L'art de croire             竹下節子ブログ

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猛暑のフランスと新大臣とドレスコード

このところパリで35度を超す日が続いている。

6月の気温としてはフランス中で戦後最高記録の日々だ。

東京と違って交通機関にも事務所にもクーラーが少ないから、通勤者はつらい。

一般の人と接触する職場はたいてい男だけにドレスコードがある。サンダル、半ズボンが禁止だそうだ。

女性はサンダルにミニのワンピースでも何とも言われないから、圧倒的に女性の方が優遇されている。

それで、男性から性差別だと文句が出るのではないかと思っていたら、昨日、ナントのバス(と市電)の男性運転手たちがスカートで出勤したのをニュースでやっていた。

スコットランドのキルトなどがあるから、そうショックキングでもない。みんなデニムのような地味なスカートだし。

確かに、今の時代、女性の方が服装規定は自由だ。

公式の場所にズボンをはいていっても、どんな丈のスカートでも、上着があろうと肩を出そうと大丈夫だ。

男性のフォーマルは、イギリスのような気候のところがルーツだからいろいろと無理があるなあと思うが、軍隊の伝統と同じで男の方が「制服」っぽいものを受け入れるハードルが低かったのだろうか。

フィリップ首相の新内閣で、国防省の名がまた変わって今度は「陸軍省(と日本語訳で出てきたが、すべての軍が含まれる)」の大臣がフロランス・パルリーになった。史上二人目の軍隊の大臣グラールに引き続いての3人目。この人はジョスパン内閣の時に政権に関わり、その後エールフランスやフランスの国鉄の要職にもついていたという経歴の54歳だ。任命されたその日にさっそく引継ぎ式をしていた。

重そうで暑苦しそうな軍隊の前にスカート姿の二人の女性が立つ。グラールはさすがに上着を着ていたが、パルリーは半袖ワンピース。

記録的暑さの日なのだから正しい選択だけれど、ずらりと並ぶ制服組の方はさぞ暑いだろうと思うとなんとなく違和感を覚える。女性が軍のトップにいるのがおかしいとかいう問題ではなくて、全軍を率いるジュピターを気取るマクロンによる周到な「印象操作(この言葉、使い勝手がいいですね)」のような気がするからだ。

バイルーやフェランのようなベテランの後を埋めたのは、結局マクロンのお仲間で、例の同い年のバンジャマン・グリヴォーだとか「マクロンボーイ」と呼ばれる36歳のジュリアン・ドゥノルマンディなどだ。

マクロンに心酔している優秀な若者のようだが、どこの香水の宣伝のモデルですか、というような見た目だなあ。

まあ、ともかく徹底的に企業型成果主義でやっていくという新政権のお手並みを見るしかない。


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by mariastella | 2017-06-23 02:48 | フランス

マクロン・チームの最初の危機?

総選挙で悠々の過半数の議席を獲得したマクロン新党、選挙に参加した大臣たちも全員当選したのに、ここにきて、選挙後の内閣再編を前にして、ひと月半前の新閣僚4人が次々と振り落とされたり自分から辞退したりした。

まず、過去の金銭スキャンダルが出てきたのにもかかわらず無事に当選したことで選挙民の信任を得たはずのリシャール・フェラン(元社会党)が、新議員たちを導くためと言って辞職したのに続いて、マクロンの当選に大きな力となった中道MoDemのフランソワ・バイルー、マリエル・ド・サルネス(この人は42議席を獲得したMoDemのリーダーとして専念するために辞めるのだと言っている)、そして国防大臣のシルヴィー・グラール(欧州議員として専念するから、と言っている。この人については前にも書いた )らだ。

MoDemは、FN と同じく、EU議員に対して交付される秘書の費用を自国内の党本部の経費に回していた疑いをかけられた。ルペンなどは、もともと反EUだから、「EUの金をフランスに還元したのだ」と言って開き直っていたが、バイルーは議員のモラルについての法案を提出したばかりなので、タイミングが最悪だった。

