L'art de croire             竹下節子ブログ

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ギリシャ財政危機について覚書

以前に14世紀のフランス王によるテンプル会の弾圧(というより財産没収)について書いたことがある。

http://spinou.exblog.jp/16137602/

今朝ラジオでEUのギリシャ人閣僚(Maria Damanaki ?)
の女性がギリシャの経済危機についてインタビューを受けて、現在の公的製作である大量の公共財民営化を批判する意見を述べていた。

ギリシャの経済危機というのは、まあ今は多くの国が抱えているのと似た問題で、国家財政の赤字で国庫が破たんした状態である。こうなると普通は、債権国が債権の一部を放棄する、通過を切り下げて対外競争力を高める、などという対策に向かうのだが、ギリシャの場合、主要債権者であるEUは借金棒引きを認めず、通過もユーロ圏なので切り下げられないので、国内の年金やら賃金カット、公共財の民間売却に向かっていて、当然ながら国民は大反対しているわけだ。

で、フランス人のインタビュアーが、突然、こういうニュアンスで質問をはさんだ。

「ところで、ほれ、あの、ギリシャ正教会ですがね、7千億ユーロも財産を持っているっていうじゃないですか、これって今の国家赤字の何倍ですかね」

これに対してギリシャ人女性政治家(野党)は、答えをはぐらかした。

その中で「カトリックと違って正教は営利事業もたくさんしているからそれには税金をかけているんです」と言っていた。

ギリシャにおいて正教が深く人々の生活に根差しているのは言うまでもない。

それにしても、このやり取りは興味深い。

フランスでは、カタリ派十字軍もしかり、テンプル会もしかり、フランス革命もしかり、政教分離法もしかり、財政に逼迫すると、「ほら、あそこ、あそこに財産が眠ってるぞ」という感じで、世俗の権力が宗教権力の財を没収してきた前例が豊富にある。

一方で、中世以来の各種信心会という互助組織の伝統はもちろん、17世紀の都市圏を中心に、カトリックによる社会救済活動が今日のさまざまな社会福祉の基礎を作ってきた経緯がある。

それを引き継いだ世俗政府の社会政策が赤字を招くという構造にもなっているわけだ。

ギリシァの方は、長い間のトルコによる支配の歴史もあるし、突然西ヨーロッパベースのEUに加盟しても、社会民主主義の基礎が実は曖昧だ。

だとしても、今のギリシアの財政危機という文脈で、「ギリシャ正教の財産」について思いをはせて口にするというのはすごくフランス的な気がした。

日本でも織田信長の比叡山焼き討ちなんかが有名だが、財政赤字の解消に関して伝統宗教の財産のことを想起する人なんかあり得ないと思う。

伝統宗教が実生活であまり意味を持っていないことについては、今の日本とフランスは結構似ているのだけれど。

そんなわけで、覚書。
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by mariastella | 2011-06-16 18:10 | 雑感

幽霊屋敷と悪魔祓い

2010年、64歳の作曲家ジャン=マルク・マリオルと53歳の妻シャルロットは、フランスを離れて憧れのイギリス地方都市に居を構えることにした。

家賃の高いイギリスで、75000円ほどで、建物の2階、3階と屋根裏が続いたアパルトマンが見つかった。

マンチェスターの近くのFrodshamの 26 Church Streetである。

録音スタジオにする部屋に高価な機器を設置したので防犯カメラもとりつけた。

それなのに、平安な生活は、たったひと月しか続かなかった。

ある夜、寝室のドアをノックする音に起こされた。外には誰もいない。

次にシーツが浮き上がった。

肝をつぶした夫婦は近くのホテルに避難した。

その後も、階段に口笛の音、屋根裏から赤ん坊の泣き声、浴室にまで充満するパイプ煙草の匂い、と、典型的なポルターガイスト現象が続いた。

その建物は1869年にパイプ・スモーカーのアイルランド人が建てたもので、妻はその家で産褥死して、生きのびた子供も数年後に階段から転落死したらしい。

20世紀初めに地元の肉屋が買い取り、一階を店にしたが、1970年代に子孫が分割して、2階から上が貸されることになった。それ以来、歴代の店子はポルターガイスト現象を体験してきたそうだ。

しかしイギリスという国は「幽霊屋敷」と親和性があるのか、それほど話題にならなかった。

ところが、デカルトの国フランスからやってきた夫婦が騒いだことで、タブロイド新聞やテレビ局もやって来て大変なことになった。

ピアノを弾くと10個ほどの光る円盤が現れてくるくる回る様子が防犯カメラに映っている画像も報道された。

フランスはカトリックの国でもあるから、夫婦は地元のカトリック教会の司祭に相談し、緊急の悪魔払いのセレモニーもしてもらった。

その結果、司祭は、自分には何もできないこと、その家から去る方がいいことを宣告した。

時々安眠を確保するために1年で60万円以上のホテル代を費やした後で、夫妻は今年の4月末にとうとうイギリスから引き上げることになった。

この話が「本当」かどうかは別として、このような現象に悩まされたと信ずる人々の語る「現象」が驚くほど似ていることは確かだ。

カトリックの聖人たちにもこういうポルターガイスト現象に悩まされた人は少なくなく、みなそれを悪魔による試練だと捉えている。そういう人たちは「悪魔」に持ち上げられて床にたたきつけられたりさえする。煙草の匂いなどではなく腐臭悪臭がたちこめる。

しかし聖人ではない「普通の人」の身に起こる「幽霊屋敷」でのポルターガイスト現象は、迷惑であっても、気味悪くても、直接の害は与えない。「悪魔」とは別種のものであるらしい。

いわゆる幽霊なのか、トリックスターなのか、というところだ。

だから、悪魔祓いのセレモニーで駆使される聖水だとか聖霊や神の言葉にもあまり反応しない。

「逃げるが勝ち」という結果になる。

聖人を試そうとか誘惑しようという挑戦や、悪意のもの、禍々しいものには悪魔祓いが効を奏する余地があっても、場に憑いている地縛霊だの怨念や悪戯のようなものは、神に敵対するタイプの悪魔とは別のロジックで生きているらしい。

それでも、戦国時代に漂着したポルトガル人に日本人が仮の宿として空家の幽霊屋敷を提供したら十字架で結界を作って追い払ったとかいう話もあるし、場に憑く霊だの化け物だのトリックスターだのをシャットアウトする智恵は古今東西の言い伝えに出てくる。

ヨーロッパには都会にも古い建物がたくさんある。

私も築130年の建物に住んでいる。うちには何も起こらないが、ポルターガイスト現象や幽霊の姿を見た人の体験談というのは身近に聞いたことがある。

真相はどうあれ結果として悲劇につながった例もあるのだが、悪魔祓いにも引っかからないような軽めのユーモラスな霊の話は、いつの世も人々を惹きつける。
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by mariastella | 2011-06-03 23:53 | 雑感



竹下節子が考えてることの断片です。サイトはhttp://www.setukotakeshita.com/
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