L'art de croire             竹下節子ブログ

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バロック美術展 (その2)


(これは前回の続きです)
フランス革命前の「啓蒙の世紀」のパリで、教会から注文を受けた50人ほどのアーティストたちの作品が集められている。
後半はネオ・クラシックの時代の始まりで、改革カトリック以来のバロック芸術とネオ・クラシックが融合していく気配もおもしろい。
肖像画家のニコラ・ド・ラギリエール、ジャン・ジュヴネのマニフィカート(ノートルダム大聖堂が注文した珍しい正方形の絵)、ピエール・ペイロンのキリストの復活、フランソワ・ルモワンヌのイタリア風優雅な天使、ジャン・レストゥの聖書の絵。マドレーヌ、パンテオン、サン・シュルピス、サン・メリー、サント・マルグリット、サン・ジェルマン・デ・プレ、サン・ロックなどパリ中の教会から集められた絵画のうち30点はこの展覧会のために修復された。

原画が描かれた当時から、すでに、マケット的な小サイズの絵も同時に用意されていたのが展示されているのも興味深い。香や蝋燭の煙で黒くなり痛むことが分かっているので最初から「修復」を想定して元の色や形を記録していたわけだ。

群像の表情(特に、ノートルダム・デ・ヴィクトワール教会の聖アウグスティヌスの生涯の連作)、

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背景のだまし絵的な奥行き、バロック・オペラの舞台装置や演出とも共通している。

エマウスに向かう二人の弟子が復活のイエスを認めた時の視線が新鮮だ。
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これらの絵が最初に飾られた時は、そのわずか数十年後にパリのカトリック教会がフランス革命によってすべて没収されるなんて誰も考えてもいなかったろう。
教会音楽がかすかに流れるプチパレは、修道院とカテドラルを足したような不思議な空間づくりに成功している。「修道院の窓から漏れる光が床に映る」という照明の演出もしている。あるコーナーでは、ジャン=フィリップ・ラモーのオペラ『カストールとポリュックス』のTristes Apprêts(1764年、ラモーの葬儀ミサで演奏された)がかすかに流れていたのが私のツボにはまった。

啓蒙の世紀の特徴としては、ジャンセニズムの影響と典礼の変化が感じられる。教会が明るくなった。色彩が鮮やかになった。殉教者や奇蹟のテーマはぐっと減り、一七世紀のヴァンサン・ド・ポールのような人間的な活動、聖母やイエスの表現も周りの「普通の人間」の表情と親和性がある。
聖母マリアの誕生、イエスの誕生、子供たちに囲まれるイエスなど、「子供」のテーマも多い。それはルソーの教育論『エミール』などにもみられるように、この世紀には「子供の人格」というものが意識化され、見直されたからだ。

ジャック=ルイ・ダヴィッドの磔刑図のキリストは苦痛よりも自問の表情だ。手足の傷や十字架の木肌のリアリズムもロココ美術とは一線を画する。ネオ・クラシックがイタリア・バロックとフランス・バロックを融合させたということだろう。
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by mariastella | 2017-07-04 05:34 | アート

シモーヌ・ヴェイユの死

アウシュヴィッツの生き残りで、二週間後に90歳を迎えるはずだったシモーヌ・ヴェイユが亡くなった。(Veilで、哲学者のWeilとは違う)

シモーヌ・ヴェイユと言えばフランスでは1975年に妊娠中絶を合法化した保健相として有名だ。

当時の国民議会には女性議員が9人しかいなかった。(今回の総選挙では223人、38,7%が女性議員)
彼女が中絶の選択の自由を訴えると、「アウシュヴィッツでジェノサイド(民族抹殺)を生き延びたのに胎児のジェノサイドをやるつもりか」などと男たちから揶揄されたという。

イギリス軍から解放される数日前に母親がチフスで死に、助かった妹も数年後に交通事故で死に、2005年のアウシュヴィッツ解放60周年に出席した時にもまだ、自分は死の床でもアウシュヴィッツの光景を思い浮かべることだろう、と証言していた。癒えることのないホロコーストのトラウマを社会変革のエネルギーに変え続けてきた人だった。