共和党のフィヨンを落選させた金銭スキャンダルのもとになった「妻子など家族を議員アシスタントとして雇う」ことを禁止するなど、政治家が私腹を肥やしたり身内を優先することを防ぐ法案だ。脱税がないかなど私産の透明化も推進する。

こうしてマクロン大統領下の新政府の重鎮があっさりやめてしまったので、一見するとマクロンの人選が悪かった、任命責任があることで打撃を蒙ったかのように見えるが、実はあまりそういう印象はない。

この「重鎮」たちはいずれもマクロンより年長のベテラン政治家で、この道で何年もやってきたら、みんなが当然のようにやってきた暗黙の金の使い方をしていた経歴があること自体は不思議ではない。

しかも、スキャンダルのせいで議席を失ったのではなく、再選されているのだから投票者から弾劾された形でもない。野党に問い詰められて辞職を余儀なくされたのでもない。

でも、マクロン新政権に影を落とすのはよくないから、自主的にやめた、

という印象を与える。

マクロンやフィリップ首相から勧告されて辞退したとか、新内閣から「落とされた」というイメージでもなく、組閣発表前に次々と「より役に立つ場所で働くため」に少なくとも形としては自主的に辞意を表明している。

これを書いている時点ではまだ新内閣のメンバーは発表されていないけれど、新メンバーは、よりマクロン大統領やマクロン新党の新議員たちのイメージに合致する新鮮なメンバーという可能性もあるだろう。

政治経験が浅かったりなかったりする若い人たちや一般人はまだ「地位や権力」がもたらす「甘い汁」を吸う機会がないから身辺は比較的きれいだろうと期待できるかもしれない。

最初の内閣も任命前に十分「身体検査」をされたはずだけれど、個人でなくEUから党へというタイプの資金流用の疑惑などは視野に入っていなかったかもしれないし、彼ら自身も不正の自覚などなかったのだろう、と思わせる。(バイルーさん、短い間だけれどこのモラル法案提出にがんばって存在感を発揮してよかったね。)

もちろん、内側では、しっかりマクロンやフィリップから圧力をかけられて「粛清」されたのかもしれないけれど、ともかく、外側から見ると、「人々の誤解を招くことのないように自発的に辞職した」というスタイルなので、対面は保てた。

フィリップ首相は40代だが十分ベテランで、「甘い汁」の誘惑は今までになかったのだろうか。マクロン自身は??

この2人はいくら探られても公明正大なのだろうか。

まあ、そんなに潔癖に追求していっても、抗菌グッズに囲まれて育った子供たちみたいな公務員ばかりでは免疫力がなくなるかもなあ、とも思う。

結果さえよければタレラン(政局が変わる度に時の権力者の右腕となった)でもOKだと、やはりだれでも少しは思っているのではないだろうか。

「国内」でいくら潔癖に襟を正したところで、一歩「国際社会」に出れば「陰謀論」とはいかないまでも、どんなあやしいことだってまかり通っているかもしれないのだから、「海千山千」の手腕だって必要だろう。

昨年の東京都の舛添知事のバッシングを見た時にも書いたけれど、どんな立場にも曖昧ゾーンというのはある。本当に必要とされるのは、「絶対の清廉潔白」などではなくて、時代の流れを見て、文脈を読んで、危機管理をする能力なのかもしれない。





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by mariastella | 2017-06-22 02:26 | フランス

共謀罪成立とフランスと韓国

最近、フランスでも大統領選や総選挙、テロのニュースなどを連続して追っているのに加えて、日本でも内閣府にまつわるスキャンダルや共謀罪の成立や今度は都議会など、気になるテーマが続いたので、ついつい、いろいろなことを考えてしまう。

共謀罪が強引に成立したことで敗北感や恐れ、脅威を表明する人も多いが、私は正直言って、それ自体に限ったら、これだけ議論が生まれている状況についてはむしろポジティヴな印象を持っている。

