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L'art de croire             竹下節子ブログ

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フランスのロボットなどあれこれ

私のサイトhttp://setukotakeshita.com/

の掲示板でいろいろ話題になっていたフランスご自慢の原発作業用ロボットのことだが、

まず:

一方、アレバ社は28日、本紙に対し、原発事故用にフランスで開発された作業用ロボットの提供を申し出たところ、東京電力が断ったと明らかにした。
 ロボットは1986年のチェルノブイリ原発事故後に同社や仏電力公社が開発にあたり、高性能カメラや作業用アームを搭載。放射線量が高い場所で、 遠隔操作により作業ができる。アレバ社報道担当は、「東京電力はロボット使用は決定的な効果がないと判断したようだ」と述べた。
(2011年3月29日11時41分 読売新聞)

という報道があり、、その後、アメリカのロボットが採用されたと出た。

3月30日付のル・モンド紙にも、フランスのロボットは福島の問題には何らの有効性がないと言って断られたとあった。で、すべての器機はフランスの空港でストップしているそうだ。結局送られたのは放射能汚染除去の専門家五人だけということで、その間にアメリカのアイ・ロボット(2 Packbots 2 Worrior)が採用されたがまだ日本チームはその操作の練習中だと書いてあった。

荒れた猫を何とかしようとしている日本のネズミに、われ先に鈴を提供しようとするフランスネズミやアメリカネズミがいるが、いざその鈴を誰が猫の首にかけに行くかといえばニホンネズミしかいないわけで、訓練しているうちに猫が虎にならないかと心配だ。

サルコジは念願(?)の日本入りを強行するようだが、今度は大被災地に乗り込む憐れみ深い国家元首という役どころでなく、はっきりとフランスの原発を売りつけるプロモートだとフランスでも認識されている。

本当に今回の危機を迅速に収束させてくれて汚染を回避させてくれるなら、「フランスありがと、サルコジありがと」くらいはいくらでも言うが、火事場泥棒的な感じも否めない。

アメリカがエジプトのムバラクをあっさり見捨てたということで、サウジアラビアなどのアメリカ離れが始まっていて、それを機に、フランスがサウジの選抜陸軍の訓練権を全面的に譲られることになったという(ル・モンド同上)。

今回アラブ諸国で唯一戦闘機を出したカタールの軍備はほぼすべてフランス製であり、アラブ首長国連合にも2009年からフランスの基地があって、石油利権という以前にやはりパワーゲームなんだなあと思う。
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by mariastella | 2011-03-31 17:09 | フランス

その後のいろいろ

 この前、冷却水が大量に必要だから海岸に作られる原発について、フランスで平地にあるのはどうなっているんだろうと思っていることを書いたが、

http://www.project-syndicate.org/commentary/chellaney15/English

にあるように、やはり湖や川や河沿いにあるらしく、フランスの原発が一年に使う水は190億立方メートルで、淡水消費の半分は原発だそうだ。(フィガロ3/17)

しかも使用後に高熱の水を戻しているから川や湖の温度が上昇するので、2003年の猛暑のときは17の原発が発電量を減らしたという。

その熱湯をせめて冬場の暖房に回すとかの有効利用が出来ないのだろうか。原発は二酸化炭素を出さないからクリーンなどと言いながら、立派に地球温暖化している気もするが・・・

東京のフランス系企業も通常業務に戻ったようで、地震直後にもうフランスに避難させられていた駐在員などもこの週末に東京に戻るらしい。

駐在員などは旅費が出るが、フランス政府のチャーター機で帰国を呼びかけられた一般在日フランス人は自前で日本に戻らなくてはならない。実際、それが嫌で日本に残った人もいる。

フランスのTVニュースでもようやく被災地や福島県に報道班が入って臨場感のあるものを流しはじめた。

原発から30キロ地点の自宅に避難所から戻ってきて、80代のおかあさんと籠城する息子さんのインタビューなどもあった。

食品の汚染の話題も多く、日本からの食品輸入が規制され始めたらしい。

スーパーで売っている「わかめサラダ」だの「すし」だののパックには、すべてメイド・イン・フランスのシールがはられていた。これではパリの日本レストランにも影響が出ているかもしれない。

木曜日に海軍の人とチャリティコンサートについて話した。ギメ美術館のオリエント協会の会長さんにも紹介してもらった。

パリは4月9日から春休みに入るので集客にはやはりその後の方がよさそうだ。

知り合いのカウンターテナーのセバスチャン・フルニエ

http://contretenor.onlc.fr/

も、ぜひ一緒にと言っている。

彼は2008年のチベット弾圧のときにも支援コンサートに参加した。

奥さんも歌手なので、いろいろなことが出来そうだが、私たちのトリオが昨年秋に日本でバロック・フルートと共演した「精霊の踊り」を彼に歌ってもらうというのは少なくともやりたい。