戦争を生き延びたユダヤ人少年だった故パリ大司教リュスティジィエ枢機卿と、とても親しかったという。

リュスティジィエ師が、ユダヤ人の「改宗カトリック」で枢機卿に上り詰めた人であることや、カトリック的には「妊娠中絶」なんて「罪」であることなどを考えると、この2人の友情の深さや質のさまを想像できる気がする。

ヴェイユ女史は欧州議会の議長にも選ばれ、「多様性の中の統一」を掲げた。

アウシュヴィッツで一度死を経験したから、「不死」の中に生きていたという。
「難しい人」だったという。絶えず「悪」へと傾く人間の社会では、「たやすくて戦わない人」でいれば「未来」はない、絶えず困難な戦いを続けなければならないと。
亡くなった後たった一晩でもう25000人が彼女の遺体の「パンテオン入り」を大統領に訴える署名をしたそうだ。一日後には20万人にもなった。

ひとまずは、マクロンも出席するアンヴァリッドでの葬儀が決まっている。

ヴェイユ女史が、苦しい過去の上に平和を建設したようにやはり少し前に亡くなったドイツのヘルムート・コール元首相も、大戦の確執を乗り越えて平和を築いた人だった。

けれども彼は家庭的には最悪だった。政治の最悪な部分にも関わった。彼の遺品(各国元首との書簡を含む貴重な歴史資料)は、現政権を恨む二度目の妻が絶対に渡さないと言っている。

それに比べるとヴェイユ女史は3人の息子に11人の孫がいる家庭にめぐまれたが、政治的に「中道」であったけれど2007年にサルコジを支援したことが記憶に残る。サルコジは忠実な友だと言っていた。同性婚にも反対していた。今回の大統領選ではバイルーがマクロン支援に回ったことを裏切りのように評していた。
ナチスの全体主義への絶対拒否を持ち続けていたから、何度かもちかけられた首相の座も断ってきたし、ジュピターと称される今のマクロンの神格化の演出にも抵抗があっただろう。

まあ、コールと同じで、亡くなった今となっては称賛の声ばかりが聞こえてくる。
コールやヴェイユをしのぶことによって、政治家たちが自分たちの正統性の印象付けに利用するのではなくて、二度の大戦で殺し合った独仏の連帯と平和を目指すヨーロッパの理念に立ち戻ってくれることを願おう

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by mariastella | 2017-07-03 00:13 | フランス

啓蒙の世紀のバロック その1

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プチパレのパリ市美術館で、「啓蒙の世紀のバロック」展を見てきた。
2年かけてパリ市内の有名教会の30点の絵画を修復したのを中心に集めたもので、なかなかすばらしい。

まず、テーマ的に啓蒙の世紀っぽくて面白いと思った、サンメリー教会で1722年に実際にあったという聖体パン(ホスティア)冒聖事件をテーマにした作品(1759年のサロン出品)を紹介。

聖体パン入れが落とされて、キリストの体であるご聖体が床に散乱。(実際は、器が何者かによって盗まれた後でチャペルの中で壊れて発見されたという)


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もちろん聖職者たちはパニック。

ああ、神罰が当たる。

もし犯人がいるならもちろん火炙りだ。

でも分からないから、毎年の復活祭後の最初の日曜(カジモドの日曜日)にこの事件を忘れないためのセレモニーをすることになった。その後、それを記念するためこの絵が納められたという。

で、この絵の上部では、怒り狂った大天使ガブリエルが剣を振りかざして「罰」を与える気満々でいる。

そのそばに浮かんでいる天使の顔も厳しい。
でも、何しろ、すべての罪びとの代わりに死んだキリストの十字架を持った「宗教(女性形なので女性に擬人化)」が、まあまあととりなして、父なる神が天使を制している。
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よかったね。

それまでは、「ご聖体」を貶めるなんて万死に値する冒瀆できっと管理責任も問われたのだと思うけれど、

それって、イエス・キリストが身をもって人の罪を贖ったという本来のキリスト教の精神に反しているのでは?

目には目を、歯には歯を、って良くないってことになったのでは?