それは、フランスの「緊急事態」がもうずっと続いているせいでもある。

アメリカの9・11後の「愛国法」などには危機感を抱いたけれど、
緊急事態宣言中、「テロとの戦争」宣言中であるはずのフランスにおける危機感は、実はあまりない。

「一般の人には適用されませんよ」、というやつだ。

もともと「表現の自由」や「生き方の自由」をイスラム原理主義過激派から守るというのが出発点であるせいか、戦争だ、非常事態だと言っていることとやっていることがだいぶ違って、そうとうヌルイ。

ジャーナリズムの言論は完全に枠外となっているし、もともとデモを規制する項目があったのに、フランス人が「外へ出てデモをする」ことを自主規制することも考えられず、全く変わっていない。「意思表示」の自由は共和国絶対の伝統だ。
2015年の無差別テロの後も、「外に出るな」みたいな指示があったようだが、あわてて日本人観光客や修学旅行生たちが日本大使館の指示でホテルにこもっていたという話は聞いたけれど、うちから出なかったなんていうフランス人の話は聞いたことがない。
「一般の人」が堂々と騒ぐのがフランスだ。

こういうと「さすがフランスだ」と思うかもしれないが、フランスだけではない。
私は韓国の民衆が昨年から今年にかけてパク・クネ大統領を大挙して糾弾し、ついに罷免に追い込んだのを見て、結局、どんな法律があろうとも、市井の人々の意志が強ければその表示はとめられないし、ついには国を動かすのだなあと思った。

なにしろ、韓国と言えば、いまだに北朝鮮と「休戦」状態だが戦争は終わっていないのだし、言い換えれば常に「非常事態」、戒厳令OKの国だ。
そして、日本の治安維持法をモデルにしたという「国家保安法」というのがある。共産主義を賛美する行為やその「兆候」まで取り締まりの対象になるというやつだ。
後はどうにでも拡大解釈可能で、実際、独裁政権からは恣意的に使われた。
「民主化」した後で廃止の動きもあったけれど、今もしっかり合憲とされ、有効だ。

1970年代に京大の医学部からソウル大学に留学していた私の知人は、この国家保安法を適用されたいわゆる「学園浸透スパイ事件」のでっちあげに巻き込まれて死刑判決を受けた。

彼が死刑囚として獄中にあった時に、今回失脚したパク・クネ大統領の父親であるパク・チョンヒ大統領(この人は大統領の直接選挙を廃止して永久政権化しようとした軍事独裁者だ)が暗殺された。
彼は13年も投獄された後、パク・クネ政権の時代にようやく再審無罪を勝ち取った。
もともと、確か彼が「北朝鮮」に行っていた、と断罪された時期には日本で国体に出場していた(陸上選手だった)ということで、冤罪は明らかだったのだけれど、当時は真実や事実で無罪を「立証」することなど無力だった。無法地帯で合法的な手立てを探しても意味がない。

その当時、私の話を聞いた周りのフランス人の方がはるかに積極的に彼の救援の手立てを模索してくれたことの驚きを私は今もはっきり覚えている。

その韓国の人たちが、今回は堂々と大統領を弾劾したのだ。

悪法があっても、その気になればそれを適用できる為政者を罷免することもできる。
その適用を不可能にすることだってできる。

悪法や悪法の成立事情やそれを可能にした為政者に異を唱え、
自由と尊厳を守る断固とした意志を、
持続的に、
忍耐強く、
表明するならば。

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by mariastella | 2017-06-21 01:39 | 雑感

フランス総選挙とマクロン新党

第一回投票の結果は、予想通り、

1.マクロン新党の圧勝
2.過半数の棄権という投票率の低さ

となった。

フランスでは大統領選のすぐ後の総選挙で、大統領選の余波もある上、選ばれた大統領に議席の単独過半数を与えて公約を実行させてみる、という暗黙の合意があるので、たいていはこういう結果になる。

でも、今回の特徴は、議会には新顔である新党でもそれが通用するのか、という興味があった。
結果は、社会党の党首や、大統領選公式候補だったブノワ・アモンなどベテランが新党の新顔に敗退して決選投票にさえ残らないなどという過激なものだった。