多くの人の善意があっても、「やる気満々」の人がその中にひとりは必要だ。

できたらアーティストではない人で。

幸いそんな人が名乗りをあげてくれたので、実現する可能性は大きい。

もちろん大海の一滴だけれど、もうプロジェクトが動き始めたので、練習と、健康管理に気をつけなくてはならない。

遅れている仕事も再開しなくては。

けれども、この大震災についていろいろ考えたことで前よりクリアに見えてきたものもある。

私が直接被災したわけでなくとも、同胞の大きな試練の前と後では、世界との関わり方は、もう、同じものではない。
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by mariastella | 2011-03-27 08:37 | フランス

チャリティコンサート

佐藤俊太郎さんのチャリティコンサートのお知らせです。

パリです。フランス人の知り合いがいらっしゃる方はフランス語の方をコピーしてお知らせください。

私の方はできたらもっと早く、4月の9日か10日を予定しています。

では、佐藤さんのコンサート。

J'ai organisé un concert de charité pour soutenir mes compatriotes car il s'agit d'une catastrophe nationale et internationale. En tant que chef japonais qui vient de Sendai, je voudrais m'investir dans une action pour mon peuple.


Concert de soutien

à l'Eglise de St-Germain-des Près 75006

le 15 avril à 20h30.


Programme:

Barber Adagio pour cordes

Mozart Symphony No.29, en la majeur K.201

Mozart Symphony No.40, en sol mineur K.550

Direction musicale Shuntaro SATO

Orchestre de musiciens professionnels japonais et francais bénévoles.

Le produit de la vente des entrées sera versé à la Croix-Rouge Japon via l'Ambassade du Japon en France.

Prix 20€

place non reservée

e-mail
concert.soutien.japon@gmail.com

Cordialement,

Shuntaro SATO




3月11日の地震で亡くなられた方々のご冥福を心よりお祈り申し上げます。

被災地の一日も早い復興のための義援金を送ると同時に、日本の未来を応援することを目的にチャリティーコンサートを企画しました。

今回のコンサートの収益金は、全て在仏日本大使館を通して、日本赤十字社に寄付されます。


コンサート日時 4月15日(金)20h30開演

サンジェルマン・デ・プレ教会

(Eglise de St-Germain-des Pres 75006)



プログラム:

Barber Adagio pour cordes 弦楽のためのアダージオ

Mozart Symphony No.29, en la majeur K.201

Mozart Symphony No.40, en sol mineur K.550


指揮、音楽監督 佐藤俊太郎

チケットは20ユーロで、自由席です。

現在、パリオペラ座管弦楽団、パリ管弦楽団の団員やソリストなどがメンバーとして参加してくれる予定です。

一人でも多くの方にいらしていただけるよう、このコンサートの事をお知り合いの方々にお知らせいただければ幸いです。

現在チラシを作成中です。

チケットを希望される方は、e-mailにてチケット枚数などをお知らせください。

concert.soutien.japon@gmail.com


皆様のご協力をどうぞよろしくお願い致します。
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by mariastella | 2011-03-23 00:15 | お知らせ

昨日の続き(訂正も含めて)

昨日の「犬」の記事について、サイト http://setukotakeshita.com/ の掲示板にコメントをいただいた。まず、以下に、コピー。

>>はりきってフランスから犬を連れて行った救助隊が、結局日本政府の許可が下りず、まったく何もできずにもうすぐ帰仏するという話だった。

 >これがそもそも、完璧な捏造ですから。確かに阪神大震災のころは救助犬が検疫にひっかかって、そういうことがありましたが、今回の震災ではそのような事実はございません。現にフランス以外のスイス、韓国、オーストラリア、中国などの救助隊は犬連れで皆さん活動なさってましたし。それとも、フランスだけは拒否されたんでしょうか?それも、解せない、不思議極まりない話。

 ちなみにスイス救助隊の活動記です。

http://www.swissinfo.ch/jpn/detail/content.html?cid=29755998

>>竹の棒を持ってごそごそやっているところが移される。

 >これはですね、今の段階で遺体を発見しても、回収する余裕がない、あくまで生存者救助が優先するので、遺体を発見したら、事態が落ち着いた時期に回収できるように印をつけてまわっているんですが。そんなことも聞かなかった、確認しなかったんでしょうかね?

 というか、何も取材しない(としか思えない)で、現場で不眠不休で活動している消防、自衛隊、警察、その他ボランティアなどなどの皆さんを不当に貶めているとしかいいようがない話で抗議した方がいいような気がしますが。

コピーは一応ここまで。

で、このコメントを読む前、今朝このニュースのことを他のフランス人に話したら、テレビのニュースはひどいから見ないことにしている、とあっさり言われてしまった。

その後でこのコメントを読んで、フランス語ネットで検索したら、フランス救助隊の毎日の報告が出てきて、どうも、

そもそも犬なんて連れて行っていないようだ。

私も変だと思ったのだが。

で、彼らは、3月15日(追記: 14日到着でした)に仙台空港の近くで、2kmにわたって400mの幅で捜索を開始したとあった。そして16の遺体を発見、遺体の回収は日本人にしかできないことになっているので、その度に日本人チームに連絡。
次の日もがんばろうとしていたら、パリから指令があって、放射能汚染の危険があるから仙台より300キロ以上北にある米軍基地(三沢)に撤退するように言われて、そのまま何もできないとあった。

ではあのテレビニュースはなんだったのか ?

