心人物だ。

まあ、妻の出方の予測も含めて危機管理意識が足りなかったのには驚くけれど、私はなぜかこの人に同情の念を覚える。
まあ、はっきり言って、冷たそうで、誰からも同情をもらえないタイプなのだけれど、彼の「叩かれ方」にはどこか不健全なところがあるからだ。

控訴審でどうなるかはわからないけれど。

もう一つ気分の悪い訴訟事件に、40年以上も虐待を受けたあげくに夫を猟銃で撃ち殺して実刑を受けたジャクリーヌ・ソヴァージュという女性のケースがある。今年初めにオランド大統領が中途半端な恩赦をしたので、結局釈放されなかった。
今は権力争いから抜け出たオランドとカズヌーヴが、この先、完全恩赦に踏み切る可能性はあるのだろうか。

この女性を釈放しないのは、「悔い改めの念が足らない」という理由だった。
もちろん夫は死んでいるから「再犯」の恐れはないし、3人の娘はみな、母が犠牲者であったことを証言し、自分たちも父親に性的虐待を受けていたと証言している。
一人息子は事件の前日に自殺しているそうだ。
女性の実家の父親も妻に暴力をふるっていたと分かっている。

「報復」を連想させる刑罰って気分が悪いし、政治や司法のパワーゲームの影響を受ける刑罰も気分が悪い。

大金持ちで権力も権威も持ち合わせていたカユザックと、生まれながらに不利な環境を抜け出せなかったソヴァージュは、格差社会の両極にいる対照的な人たちだが、どちらからも、「今の世の中の不健全な部分の犠牲者が偽善者たちから叩かれている」かのような印象を受けるのは、不思議だ。
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by mariastella | 2016-12-13 01:02 | フランス

マクロン、ヴァルス、マリーヌ・ル・ペン

エマニュエル・マクロンが土曜日にパリの集会で1万5千人を集めて、1h 45も喋りまくった映像を見た。

しゃべるというより、叫んでいる感じで、うーん、あのテンションであれだけ長く話せるのってやはり38歳という若さかなあ、と思った。ジュッペには無理だったよね。

それにしても、はっきり言って、どこのカルトの教祖ですか、という雰囲気だった。

私は彼のディスクールをフランス語の政治言説のレトリックの例として分析しているのだけれど、そして、ナポレオンのそれと比較もしているのだけれど、なんだか、私の興味と少しずれてきた。

でも、この洗脳が進めば、ひょっとしたら大化けするかもよ、とフランス人に話したら、
「いや38歳は若すぎる」とシニアの人たちは言う。

「でも、ナポレオンは35歳で皇帝になったんだよ、ナザレのイエスは33歳で神になったんだよ(語弊がありすぎだが…)」

と私がいうと、

「昔の30代と今の30代は違う」、

って必ず言い返される。

今は七掛けっていうから今の38歳は昔なら26歳くらいってこと?

でもジャンヌ・ダルクは17歳でオルレアンを解放してるしね、

成熟や運命は実年齢と関係ないような気もする。

一方、最近、久しぶりにマリーヌ・ル・ペンがテレビでインタビューに答えていたが、服装、話し方、すべて完璧だった。
それこそ「成熟」を演出していた。
姪のマリー=マレシャル・ル・ペンが妊娠中絶の保険払い戻しをやめる、とか言っていることをふられても、それは自分のマニフェストとは違うと即座に否定した。

「ヨーロッパ離脱やユーロ圏離脱の国民投票をする」という典型的なポピュリズム政策を別としたら、すごくまともだ。

ヴァルス元首相はといえば、予備選に向けて社会党内部をまとめるのに必死という感じで、戦闘的にやっているが、土曜日のミーティングに集まったのは350人という話だから、マクロンと比べられて気の毒だった。

マクロンやヴァルスを見ていると、ル・ペンが一番「疲れない」、というのはいかがなものか。
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by mariastella | 2016-12-12 00:29 | フランス

シャルリー・エブドとカレーの「ジャングル」

カリカチュアでテロに遭ったシャルリー・エブドの画家2人が、今は取壊されたカレー難民キャンプ(一部はダンケルクや救援センターのレポートもある)に通って人々と交流し、最後の日々も記録した貴重な本が別冊になった。

難民の生活、トイレの問題からヘアスタイルのこだわり、子供のための学校や遊び場に至るまでいろいろ描き込まれている。

カレーからは、イギリスに渡ろうとして英仏海峡の手前でせき止められた人びとが決死の渡航を企てては命を落とす。

この本を読んで、初めて、難民は名前や顔や個性を持つ一人一人の隣人になった。

シャルリー・エブドは、テロの後で壊滅に近い打撃に関わらず世界中から読者を獲得して、「超リッチ」になった。だからこそ、こんな贅沢な企画が可能になったのだ。

テロへの最高のレジスタンスだ。

ここには、ノンフィクションの確実な視線がある。
ジャーナリズムの勝利だ。

カリカチュアはひとかけらもない。
いや、これを見ていると、カリカチュアにされているのは、「ジャングル」で何が起きているのかを知ろうとしなかった全ての人だという気がする。
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by mariastella | 2016-12-11 00:30 | フランス