棄権率の高さの理由としては、今回の大統領選は、はじめて共和党も社会党も予備選をやったので、選挙運動期間が長すぎで、もうみんながうんざりしたこと、ほおっておいてもマクロン新党で決まりでいいかと思ったこと、日曜の天気が良すぎてみな出かけてしまったこと、
などなどがある。

もちろん、マクロン新党以外はみな口をそろえて、

このような低投票率の選挙には信憑性がない、
従って、マクロンがそれほど支持されているわけではない、
圧倒的な単独過半数を許してはいけない、
民主主義の危機、

などと言っている。

これは一理ある。
こんなことなら、大統領選と同時に総選挙もして、
大統領選の第一回投票の票数の割合に合致する数の議員にすべきだ、
という意見もある。
そうすれば、真の討議ができる、と。

単独過半数など占めるとどうしても驕りや寡頭政治につながりやすい。
少数派の意見が聞えてこない。
まあマクロン新党については「政治家」として素人が半数いることだし、
右派からも左派からも構成されているので、内部だけでも意見のすり合わせが必要だろうから「独裁」の方には逸脱しにくいだろうけれど。
そして、アメリカと同様、ジャーナリズムがわりあいよく機能していると思われるのが救いだ。

私が個人的に注目していた新党の二人は、

例の神学者のクレマンス・ルヴィエと、超ユニークな有名人数学者のセドリック・ヴィラニだ。

前者は決選投票には残るが一位に大差をつけられているのでまず無理だろう。

後者は、市井の医者や看護師やホラー映画製作者など無名の新人が半数を占めるマクロン新党で、突出して目立つキャラなので、実際、47%を超える得票率だった。第二次投票も楽勝だろう。
フィールズ賞も受賞した天才肌だが、多動症っぽくも見える。
この人がどんな「政治家」になるのかを見るのが楽しみだ。

共和党や社会党を「裏切って」大臣になったブルノー・ル・メールやリシャール・フェラン(おまけに金銭スキャンダルでもたたかれた)は、それぞれが共和党や社会党からの候補として立候補した前回よりも高得票率を得たので、対立候補者からの「裏切り」というプロパガンダはうまく機能しなかったようだ。

週末はテロについてとトランプについてのサルマン・ラシュデイの記事を読んだ。
彼は今アメリカに住むが、まさかのトランプ当選にはいろいろな理由が挙げられるものの、最も本音の部分は、アメリカの白人たちが、8年間もオバマに牛耳られていたのががまんできなかったからだというのだ。とてもリアリティのある証言が続いていた。怖い。








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by mariastella | 2017-06-13 02:12 | フランス

ニコラ・ユロー環境相の意味、マクロン政権への私のスタンスなど

今朝のラジオで緑の党のダニエル・コーン=ベンディットが、ニコラ・ユローの、環境相就任についてコメントしていた。

これまでサルコジからもオランドからも誘われていたのに断ってきたポストをどうして受けたのか、
どうみても原発推進派の首相のもとでこの人選は、「アリバイ大臣」と言われているがそうなのか、

という質問に対するものだ。

ニコラ・ユローはフランス人の好きな人物のアンケートでいつも上位にある人気者で知名度は高い。
この人をついに入閣させたということは新内閣のイメージアップではある。
ヤニック・ジャドも歓迎していた。

(けれども、一方では、ディープ・エコロジストからは体制寄りのご都合主義者として批判されてもいるのだけれど。)

で、コーン=ベンディットの見立ては、マクロンはユローを守るだろうというもの。
というのは、ユローは、これまでのやり方を見ても、もし、自分が十分に動けないとか妨害をされたと感じたらさっさと自認するに違いない。