フランス政府が自国の救助隊をさっさと避難させたことを隠すため、日本が救助を許可しないなどという情報を、ねつ造した ?

そのついでに、阪神大震災の時にあった救助犬の検疫の問題かなんかを再利用した ?

それにしても、日本の自尊心がどうとかいうナレーションをかぶせるなんて・・・それって、もしフランスに大災害が起こったら、フランスは「いやぼくんちで全部やれるから」という印象を国民に与えなくてはいけないというのが常にあって、それを投影しているんだろうか。

どちらにしても明らかに悪質なルポルタージュだ。しかも、確か、そちらは第2チャンネルのほぼ公共放送。これはかなり問題があるのでは・・・

と思って、今2チャンネルのサイトを開いて昨夜のニュースをもう一度確認してみた(便利な時代だ)。

すると、改めて聞くと、そのルポを紹介する司会者がまず、「なぜ日本側が頼まないのか理解に苦しむと言っている」と言う。

その後、救援隊がほとんど何もしていない、といった後で「日本は検疫上の理由で犬を連れてくることを拒否した」というナレーションがあった。

なるほど、これが本当だとしたら、フランスは犬を連れてきたかったのに、日本に拒否されたのでそもそも連れて行かなかったのだという話になる。他の国の犬はいたのだから、もうそれ以上は必要ないということなのか、実際連れて行こうとしたのかどうかもはっきりしない。

私がフランスが連れてきた犬の活動を拒否されたと思い違いをしたのだろう。訂正します。でも、思い違いをされても仕方がないような言い方だったし、犬がいないんならそんなことをあらためてわざわざ言うのも意味がない。

それから、放射能汚染回避のために三沢基地に避難したこと、日本はそれに対して異を唱えたと言っている(ここのところは軽くスルーされているので印象に残らなかったのだ! アメリカがなんか関係しているのかなあ、と漠然と思わせるほどだった)。

次に、誰もいない被災地が映され、「不思議なことに救援隊の姿はほとんど見かけなかった。国の自尊心か、それとも弱みを見せたくないのか」というナレーションが入り、次に、「(レポーターが)ようやく遭遇したのは800キロ離れた京都からの救助隊で、捜索用の器機なしで竹の棒だけだった」というナレーションと竹の棒。

うーん…やっぱり最初のイントロダクションといい、ナレーションのし方と言い、日本が「機器を備えた外国人救助隊よりも、竹の棒を持つ自前の救助隊に頼りたい」と思っているというニュアンスにとられても不思議ではない。

もちろん他国の犬連れの救援隊の姿など映さない。

これなら、印象操作や編集ということはあっても、ねつ造とまでは断定できないかもしれない。しかし、フランス政府が原発パニックになって退避させたというのを、日本が助けてほしくなかったとすり替えているのは明らかである。私でさえ、妙な話だなあ、と思ったのだから、その意図は成功している。

イントロで「なぜ日本は助けを求めないのか? 不思議ですね、では現地からの報告を、見てみましょう」というノリでつっておいて、

「いやあ、ほんとはフランスが放射能が怖かったんで逃げたんですね、日本人からもあきれられてますよ」

というふうにはまとめないで、
その事実から目をそらしてミスリードするために、

犬がどうのこうの、竹棒がどうのこうの、救援隊の姿もほとんど見かけない、というシーンを流しているわけだ。

だから、ルポを見おわった後の印象も、

「不思議ですね・・・」のままだったのである。

ちなみに私はこの震災の情報はほぼ日本のNHKニュースを含めたネットと、ラジオと活字情報で得ている。フランス語のテレビも外信を配信するニュース専門チャンネルばかりだった(これは繰り返しが多いので長くは見ない)。

で、たまに、最も一般大衆向けの夕方8時の1チャンネルと2チャンネルのニュースを見ると、すごく変なものばかりにぶち当たるのだ。

そんなわけだから、センセーショナルな週刊誌や新聞など読むのも時間の無駄だからやらないけれど、印象操作の方法を細かく分析すればそれはそれで興味深いかもしれない。

ついでに、第1チャンネルの「ベンガジの犬」の方も、ビデオで確認してみようかと思ったが、あの犬の姿をもう一度見るのはつらいのでやめておく。

(追記 http://6318.teacup.com/hiromin/bbs/431 )
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by mariastella | 2011-03-21 22:14 | フランス

犬。

日曜の夜のニュースを見ていたら、日本について妙なものと、リビアについて嫌なものがあった。

日本の方は、はりきってフランスから犬を連れて行った救助隊が、結局日本政府の許可が下りず、まったく何もできずにもうすぐ帰仏するという話だった。

そして、フランス人はもちろん、救助隊が全然いない被災地が映されて、救助活動がまったくなされていないような印象が与えられた。そして、ようやくやってきた日本人の救助隊というか捜索隊は、救助犬や機械でなく、竹の棒を持ってごそごそやっているところが移される。

日本が外国の救助隊を拒否するのは自尊心のせいかもしれないなどというナレーションが流れていた。

確か阪神大震災の時も、外国の犬連れの捜索隊を足止めしたというような報道があったのを覚えているが実際はどうなのだろう。

フランスは原子炉周囲で弁を開閉したり遠隔操作で作業したりできるロボットを持っている唯一の国だと言って、それを福島原発に貸し出すと、昨日のニュースで得意そうに言っていたが、あれもどうなったのだろう。