すべての人は神の子で、典礼のグッズにすぎない聖体パンを貶めたからと言って命を奪われるなんておかしい。

などと、啓蒙の世紀の人々がひそかに考え始めていたのかもしれない。

いや、ホスティアがほんとうにキリストの体だとしたって、そのキリストはそれこそ自分の体を人々に差し出し、貶められ釘打たれ磔にされるままになることで「子なる神」の道を示したのだから、床に落ちたくらいで人々をパニックに陥らせるというのはいかがなものか、

と、啓蒙の世紀の「光」が問いかけたのかもしれない。

この絵が描かれた30年後に、フランス革命が起こって、教会も美術品も没収された。

この絵の所有者もパリ市だ。パリ市が、それぞれの教会やしかるべきところに返して飾っている。





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by mariastella | 2017-07-02 02:47 | アート

マクロンの公式写真

フランス中の市役所に飾られるマクロン新大統領の公式写真がネット上で公開された

ネットで公開というところがすでに「新しい」。
その写真は背後の窓を開けた執務机に腰掛けるようなスタイルでそれも新しい。

その机の上にいつも使っている二つのスマートフォンを重ねておいてあるのも今風。
彼が自分でそれを机の上にレイアウトしている様子のビデオも公開されている。

そのビデオには、机の上に広げたドゴール将軍の『戦争回想録』の分厚い本のどのページを広げるかをマクロンが選んでいる様子も見える。

どのページだったのか知りたい。

ドゴール将軍の本の反対側にはスタンダールの『赤と黒』、アンドレ・ジッドの『地の糧』の2札が重ねられている。うーん、このチョイスもなかなか意味深だ。

『赤と黒』のジュリアン・ソレルがナポレオンを崇拝していたことも想起される。

本棚の前での大統領肖像写真というのも定番だったころもあるけれど、多くの本ではなくてこうして選択されているとメッセージ性がある。

ジッドの『地の糧』は一つの詩の世界でもある。

サンシュエルなテーマが私の好みだけれど、マクロンのイメージと重ねると、

Ose devenir ce que tu es. Ne te tiens pas quitte à bon compte. Il y a d'admirables possibilités dans chaque être. Persuade-toi de ta force et de ta jeunesse. Sache te redire sans cesse : il ne tient qu'à moi.

という箇所などぴったりだろう。

すべての人には感嘆すべき可能性がある、君の力と若さとを信じたまえ、

みたいな感じだ。

エリゼ宮の庭の木立がなすV字型とマクロンの両腕のなす逆V字型の交わるところに青い視線がくるように計算されている。

両手の薬指に指輪がある。
ヨーロッパ旗と三色旗を配したのもマクロンらしい。








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by mariastella | 2017-07-01 06:24 | フランス

トランプ大統領、パリ祭(7月14日、フランス革命記念日)への招待に応じる

6/28にマクロン大統領がトランプ大統領と電話で15分話して、7/14の革命記念日のシャンゼリゼでの軍事パレードにトランプを招待したのをトランプが応諾したんだそうだ。

シリアのアサド大統領がまた化学兵器による攻撃を準備しているとかいう情報でマクロンは、オバマとオランドは見逃したが今回はそんなことがあったらフランスは単独でもシリア軍を攻撃する、と宣言したばかりで、トランプも「じゃあ、うちも」ということになったところだった。

マクロンが今回トランプを招待するのも、別にアメリカ大切でトランプに尾を振っているわけではなく、どちらかというと、プーチンをヴェルサイユに招待したように自分の権威を強化するためだということがある。
同時に、トランプがパリ協定から抜けると声明を出した時に

私はパリ市民に選ばれたんじゃない、ピッツバーグ市民に選ばれたんだ」

などと言ってのけたことに対して、「パリ」を見せつけ、しかも、パリ協定に背を向けたアメリカを追い出すのではなく対話を続ける用意がある、ひいては懐柔する、という意味もある。

国民の祝日で派手に軍事パレードをするのは、社会主義国家や全体主義国家、軍事政権国家以外の「先進国」ではフランスだけだ。以前には軍隊パレードを見直す、と言った大統領候補者が叩かれたこともあった。その時の記事に私の考えも少し書いている

軍隊と言えば世界最大の軍事国家はもちろん桁違いでアメリカなのだけれど、そのアメリカのトランプを敢えてパレードに招いたことは、トランプが力の誇示の好きな人だからけっこう乗り気になるだろう、という見とおしがうまくいったとも言われる。