マクロンにとって、ユローを環境相にして親エコロジーを演出することのメリットよりも、
ユローに批判されて出て行かれることのデメリットの方がはるかに大きい。

だから、彼を起用するにあたっては絶対に辞任させないという自信がある、というか、彼の立場を守る、という合意があってのことなのだろう。

以上がコーン=ベンディットの見立てだ。わりと説得力があったので紹介する。

新内閣の組閣については、後は、

男女同数と言っても「格」としては女性(シルヴィー・グラール)は5番目に出てくるに過ぎない、
平均年齢がオランドの初期内閣よりも上である、

などがコメントされている。

政治畑以外からの入閣が半数を占め、
全体としては左派に傾いているが、
フィリップ首相の任命を聞いたピエール・ガタズ(フランスの経団連にあたるフランス企業運動MEDEFの会長)がいたく喜んだということからも分かるように、「経済リベラル」の路線は確実だ。

労働組合の緊張は高まっているし、マクロンが財政や失業問題の立て直しに結果を出さなければ、
また「取り残された庶民」の怒り、というシナリオになる。

全体としては、バランスが取れた巧妙な組閣だとも言われるが、国民議会の総選挙の経緯を見てみないと誰にも何も分からない未知数であるということは確かで、夏には例えばバロワン首相とのねじれ内閣になるなどの可能性もゼロではない。

付記: 古川利さんが私のことを名指しで「マクロンにメロメロ」だとブログに書いていた、と教えてもらった。
私の一連の記事でどうしてマクロンにメロメロなどという印象を与えるのか不思議だ。あらためてまとめておこう。

数年前から書いているように、個人的には彼の雰囲気は神経質でナルシスティックで好きではない。
教祖的演出も嫌いだった。
政策の新自由主義にも反対の立場だ。(しかも、ポピュリスト公約の住居税免除は私に関係ないしむしろ収入は低下する。)
政策的にはアモンを支持していたが、大麻の解禁のことで躊躇したし、メランションの言うことも、人間性は別としても基本線においては評価している。
マクロンを支持してもいいかと思ったのは第一次投票の三日前に起きたテロのテロリストがマクロンと同じ39歳だったので、同じ歳で国をリードしようとしている若い世代に希望を見出したくなったからだ。
その後はもちろん、ル・ペンよりもマクロンを支持した。彼が当選して「ほっとした」というのが本音だ。
結果的に、プーチン、メイ、習近平、トランプ、メルケルといった強烈な人達に対して、イメージ的に別のメッセージを発することができているようなので悪くはなかったと思う。
フランス語能力が高いことはもちろん評価できる。
全体としては今の私にとってはマクロンはOVNIだとしか言えない。
夫人が私と同世代であることなどどうでもいいが、そのカップルのありようが、例えばトランプ夫妻の逆であるような部分は痛快だとは思う。
私の周囲の若い世代はマクロン支持が多いので彼らへの連帯感はある。
前の記事でも書いたが目上の公人の頬を人前で軽くたたくような不自然な「父性演出」は個人的に不愉快。

とまあ、こんなところ。
サルコジやオランドと違って、内政では軽々しく「おことば」を発しないと言っているので(実際組閣についての説明もなかった)、まあこれからはそう目につかないだろう。食傷気味だ。
フィリップ首相の姿もあまり見たくない。やはりラジオと読み物中心で行くつもり。


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by mariastella | 2017-05-18 16:30 | フランス

マクロン内閣はやっぱり… ジェラール・コロン国務相

(注:タイトルの「コロン」はコロンブではありません。最初の打ち間違いが全部にコピーされてしまったのに今気づいたので訂正します。)


任命前のモラルと資産の「身体検査」に時間をかけたということで遅くなった内閣のメンバーが発表された。

バイルーが法務相、
ル・メールが経済相、
ニコラ・ユローが環境相、
ル・ドリアンが欧州・外務相

と、中道、共和党、緑の党、社会党の大物が大方の予想通りちゃんと要職に…。

突っ込みどころは多いけれど、予想通り、ジェラール・コロンの名が真っ先に国務・内務大臣として上がったのは感慨深い。

マクロンの就任式で握手をされ、抱かれて、涙を流していたからだ。

私はマクロンの握手やハグの仕方が嫌いだ。
オランドに肩を抱かれたりするのが困る、というのは分かる。ル・ペンから揶揄されるような父と子のような印象を与えたくない。だから自分もオランドの肩や背中に手を置いた。