なんだかしっくりこないニュースだった。

もう一つは、フランスが空爆したリビアのベンガジの様子だ。

「フランスありがとう、サルコジありがとう」と反政府派が喜ぶところを映すのは、やらせだとしてもまあ理解できる。

ところが、その外に、ゴミ袋みたいなものを首に結びつけられた犬が映され、人々の言葉にフランス語がかぶされているのだが、カダフィは今この犬のような目をしているに違いない、だとか、カダフィは動物以下だとか、人々が犬を囲んで口々に罵っている。

犬はカダフィの代わりにさらしものにされているという設定で、最後に誰かが犬を殴るのがちらと見えたところで映像が切れている(1チャンネルの20h40頃)。

ベンガジでカダフィ軍の黒人の傭兵がリンチされていたことは前に書いたが、この犬の映像もショックだった。ものすごく後味が悪い。この後、どうなったんだろうか。

日本の震災でペットと離れ離れになった人や緊急で見捨てざるを得なかった人たちの悲しみは大きい。ただの揺れだけでも、猫の中にはパニックになって、外へ飛び出すものもいる。でも犬なら飼い主にぴったりついていると思う。

自分たちがいないと生きていけないような弱い存在を守るという行動は、見るだけで、何か信頼感をそそられる。

けれども、人間の敵に対する憎しみを、生きた犬に転嫁するなんて、目の前の敵をリンチするよりもある意味でもっと救いようのない、黒々とした闇を感じてしまう。

独裁者の写真を燃やすとか銅像を引き倒すとかならまだ分かるが。

はるばる日本にまで行ったのに何もできなかったフランスの救助犬、ベンガジで「ありがとうフランス」と歓声をあげる人たちからつるし上げられる哀れな犬。

善意に燃えても憎悪に身を焦がしても、人の心など、すぐ張りつめて切れそうなくらいに、弱くて、悲しい。

追記:この記事についての訂正や事実関係を次の記事
http://spinou.exblog.jp/16084675/
に乗せています。合わせてご覧ください。
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by mariastella | 2011-03-21 07:52 | 雑感

震災のことなど その後

今回の大地震の少し前に日本を発ってパリに着いた水林章さんが、ラジオのインタビューで、「世界で唯一の被爆国である日本で原発が使われているのはなぜですか」と問われて、しばし躊躇した後、「日本人が忘れっぽいからかもしれない・・」などと答えていた。

私は、日本は被爆国だから核燃料反対のロビーはしっかり存在している、とフランス人に説明していたのに・・・

今回の震災について、「日本人の冷静さ」を称賛するような口調が最初は支配的だったが、自然災害である地震と津波の他に人災の面が大きい原発事故に関心が移ってからは、論調が変わった。

ドイツなどでは初めから、

「日本人が冷静なのは情報を開示されていないからだ」

という口調だったが、フランスもだんだんと、東京にいるフランス人の報告で、

「東京の人たちは表面的には普段と同じように暮らしているが、一歩店に入ると買い占められて食品や日用品が亡くなっているから、内心ではパニックを起こしているに違いない」

という風にシフトしてきている。

それにしても、「原発=日本人は忘れっぽいから」、というのはあんまりな気がする。

フランス軍人と結婚しているタイ人のマダム・プーは私に

「日本が原発を所有しているのは科学技術力と経済力の誇示のためだけだ」

と言いきったが、そっちの方が真実に近いのだろう。

原発利権というのが莫大なものであることは想像に難くないし、原爆の被害を受けたのにかかわらず原発をつくったのではなく、自分たちも対抗して、核を含めた再軍備の可能性を何らかの形で視野に入れたからこその政策だったのだと思う。

現に岸信介が回顧録に

「原子力技術はそれ自体平和利用も兵器としての使用もともに可能である。どちらに用いるかは政策であり国家意思の問題である。日本は国家・国民の意思として原子力を兵器として利用しないことを決めているので、平和利用一本槍であるが、平和利用にせよその技術が進歩するにつれて、兵器としての可能性は自動的に高まってくる。日本は核兵器は持たないが、潜在的可能性を高めることによって、軍縮や核実験禁止問題などについて、国際の場における発言力を強めることが出来る」

と書いていることを最近読んだけれど、さもありなんと思う。

原子力は兵器であろうと発電であろうと、「力」のシンボルなのだ。

マダム・プーの友人の日本女性は、最近アフガニスタンから戻ったフランス人軍人の夫と共に、タイに移住するのだそうだ。タイには原発もないし、津波の危険地域でなければ地震もないという。タイというと軍事クーデターがあったり、反独裁民主戦線が活発だったり、それほど安全なイメージはなかったのだが、たとえ衝突してもすぐに話し合える平和的な国民だと彼女は言う。