私自身は

力を誇示したり崇めたりするところでは魂は必ずひずみを受ける」

というシモーヌ・ヴェイユの言葉の信奉者だから、軍事パレードなんてもちろん嫌いだ。

しかも、フランスがアメリカと組んで軍事的に目立ったりすると、またテロリストの標的になるだけで迷惑だという忌避感もある。

マクロンとトランプって「力の誇示好き」ってところで似た者同士なのかもしれない。やだやだ。

でもそもそも「国際政治」とは力の誇示で成り立っているのだとしたら、そういう人しか政治家にならないのかもしれない。

プーチンがインタビューで「力のバランスだけが力の行使を防ぐ」と言っていたけれど、彼の口から語られると、「抑止力」とか「必要悪」という言葉がリアリティを持って迫ってくる。

それでも平和への道は別にもあると信じながらジャン・ラプラスやアンドレ・ルーフの本を読んでいる。

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by mariastella | 2017-06-30 01:27 | フランス

披露宴のスピーチ--- 新郎の場合

週末の結婚披露パーティでの新郎の父のスピーチのことを昨日書いたが、新郎のスピーチにも少し触れると、

彼は

「今日は特に数字をひとつ挙げたいと思います。それは66です」

と言った。

666なら黙示録の悪魔の数字?かと思ったけれど、すぐに説明が続いた。

まず、フランス大統領選でマクロンが獲得した66%の数字。

そして、アメリカのトランプ大統領の不支持率。

だそうだ。

で、最後は、自分たちは3度の披露宴をやるので、2度目の今日が終わったところで、3分の2が終わるので66%だという。

66.666・・・%という気もするが。

カップルはもう数年前からロンドンで暮らしていて、去年の暮れにボストンに赴任が決まった時に、グリーンカードの取得ができるようにと、11月にロンドンで結婚式を挙げて1度目の披露宴もやったのだ。

で、今回がフランスでの披露宴、来年の夏がカナダ(モントリオール)での披露宴と決まっている。

3度とも出席する人もいるようだ。

新郎の両親は、アメリカの大学を出た母親とフランスのビジネススクールを出た父親がカナダの大学院で出会って結婚した歴史がある。両親が中東に赴任した時に息子がモントリオールの大学に留学してその後でボストンのMITで博士号をとった。

国籍もフランスとカナダとの両方を持っている。

で、息子(新郎)のスピーチの最後は、

今日は聖ヨハネの祝日です」

ということだった。

なるほど、再々従弟のイエスよりも半年前に生まれた洗礼者ヨハネの誕生日はクリスマスより半年早い6/24だ。

グレゴリオ暦でずれが生じていて、昔はこれが夏至と冬至に当たっていた。

日照時間が一番長い日と短い日が「太陽神」の儀礼の日となっていたものを、キリスト教化するために、イエスとヨハネの誕生日にあてたのだ。

で、カナダのケベック州では、17世紀の初めからフランス人がこれを広めて、1834年からはケベックの国家祝日(フェット・ナショナル)となっている。つまり、ケベックのアイデンティティと結びついた最大のお祭りなのだ。

ちなみに新郎も新婦もカトリックの洗礼を受けているが、カトリック教会での結婚式はスルーしている。

私はこの「新郎」が26年前に「コミュニオン・ソロネル」(初聖体ではなく、フランスでは11歳くらいでやる教会の行事で、まあ「元服」にやや近い通過儀礼の一種)のパーティをやった時、当時すでにルイ・ロートレックらと組んでいたアンサンブルでコンサートを担当したその時も100人くらいは集まって3日くらいかけたパーティだったけれど、もちろん両親が全面的にオーガナイズしていた。

パーティを盛り上げるコンサートだったので、バロック曲でなくほとんどがポピュラー曲やラテン・アメリカの曲だった。

今の私のトリオのMも加わった6人のアンサンブルで、食事や滞在や観光もついたいいアルバイトになっていた。

トリオのHはまだ学生だったのでその時のメンバーではなかった。

その時の少年は、翌年、父親と共にベルギーに引っ越して6年を過ごしてから単身でモントリオールで学んだのだ。

ベルギーのリセ・フランセでは最初ドイツ語を第一外国語にしていたのを途中で英語に変えていた。

その少年が、ボストンに住み、「新郎」になって故郷に戻って英語とフランス語でスピーチをしているのかと思うと、不思議だ。彼の親の世代はみな白髪となり、同世代は世界を動かしている。