で、就任の時に握手に回った時も、かなりの人の頬や首にふれていた。ジェラール・コロンにも例外ではなかった。

大統領のイメージに、「父なる神」ならぬ「神なる父」を印象付けているように見えた。
握手やハグをしながら手を相手の肩や腕においたりポンポンと軽くたたくのは「父親的」だ。

トランプの強引な「引き寄せ握手」とはまた別の「慈愛に満ちた」上から目線。
もちろん彼が若く、若く見え、トランプやシラクやジスカールやドゴールのように高身長でもなく、恰幅がいいわけでもなく、ギニョールで「赤ん坊」扱いされてきたことを考えると、こういうちょっとしたしぐさのシンボリックな意味によって父性的なものを演出する必要は分かる。

でも、今年70歳のベテランで、マクロンを最初から支えたリヨン市長にことさら涙を流させるような演出は不愉快だった。私には広島でオバマが高齢の被爆者を父性的にハグする写真も不愉快だった。オバマも背が高いから誰と並んでも「上から目線」になるのは仕方がないけれど。

ほんとうに「大統領」にハグされたり頬にふれたりされることに感激する人がいるのだろうか。

メルケル首相との最初の公式会談ではまずメルケルに腕を回され



来るG20やG7でのトランプとの握手が楽しみと言えば楽しみだけれど…。


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by mariastella | 2017-05-17 23:33 | フランス

フランスの新首相

大方の予想通り、アラン・ジュッペの側近だったル・アーヴル市長のエドゥアール・フィリップがマクロン政権の首相に任命された。がたがたになった社会党シンパの多いマクロンのLREM党には共和党の取り込みが必要で、しかも、「手垢のついていない」人が必要だから、共和党のこの人が選ばれた。

46歳と若いし、マクロンと同じく、労働者の階層から「共和国の聖職」である教師になった祖母や曾祖母に文学を学んだ。母はカトリックで教師の父は無神論自由思想家、自分は信仰はないが信仰のある人や聖なるものを尊敬する、と言う。月曜から木曜までパリ9区に夫人のエディット・シャーブル(一つ違い)と3人の子供(10代の二人の息子と7歳になる末娘)と住み、週末に母の住むル・アーヴルに行くという。
夫人とは政治学院で知り合い、行政学院では15位以内(マクロンは5位と言われるが、彼の年の順位は手続きのせいで無効になり訴訟も起こされた)のエリートだが、祖父が共産党員で、ジュッペに誘われるまでは自分も最初は社会党に席を置いた。ミッシェル・ロカールに心酔したのはマクロンとの共通点だ。経済よりも法律に詳しく弁護士でもある。
ボクシングが趣味で、マクロンのように「愛される」ことを標榜するタイプでなく嫌われるのは平気だそうだ。
フィヨンの選挙運動からは途中でドロップ・アウトしている。

マクロンとチームを組むのによくこういう「ぴったりな」人材がいたものだと思うが、それもマクロンの「運の良さ」かもしれない。

新首相は高身長で、小柄なカズヌーヴ首相との引継ぎは対照的だったが、マクロン政権の前衛で戦うには頼もしそうだ。

マクロンは予定通りドイツに。
サルコジ以前のように外交と軍事に専念して、内政は首相を前面に立たせる方針だそうだから、明日の組閣発表が楽しみだ。

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by mariastella | 2017-05-16 01:52 | フランス

マクロン大統領の就任(追記あり)

マクロンの就任セレモニーを中継で見た。

1月にトランプの就任セレモニーを中継で見てしまったことを記事にしたので、一応バランスをとっておこうかなと思ったのだ。

5年前に連れ合いのジャーナリストと手を取り合って現れてその後スキャンダラスな別れ方をしたオランドが1人で現れたので、マクロンもすべて一人で仕切った。

フランスはひとりの「人」を選んだのでカップルを選んだのではない、というシンボルをきっちり踏襲している。(ビル・クリントンが当選した時は一人で二人分だからお得、みたいな言説があったことを思い出す。リーダーの夫人が家庭内野党と称されていた国もあったようだけれど…)