フランスはリビア空爆が始まったので、TVのニュースも日本の震災や原発危機からリビア情勢へと大きく変わった。

それでも、放射能を含んだ空気が来週火曜か水曜にはフランスに達するとか、日本から来る野菜や果物には要注意などと言っていた。ヨーロッパで毎年消費される日本製の野菜や果物の量も言及されていたが、食料自給率が低い日本からヨーロッパに野菜や果物をそんなに輸出しているのか、と、その方に驚かされた。本当なんだろうか。

サルコジは、原発について、フランスご自慢のEPR(European Pressurized Reactor)はシェルターが二重構造だからボーイングが突っ込んでも壊れない、とUMPの会合で今回自慢したそうだ。

このEPRというのは、高価過ぎてなかなか売れないが、値段が高いのは安全性が高いからだ、らしい。もっとも、現在はプロジェクトだけだとか建造中のものばかりで、稼働中のものはない。それも2003年に「航空機が突っ込んできたら耐えられないでしょう」と関係者がはっきり答えている記録があるのに。

どういうわけか今回はイギリスとつるんでアメリカまで引っ張ってリビア介入を決議させたサルコジは今鼻息が荒く、エリゼ宮で緊急サミットをやっていた。

2003年のイラク侵攻では、当時のシラク大統領が、「安保理にかけられたらフランスは拒否権を行使する」とはっきり言明していたので、英米らは国連決議なしに戦争を開始した。

それに比べれば、今回は反対する国が棄権はしても拒否権は使わなかったからましだったとは言える。

近く七州の選挙を控えているドイツは、アフガニスタンにフランスよりも多くの兵士を出していて批判されているので賛成はできなかった。

アメリカもイラク、アフガニスタンを抱えているからリビアは乗り気でなかったもののまあ賛成した。

自国の反体制派が騒いだ時に他国に介入されると困るロシアや中国はもちろん分かりやすい。

しかし、インド、ブラジルという高度成長国が他国の「民主化」の動きに無関心を決め込む形なのはなんだか残念でもある。

ともかく、自然災害を前にした人類は多少なりとも連帯意識や謙遜を見せるというのに、人災に対しては、原発やら兵器をつくったり売ったりしている国はとたんに欺瞞的かつ傲慢なところを見せるわけで、より鬱々とさせられる。

日本の震災の情報がテレビから消えないうちになんとかチャリティ・コンサートを実現させなくては・・・

仙台出身の佐藤俊太郎さんから連絡があって、4月半ばに一つパリでやるそうだ。私の方は、住んでいる町で一つできる予定だ。あと、フランス海軍のコネで去年のハイチ支援コンサートと同じ場所を打診したらうまくいきそうだったのだけれど、リビア空爆が長引くならダメになる可能性は大きい。

もう一つ、火曜日にパリ8区からコンサート可能かどうかの返事が来ることになった。

4月の日本行きをキャンセルしたので、その代わりにフランスでできることをやろう。
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by mariastella | 2011-03-20 09:25 | 雑感

核アポカリプス

日本の大震災から一週間、いろいろな方からの連絡に対応するだけでまったく仕事ができなかった。

海外にいると、日本に何かあった時に、周りから、「そう言えば私の知ってる日本人=日本人代表」のように見なされるので、最初からお悔やみの言葉をかけられたり、妙にテンションが上がっているのに応えなくてはならなかったり、けっこう大変だ。

もちろんパリ在住の日本の方も、日本にいる家族への心配の相談や、このことについて話してストレス発散する必要もあるので、私は一日何時間も似たようなことを日仏語で繰り返している。

フランスは原発に80%近くを頼っている国だから、潜在的恐怖がここまで強かったのだと今更ながら驚く。

今のこの瞬間も、ラジオなどで、「福島のこの決死隊の冷却オペレーションが失敗したらカタストロフィが待っている」などという言いまわしを平気で使っている。

私は、ある意味でカタストロフィはすでに起こってしまったので、今はその被害をより少なくできるかどうかの段階だと認識しているので、カタストロフィ映画のようなこのトーンには閉口させられる。

フランスでは35万円くらいのガイガーカウンターのネット上の注文がすごいそうで、薬局でヨード剤を買う人も多く、1980年 以来初めて核シェルター(1700万円くらい)の注文もあったそうだ。チェルノブイリの時とはウェブによる情報の量が違うから人々の反応が速い。(情報リテラシーが高まったわけではないのが問題なのはもちろんだ)

放射能汚染への過剰反応というのは、被爆国の日本にあった方が理解しやすいが、フランスのこのカタストロフィズムはいったいどこからきているんだろう。

フランス人がヨーロッパ一の精神安定剤消費国だというよく知られた事実も、今回はじめて実感をもって納得できた。

もう大分昔の生徒の親が、うちの郵便受けに、それはそれは長い、お悔やみの手紙を入れてきたりするのだ。

「同情するなら金をくれ」

などという台詞も思い出され、それなら、このフランス人のエキサイトぶりを被災者の役に立てようと、今チャリティコンサートを企画し始めているところだ。

はやくしないとリビア戦争で、日本への関心が薄れそうだからね。

リビアへの介入は昨夜ようやく国連の安保理で可決されたのだが、拒否権こそ発動しなかったがはっきりと否定的だったのは、中国、ブラジル、ロシア、ドイツなどだ。

このドイツの態度のもたらすものは重い。

サルコジのスタンド・プレイがその前のEU会議に陰を落とし、結果、EUよりも国連を優先させるという前例がEU内にはっきりとできた形だからだ。

どちらにしても、カダフィの自国民殺戮の暴走を止める希望が生まれたこと自体はよかった。

人は天災や環境破壊の前に非力であり、

戦争や憎悪や支配者の暴力の前に非力であり、

個別の事故や病気や障害や老いの前にも非力だ。

リビアはこの2番目にあたり、そこで弱者を救うために駆けつけるためには、政治やら経済やら国際法やらイデオロギーやらの欺瞞的な兼ね合いをくぐりぬけなければならない。もう何か月も内戦状態のコートジヴォワールなどは野放し状態だ。