私はあいかわらずアンサンブルをやっている。



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by mariastella | 2017-06-28 02:27 | フランス

披露宴のスピーチ

この週末に出席した結婚披露宴。

これまで日本でもフランスでも、結婚式や披露宴というものに何度か出席したことはある。

花嫁花婿の一方が叔父のような年上世代だったり、友人、知人の同世代だったり、甥や姪らの年下世代だったり、時代も場所も関係性もいろいろだった。
その中には、離婚したカップルもいるけれど、末永く続いているカップルがほとんどなのは、昨今の離婚率からいうと圧倒的に高い「成功率」だ。

でも、今回の披露宴は、いろいろな意味で感慨深いものだった。

国籍や出席者がわざわざ駆けつけてきた国の数の多さや、花嫁花婿の人脈のせいだ。

これまで、「・・家と・・家」の結婚式という日本式のものはもちろん、わりと親の世代の力関係が目立つものが多かった。

もちろん「友達婚」のような若い人主体のものもあったが、それは小規模だし、親世代は本当の身内しか出席しないことが多い。

でも、今回の結婚式は、花嫁花婿のカップル主体なのに大掛かりで贅沢なものだった。
そして、それぞれの親たちもとても裕福なのだけれど、今は、昔でいうと晩婚なので親たちがすでにリタイアか半リタイアの状態にある。
今活躍中の現役感、権力感、と言うのは親側になく子供の世代側にある。
今回の披露宴のスピーチでもはっきり口にされていたけれど、主体となっていたのはいわゆる「マクロン世代」の30代後半の若者たちである。
一昔前ならそれでもまだまだ文字通り「若者」だったけれど、今や、フランス大統領や閣僚の世代である。
IT時代の勝ち組というのも30代で自力で富を築いている。
親にも充分金があるのにかかわらず。(もちろん人生のスタートに教育などで十分金をかけられて育っているけれど)

で、今回の花婿も、MITの博士号がありボストンでマッxンゼーの第一線で働くエリートで、その周りの若者たちもみな、金融系、コンサルタント系が多く、
私から見たら

「シカゴ学派の集まりですか」

「あななたたち、今、南スーダンで何が起こっているのか知らないの?」

「この子たちって、どこで戦争が起こっても、武器は売れるは、戦後の復興でも儲かるは、で、うはうは豊かなままなんだろうなあ」

と突っ込みをいれたくなるような面々なのだ。

しかも、健康そうで、幸せそうで、若いだけでなく見た目もかっこういい。

金儲けに汲々としていても心は貧しいんじゃないか、

とか、

健康や愛や美貌はお金じゃ買えないからね、

失敗を知らなければ試練に遭った時にもろいんじゃないか、

などと年寄りが言いそうなこととは縁のない「強者」ぶりだ。

もちろんコンサルとかだけではなく、大学教授とか研究者もいるのだけれど、象牙の塔にこもって論文書いているような人ではなくて、世界中の学会に飛び回っているような野心的な若い人ばかり。そしてすでに具体的な成果や評価を得ている「勝ち組」なのだ。

女性たちもまったく同じプロフィールだ。

いわゆる「製造業」に関わる人はゼロといっていい。

日本人は私一人だけれど、それよりも、前日にバッハのブランデンブルグやテレマンの組曲を弾いて幸福をかみしめる世界に住んでいる私とまったく異質の世界であることに頭がくらくらする。

披露宴でいろいろな人がカップルのエピソードを英仏バイリンガルでスピーチした。
花婿の父(フランス人、この人も、フランスだけでなくカナダに留学し、ヨーロッパの各国や中東などで働いていた。)も花嫁の父(カナダ人)も、それぞれフランス語と英語でスピーチした。彼らは私と同世代だ。