カズヌーヴが首相になった

月曜日、ヴァルスがようやく大統領選出馬を宣言して首相の座を離れた。

マクロンとヴァルスでは

「(上司であるオランドに対する)裏切り者同士の戦いだ」

と揶揄する共和党員もいる。

まあ、オランドも、選挙前にDSKのスキャンダルでチャンスが転がり込んだわけで、カリスマ性はもともとなかったが、ヴァルスやマクロンのようなキャラのたった男たちに囲まれていて大変だったろうなと気の毒にも思えてくる。

で、マクロンの後に、内務相のカズヌーヴが首相に就任した。
内務相から首相にという展開は、ヴァルスもそうだったし、サルコジやヴィルパンも内務相を通過した。

カズヌーヴについては、教会のテロの後に詳しく書いた
オランドもようやく、権力争いとは離れて、忠実なカズヌーヴといっしょに最後の数ケ月は「理想」に立ち返るんだろうか。

カズヌーヴはフィヨンと同じくカトリックだ。

でもこの記事に書いたように、政権にある人として政教分離についてとても気をつけている。

上の記事にあるサロモン・ルクレールは教育修道会の修道士だった。

フランス革命後、1790年の聖職者市民憲章によって、共和国への忠誠(11/26から義務となった)を誓わなかったので、パリで身を隠した。1792年8月に逮捕され、監獄と化したカルメル会修道院に閉じ込められたが、9/2にほとんど全員が修道院内部や庭で刺殺された。

2007年、ベネズエラで毒蛇に咬まれた少女のために修道女たちがサロモンに祈ったら治癒を得たのが、2011年にカラカス司教が奇蹟の治癒の認定をしたて、列聖の基準を満たした。

ベルナール・カズヌーヴ(内務・宗教相)は今回(10/16)の列聖式には出席しなかったわけだが、2015年のジャンヌ=エミリー・ド・ヴィルヌーヴ列聖には出ている。

ピウス11世がフランス革命の188人のカトリック殉教者を列福し始めたのは1926年のことだ。

カズヌーヴは1792/9のカトリック虐殺を容認するものではないし、共和国を守るために共和国の名でなされる犯罪行為を共和国が免償するものでもない。

何があったか?

7月のアメル神父の殉教との関係がないとは思えない。

ルクレール修道士もアメル神父も、個人として殺されたのではなく、信仰と宗教上の役割のために殺された。

アメル神父の死は共和国の「信教の自由」に反するイスラム原理主義者によるテロとみなされる。
フランス革命の「恐怖時代」は、まさに「テロ」という言葉を生んだ時期だった。

カズヌーヴの社会党はフランス革命の理念の継承者ということになっている。

難しい立場だが、カズヌーヴの選択はメッセージ性を発していた。

これからは、社会党の予備選やらマクロンやメランションの動向ばかりが取り上げられるだろうが、オランドとカズヌーヴの最後の五ヶ月を見まもってみたい。
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by mariastella | 2016-12-07 00:11 | フランス

オランド大統領の不出馬

木曜日、オランド大統領が次の大統領選への不出馬を表明した。
現職大統領が二期目をあきらめるのは珍しいことだ。

テロの後に、テロリストの国籍剝奪の提案をしたことだけが自分の失敗だった、とも言っていた。
それによって国民を一体化しようと思ったのに、かえって分断させてしまった、と。

確かに、国籍剥奪なんて、極右の言いそうな排除の論理だ。
フランスの普遍主義には似合わない。
それに、実際のテロリストはフランス国籍を持っているとは限らないし、実行犯の多くは自爆したり射殺されたりするから、その後では意味がないし、国籍剥奪されるのが嫌でテロをあきらめる、などという抑止力などあり得ないだろう。

それでも例えばイギリスが最近、シリアでISに加わったイギリス人の700人のジハディストのうち最も危険な80200人のリストを公開して彼らをすべて逮捕もしくは殲滅すると宣言したのは、フランスでは考えられない。

ISの訓練場所を空爆する時に、そこにフランス国籍の者がいるのでフランス人を殺すことになる、その是非、ディレンマについて議論があったことがあるくらいだ。

フランスの死刑廃止において戦時を除くという例外があったから、イギリスにもあるのかもしれない。
「テロリストとの戦争」が宣告しているのだから、国籍の有無にかかわらず「テロリストの死刑」はあり得るという理屈なのだろうが、少なくともフランスはそんなことを大きな声では言えないし言っていない。

オランド不出馬表明の後でヴァルス首相がすぐに出馬を表明していないのは「礼儀の期間」をおくからだ、と言われる。Delais de décenceだが、今回の場合、「喪の期間」にも似ている。

その辺もまあ、フランスらしい、抑制というかジェスチャーなのだろう。

どちらにしてもヴァルスの勝機は少ない。
マクロンの方がまだ人気がある。

けれども、「一度も政権に関わっていない」からまだ誰も失望させていない、という理由だけで、マリーヌ・ル・ペンが第一回投票で有利であり続ける情勢は変わらない。

どうなることやら。
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by mariastella | 2016-12-04 10:01 | フランス



竹下節子が考えてることの断片です。サイトはhttp://www.setukotakeshita.com/
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