それに対して、日本の大震災のような場合には、ロシアでも台湾でもドイツでも、フランスでも、他の国と相談したり利害関係を計算したりしないで迅速にかけつける。

天災の前には「仲間うち」の範囲が「人類」に拡大して、連帯意識が生まれ、傲慢さや駆け引きが減る。

人の傲慢さや、「自分の仲間でない」と見なすものを排斥するという負の人間性はなくなることはないだろうが、時々発露するやむにやまない連帯感や利他意識が、全体としては、次代をいい方向に押し上げてくれるように、願ってやまない。
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by mariastella | 2011-03-18 19:10 | フランス

アラブ世界で起こっていること  その8 サルコジ

さっき(3/10夜)ニュース番組を見て驚いた。

サルコジ大統領がリビアの革命側のリーダー(その一人はカダフィの政権とも関係が深かったともいう)とエリゼ宮で話し合い、フランスは正式に革命政権をリビアの正当な政権と認める、カダフィの空軍基地をピンポイント爆撃するのも辞さない、と約束したのだ。

おりしも明日、EUがリビアに対する態度を検討することになっていて、ブラッセル入りしているフィヨン首相や、EUの外務担当大臣も「寝耳に水」でショックを受けていた。スタンド・プレーとか勇み足というにはことが大きすぎる。

2/23のル・モンド紙に、フランスの元外交官ら現役外務官僚たちが匿名でサルコジ批判の記事を発表していた。サルコジが外交面ですることなすことはすべて衝動的で、素人策で、一貫性がない、というのだ。

彼らは、サルコジが、大統領就任時の演説で「地中海連合」の構想を語った時からすでにあわてていた。

「地中海連合」は、地中海に面していないドイツを仲間外れにしたいという受け狙いだった。それについて、地中海の南岸の二本の柱はベンアリとムバラクだなどと平気で言っていたのだ。

これに対して、現地にいる外交官らは、軍事独裁者についてのかなり厳しい情報をサルコジに送り続けていたらしい。彼らは、もしもウィキリークスがフランスの公電もリークしてくれていたら、自分たちがアメリカに劣らず辛辣に批判していたことが証明できたのに・・・と言っている。

今回のアラブ革命の先駆けとなったフランス語圏であるチュニジアの情勢を読むのも必要不可欠だったのに、サルコジもサルコジお抱えのMAM外相もそれをせずにぐずぐずしていた。

さすがにこれはまずかったと思ったサルコジは、今回は出遅れずにということで、目立とうとして、早々と「世界で最初にリビア革命政府を認めた国」の名乗りを挙げることにしたのかもしれない。

しかし、EUでの合議を待たず、リビアとはより関係の深いイタリアやドイツなどの体面や思惑を考えずに一方的にこんな宣言をすることに、全体として意義があるかどうかは大いに疑問だ。

同じことはメキシコのフロランス・カセ事件(フランス女性が子供誘拐と武器所持の共犯でメキシコで逮捕断罪された)の時にもあった。
60年の懲役が確定したこの女性をもし本気で救いたいと思ったなら、水面下でいろいろな策を練るべきだった。それなのに、「今年のフランスにおけるメキシコ年はフロランス・カッセに捧げる」などとテレビではしゃいだから、逆にメキシコ側からボイコットされてしまうという醜態となった。

外交には長期的な展望や広い視野が必要だ。

そのために外交のプロであるブレーンの意見を聞く、という基本的なことをせずに、目先のメディア効果ばかり狙うこの大統領が、とにかく早く任期を終えてくれないと、フランスはアラブ・アフリカはもちろんヨーロッパからも嫌われそうだ。

あの冷戦時代ですらNATOから撤退することで独自の存在感を維持していた過去のフランスの面影はない。

サルコジ路線と対照的なのはむしろヴァティカンやカトリック団体かもしれない。

イランでサキネ・モハマディ・アシュティアニという女性が姦通罪で石打ちによる死刑を言い渡された時に、息子がヴァティカンに助けてくれと訴えた。
この女性は結局助かったのだが、その時ヴァティカンは、教皇ベネディクト16世がこの問題を注視しており、外交ルートを通じて介入する可能性も排除しない姿勢だと述べたが、実際にしたことについては一切表に出さなかった。ヴァチカン広報当局は、教皇は過去にも人道問題について当事者ではない国から要請を受けた場合に外交ルートを通じて非公式に介入してきたといっている。特に死刑には完全に反対の立場であることは周知の事実だ。