花婿の父のスピーチの中で若者に受けていたのは次のくだりだった。

「女性は船のようなもので、男性という船頭がいないと動きません」

ここで一斉にブーイング。

「でも、船のない船頭って…」

ここで笑いに変わる。

「一人で行く方が速く行けます」

「二人で行くと、遠くへ行けます」

だって。

花嫁の父の方は確か、この結婚のことを「最終取引で、回収不可能な商品の納入」みたいな比喩をして笑いをとっていた。

日本で若い世代の結婚式や披露宴に出たことがないので、今の時代に私と同世代の親たちがどんなスピーチをするのか知らない。

ともかく、この週末の一泊ステイのパーティで私が持参した本は、日本語の文庫本一冊。

佐伯啓思さんの『貨幣と欲望--資本主義の精神解剖学』(ちくま学芸文庫)だった。

おもしろい。

でも、この本で指摘される「根」を失った過剰性とか、存在の空無を埋める消費とか、過剰性を生み出す貨幣愛、とかは、このパーティ会場にいたいわゆる「リア充」で輝いている若者たちと関係がありそうでなさそうな非現実的な感じもするのだった…。

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by mariastella | 2017-06-27 02:19 | 雑感

泉と教会

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サルトから帰る途中で寄った教会。15世紀から建築がはじまったノートルダム ド マレ教会です。
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ORA PRO NOBIS(我らのために 祈り給え)と書いてありますね。
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教会の前に泉があります。湧き水の周りに礼拝所ができた後で、キリスト教の聖所に置き換わった典型です。

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パリに戻って来ました。観光客が歩いているのを見ると、テロの脅威とかどこの国の話かという気がしてきます。


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by mariastella | 2017-06-26 03:14 | フランス

猛暑のフランスと新大臣とドレスコード

このところパリで35度を超す日が続いている。

6月の気温としてはフランス中で戦後最高記録の日々だ。

東京と違って交通機関にも事務所にもクーラーが少ないから、通勤者はつらい。

一般の人と接触する職場はたいてい男だけにドレスコードがある。サンダル、半ズボンが禁止だそうだ。

女性はサンダルにミニのワンピースでも何とも言われないから、圧倒的に女性の方が優遇されている。

それで、男性から性差別だと文句が出るのではないかと思っていたら、昨日、ナントのバス(と市電)の男性運転手たちがスカートで出勤したのをニュースでやっていた。

スコットランドのキルトなどがあるから、そうショックキングでもない。みんなデニムのような地味なスカートだし。

確かに、今の時代、女性の方が服装規定は自由だ。

公式の場所にズボンをはいていっても、どんな丈のスカートでも、上着があろうと肩を出そうと大丈夫だ。

男性のフォーマルは、イギリスのような気候のところがルーツだからいろいろと無理があるなあと思うが、軍隊の伝統と同じで男の方が「制服」っぽいものを受け入れるハードルが低かったのだろうか。

フィリップ首相の新内閣で、国防省の名がまた変わって今度は「陸軍省(と日本語訳で出てきたが、すべての軍が含まれる)」の大臣がフロランス・パルリーになった。史上二人目の軍隊の大臣グラールに引き続いての3人目。この人はジョスパン内閣の時に政権に関わり、その後エールフランスやフランスの国鉄の要職にもついていたという経歴の54歳だ。任命されたその日にさっそく引継ぎ式をしていた。

重そうで暑苦しそうな軍隊の前にスカート姿の二人の女性が立つ。グラールはさすがに上着を着ていたが、パルリーは半袖ワンピース。

記録的暑さの日なのだから正しい選択だけれど、ずらりと並ぶ制服組の方はさぞ暑いだろうと思うとなんとなく違和感を覚える。女性が軍のトップにいるのがおかしいとかいう問題ではなくて、全軍を率いるジュピターを気取るマクロンによる周到な「印象操作(この言葉、使い勝手がいいですね)」のような気がするからだ。

バイルーやフェランのようなベテランの後を埋めたのは、結局マクロンのお仲間で、例の同い年のバンジャマン・グリヴォーだとか「マクロンボーイ」と呼ばれる36歳のジュリアン・ドゥノルマンディなどだ。

マクロンに心酔している優秀な若者のようだが、どこの香水の宣伝のモデルですか、というような見た目だなあ。

まあ、ともかく徹底的に企業型成果主義でやっていくという新政権のお手並みを見るしかない。


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by mariastella | 2017-06-23 02:48 | フランス

マクロン・チームの最初の危機?