教皇は世襲制でもないし、普通選挙で選ばれるわけでもなく、カトリックには領地も資源もなく、人気とりやポピュリズムを必要としない。理念に忠実に従える。水面下の外交が成功した時に、その「成果」を自慢してイメージアップを図る必要もない。

もう30年以上も前に、ソウル大学に留学中の在日韓国人のK君が北朝鮮のスパイといういいがかりで逮捕されて死刑の判決が下った時、私はパリからローマ教皇とロンドンのアムネスティ・インタナショナル(当時はまだ日本では知名度が低かった)に手紙を出したことがある。

その後、長い時を経て韓国の民主化と共にK君は釈放されたのだが、死刑が執行されぬまま来たのは、アムネスティのおかげかなあと漠然と思っていた。
しかし今考えると、韓国は日本よりはるかにカトリック人口が多いし、ヴァティカンが実際に動いていてくれたのかもしれない。

一方、アラブの軍事独裁国の実態についても、ACAT (拷問廃止キリスト教アクション)の2010年のレポートは赤裸々な報告をしている。中東と貿易しているわけでもないから、ビジネス上の配慮もせずにすむ。

つまり、カトリックは、

特定の人間を救うためには水面下で慎重に動き、それを公表せず、

多くの人を救うためには大声で告発したり正論を吐くなどしているわけだ。

これは、

ひとりの自国民を救うと称してテレビで騒いで話をこじらせ、

武器を売り石油を買うためには軍事独裁国で起こっていることは見ないふりをする、

というサルコジ路線と真逆ではないか。

まあ、自国民の救助にすら熱心でなく、外交センスもないような国もどこかにあるようだが・・・

今回のリビアで、「正義の空爆」を辞さないサルコジの挽回策を突然知らされたMarly(サルコジを批判した外務官僚たちが話し合ったパリのカフェの名で、彼らはそれをペンネームにしている)が何というか、ぜひ、聞いてみたい。

(そう言えばサルコジは、最近、イスラム牽制のためにカトリックの巡礼地を訪れて「カトリックがフランスのルーツであるのは歴史の事実だから」と、鬼の首をとったように言っていた。「歴史上の事実」なんて無数にある。そのうちのどれを取り出してどういう文脈で誰がどのように言うかが問題なんだよ。「カトリックがフランスのルーツである」ことが間違いなのではなくて、「この時期にフランスの大統領がそういうことを得意満面で言う」ことが間違っているのだ。2003年頃はブッシュの顔を見るのも嫌だったが、この頃のサルコジの表情を見るのはもっと気分が悪い。emoticon-0114-dull.gif)
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by mariastella | 2011-03-11 08:43 | フランス

アラブ世界で起こっていること その7 傭兵

リビアの情勢がますます血塗られている今、一番胸が悪くなるのはカダフィが黒人の傭兵を使っていることだ。
破格のサラリーを受け取っている噂もネット上でとびかう傭兵のやり口はかなり残虐であるらしいが、もっと嫌なのは、リビアの反政府派の人々が、たとえばベンガジで傭兵を捕らえた時によってたかってリンチして、そこに人種差別の言葉が露になっている事実だ。

西洋諸国の植民地になる前のアフリカにはガーナ王国、マリ王国、ソンガイ帝国のような黒人の強国があり、その支配者たちは戦時捕虜や領地内の貧しい人々をアラブ人やらトルコ人やらに売買していたことが知られている。

黒人奴隷貿易というと新大陸のプランテーションの労働力ばかりが強調されているけれど、その時代ですら、「奴隷」という資源を売って武器や装飾品を手に入れて喜んでいたのは黒人王国の支配者であり、アラブ人商人が活躍していた。

カダフィーはコーカソイドであるべルベル人で、厳密にはアラブ人ですらないけれど、前から「アフリカの王」だと豪語していた。

もともとリビアには黒人労働者もたくさんいて、カダフィは自分の都合で何十万人も強制退去(1995年から96年にかけて)させたことも有名だった。

この1月に黒人地域の南スーダンがアラブ地域の来たスーダンからの独立を求める住民投票で98,83%という驚異的数字をはじき出したことからも、同じイスラム教であろうとなかろうとアラブ人と黒人が共栄を求めていないのがよくわかる。

今、アラブ世界で、せっかく、腐敗した軍事独裁政権を倒して自由や民主主義を求めようとしている人たちが、独裁者のカダフィよりも、目の前にいる黒人傭兵への憎しみと人種差別を混同して表現しているのは、あとを引きそうでおそろしい。

ヨーロッパ諸国は、自国でアラブ人も黒人もまとめて差別していたり、過去の奴隷貿易だの帝国主義だのの「贖罪」義務があったりという事情のせいで、この様子を見ておろおろしている感じがする。

リビアの戦闘が長引くと、その先カダフィがどんな最期を遂げようと、彼の利用した人種差別のせいで、わかいアラブ人たちの「自由」の希求が泥にまみれるのではないかと心配だ。
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by mariastella | 2011-03-09 09:38 | 雑感

神殺し

3月3日、イスラエル首相から、ローマ教皇ベネディクト16世に、積年に渡るキリスト教からの「神殺し」ユダヤ人という無実の罪を晴らしてくれてめでたい、という書簡が寄せられたそうだ。

B16が『ナザレのイエス』の第二巻で神学的コメントとして、ユダヤ人が「民族」として「神であるイエス・キリスト」を十字架につけたのではなく、イエスも使徒もユダヤ人であったのだから、「ユダヤ人」という言葉には民族的意味もなければ差別の意味もない、と明記し、誤った解釈の長きにわたる弊害を認めたからである。

特にヨーロッパのキリスト教社会で「ユダヤ人=神殺し」というレッテルが貼られてユダヤ人迫害の口実にされてきたのは周知の事実だが、ナチスのホロコースト以来、そういう言辞は今はとっくに消しさられていたと思っていたので、意外だった。

キリスト教がユダヤ民族の手を離れてヘレニズム世界に広がり、ローマ帝国の国教となった時点で、キリスト教をローマ化、さらにヨーロッパ化する必要があったヨーロッパ諸民族が、イエスやマリアなどを「脱」ユダヤ化する必要があったので「ユダヤ人=神殺し= 人類の敵」のようにエスカレートさせていったのだと思っていた。イエスに死刑判決を下したローマ人ピラトを免責することも必要だったからだ。

といっても、イエスや使徒の出自がユダヤ民族であることを聖書が隠しているわけではないのだから、ユダヤ人が神殺しという言い方の誤謬は明らかだと「実は」誰でも了解していたのだと、私は考えていた。しかし21 世紀にローマ教皇が明言しなくてはならないほどに根深いことだったらしい。

確かにヨハネの福音書などには「ユダヤ人が殺そうとねらっている(7-1)」など、まるで「ユダヤ人」一般とイエスを対立させているような書き方がいろいろ出てくる。でも、普通のリテラシーがあれば、この時代の書き方がこうなんだろう、と思うところなのだ。

しかし、パウロらの手紙の中でも「ユダヤ人たちは、主イエスと預言者たちを殺したばかりではなく、私たちをも激しく迫害し・・・(テサロニケ2-15)」のように、「ユダヤ人」が「キリスト教徒」を迫害するという図式が繰り返されているので、いつのまにかそれが定着したのだろう。

もっともパウロは「私は彼ら(イスラエル)が救われることを心から願い…(ローマ10-1)」のように言っている。

だから、べつに偉い神学者でなくとも、新約聖書でイエスを殺したり使徒を迫害したりしたのは律法教条主義者をはじめとする一部のユダヤ人を指している、というのは外部の目からも自明だと思うのだが、二千年も「神殺し」のレッテルを貼られてきた「言葉の力」というのは恐ろしい。

だからこそ、教皇がその著書で明言することも重みがあるのだし、それにすぐに反応するイスラエル首相の言葉も重い。

言葉が偏見を生み偏見が歴史を動かしてきたなら、新しい言葉は新しい関係を築き平和を招き寄せてくれるかもしれない。

そうなると、イスラエルとパレスティナ、ユダヤとイスラムの間でもこのような魔法の言葉があればいいのにと思う。

ユダヤ教とキリスト教とイスラム教はアブラハムに由来する一神教として兄弟のように認識されているのだが、ユダヤ教は民族宗教、キリスト教とイスラム教は地縁血縁を問わない普遍宗教だ。

でもキリスト教は普遍宗教として広まる時に、ユダヤを離れてギリシャ・ローマ人を中心に受け継がれていったのに、イスラム教を担ったアラブ民族の方は、アブラハムの嫡子誕生後に母子ともに追い出された、エジプト人女奴隷との間の庶子イシュマエルの子孫ということになっている。

キリスト教徒がユダヤ人を神殺しなどと言って切り捨てたのに比べて、アラブ人はユダヤ人となまじ「血がつながっている」ことになっているのでかえって屈託もあるかもしれない。

今やパレスティナで大々的に迫害されているのはキリスト教徒たちだ。いや、パキスタンのマイノリティ担当大臣もカトリックだったがつい最近暗殺された。一方イスラエルがパレスティナ人に強権的なのはずっと続いている。

一神教同士なんだから何とかしてほしい。

もちろん日本でたまにいわれるように「一神教のやつらは互いに自分たちの神しか奉じないのだから当然他の一神教を殲滅しようとする」というような話ではない。

同じ民族だろうと同じ宗教だろうと、多神教だろうと無神論者だろうと、人間というものは「自分たちと同じ仲間」でないものを排除すると衝動にかられて殺し合うのが常だ。

だからむしろ、一神教同士なら、今回のように「ユダヤ民族はキリスト教の敵じゃありませんよ」とローマ教皇がひと言いうだけで緊張が緩和するとっかかりがあるのだとしたら、勇気ある権威者がその気になれば、イスラエルとパレスティナにも、イスラムとキリスト教にも、平和をもたらす言葉が見つかるかもしれない、と期待したいのだ。無理かなあ。
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by mariastella | 2011-03-05 09:43 | 宗教



竹下節子が考えてることの断片です。サイトはhttp://www.setukotakeshita.com/
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