総選挙で悠々の過半数の議席を獲得したマクロン新党、選挙に参加した大臣たちも全員当選したのに、ここにきて、選挙後の内閣再編を前にして、ひと月半前の新閣僚4人が次々と振り落とされたり自分から辞退したりした。

まず、過去の金銭スキャンダルが出てきたのにもかかわらず無事に当選したことで選挙民の信任を得たはずのリシャール・フェラン(元社会党)が、新議員たちを導くためと言って辞職したのに続いて、マクロンの当選に大きな力となった中道MoDemのフランソワ・バイルー、マリエル・ド・サルネス(この人は42議席を獲得したMoDemのリーダーとして専念するために辞めるのだと言っている)、そして国防大臣のシルヴィー・グラール(欧州議員として専念するから、と言っている。この人については前にも書いた )らだ。

MoDemは、FN と同じく、EU議員に対して交付される秘書の費用を自国内の党本部の経費に回していた疑いをかけられた。ルペンなどは、もともと反EUだから、「EUの金をフランスに還元したのだ」と言って開き直っていたが、バイルーは議員のモラルについての法案を提出したばかりなので、タイミングが最悪だった。

共和党のフィヨンを落選させた金銭スキャンダルのもとになった「妻子など家族を議員アシスタントとして雇う」ことを禁止するなど、政治家が私腹を肥やしたり身内を優先することを防ぐ法案だ。脱税がないかなど私産の透明化も推進する。

こうしてマクロン大統領下の新政府の重鎮があっさりやめてしまったので、一見するとマクロンの人選が悪かった、任命責任があることで打撃を蒙ったかのように見えるが、実はあまりそういう印象はない。

この「重鎮」たちはいずれもマクロンより年長のベテラン政治家で、この道で何年もやってきたら、みんなが当然のようにやってきた暗黙の金の使い方をしていた経歴があること自体は不思議ではない。

しかも、スキャンダルのせいで議席を失ったのではなく、再選されているのだから投票者から弾劾された形でもない。野党に問い詰められて辞職を余儀なくされたのでもない。

でも、マクロン新政権に影を落とすのはよくないから、自主的にやめた、

という印象を与える。

マクロンやフィリップ首相から勧告されて辞退したとか、新内閣から「落とされた」というイメージでもなく、組閣発表前に次々と「より役に立つ場所で働くため」に少なくとも形としては自主的に辞意を表明している。

これを書いている時点ではまだ新内閣のメンバーは発表されていないけれど、新メンバーは、よりマクロン大統領やマクロン新党の新議員たちのイメージに合致する新鮮なメンバーという可能性もあるだろう。

政治経験が浅かったりなかったりする若い人たちや一般人はまだ「地位や権力」がもたらす「甘い汁」を吸う機会がないから身辺は比較的きれいだろうと期待できるかもしれない。

最初の内閣も任命前に十分「身体検査」をされたはずだけれど、個人でなくEUから党へというタイプの資金流用の疑惑などは視野に入っていなかったかもしれないし、彼ら自身も不正の自覚などなかったのだろう、と思わせる。(バイルーさん、短い間だけれどこのモラル法案提出にがんばって存在感を発揮してよかったね。)

もちろん、内側では、しっかりマクロンやフィリップから圧力をかけられて「粛清」されたのかもしれないけれど、ともかく、外側から見ると、「人々の誤解を招くことのないように自発的に辞職した」というスタイルなので、対面は保てた。

フィリップ首相は40代だが十分ベテランで、「甘い汁」の誘惑は今までになかったのだろうか。マクロン自身は??

この2人はいくら探られても公明正大なのだろうか。

まあ、そんなに潔癖に追求していっても、抗菌グッズに囲まれて育った子供たちみたいな公務員ばかりでは免疫力がなくなるかもなあ、とも思う。

結果さえよければタレラン(政局が変わる度に時の権力者の右腕となった)でもOKだと、やはりだれでも少しは思っているのではないだろうか。

「国内」でいくら潔癖に襟を正したところで、一歩「国際社会」に出れば「陰謀論」とはいかないまでも、どんなあやしいことだってまかり通っているかもしれないのだから、「海千山千」の手腕だって必要だろう。

昨年の東京都の舛添知事のバッシングを見た時にも書いたけれど、どんな立場にも曖昧ゾーンというのはある。本当に必要とされるのは、「絶対の清廉潔白」などではなくて、時代の流れを見て、文脈を読んで、危機管理をする能力なのかもしれない。





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by mariastella | 2017-06-22 02:26 | フランス



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