すべてにそつがない。

就任の演説も、オランドがサルコジに触れなかったのと違って、歴代の大統領の功績にちゃんと触れて、模範的によくできていた。
まあこれは当然予想されていた範囲だ。
失敗は許されない。

すばらしかったのは、そのすぐ前のローラン・ファビウスによるスピーチだった。
社会党ミッテランの秘蔵っ子で37歳で首相になったファビウスは社会党オランドの秘蔵っ子で39歳で大統領となったマクロンを前に感慨深いものがあっただろう。

大統領に与えられるレジオンドヌールのグランドマスターのメダルにはHP(honneur et patrie)つまり名誉と祖国、と軍隊らしい標語が入っているが、ファビウスはきっちりと共和国の標語、

自由、平等、同胞愛 を出して、

自由には大胆さが、
平等には厳律が、
同胞愛(これは人類皆きょうだいの意味)には意志、意欲が必要、

という言葉を引いた。

すなわち、

自由を得るには、恐れていてはならない、思い切った大胆さが必要だ、

平等を実現するには、事なかれ主義やなれ合いや建前だけではいけない、客観的にきっちりと厳しくチェックしなくてはならない、  

すべての人ときょうだいのように共存するには、それを望み、志すことが必要だ。

ということだ。そして、

それを通して「持続する平和」を実現しなくてはならない。

ということをちゃんと言葉にしていた。

このファビウスの言葉とマクロンのスピーチの組み合わせは、フランス語と、フランスの共和国主義と社会民主主義の「建前」が揺るがないことを見せてなかなか感動的だった。

壇上でペーパーを参照できたマクロンと違って、70歳のファビウス、このスピーチを全部そらで言えたのだから、それも大したものだと思った。

さすが百戦錬磨。

百戦錬磨と言えば、マクロンの外交顧問になったフィリップ・エチエンヌも頼もしい。

ファビウスもそうだが、マクロンが2度一次試験で落とされたパリ高等師範を出ている。しかも数学のアグレガシオン保持者で、経済学の学位、セルビア=クロアチア語の学位も持ち、
ENA(行政学院)では、オランドやドヴィルパンやセゴレーヌ・ロワイヤル女史らを輩出した有名な「ヴォルテール同窓生」の学年だ。ENAの卒業順位は公表されているが、総合部門ではオランドが117名中の8番、エチエンヌは経済学部門の42人中8番だった。(ちなみに総合部門でロワイヤルは64番、ヴィルパンは25番)。

ヨーロッパの様々な国の大使を務め、最後はドイツだった。選挙前のマクロンとメルケルの会合を手配したのも彼だ。(追記: 防衛相に任命されたシルヴィー・グラールが直接の手引きをしたそうだ。彼女もドイツ語、英語、イタリア語を自由に話す)

61歳の経験豊富なエリートのエチエンヌの他に、特別顧問として、なんと30歳の、戦略とマーケティングの天才イスマエル・メリアンという人もいる。
19歳でDSK(ドミニク・ストラス=カーン)の支援に入り、22歳でマクロンと出会った。この人は経験豊富とか百戦錬磨とか未来のマクロンという感じではなく、ただひたすら「ある部門の天才」という感じだ。

マクロンは人に恵まれている。いや、人に恵まれている人が成功するのだろう。

意志はオプティミズムで理性はペシミズムだ」と誰かがコメントしていた。

誰もが、39歳の大統領の中に「希望」を見ようとしている。
エリゼ宮のパーティ会場で演奏された曲にはモーツァルト、フレンチ・カンカン、ハンガリー舞曲など、独立記念日の祝祭のような陽気なものが流れていた。

想像するのも嫌だけれど、もしル・ペンが選ばれていたらどんなスピーチ、どんな就任式だったろうと思うと、やはり「あり得ない」としか言えない。ル・ペンはそもそも実際に選出されることを想定していないとしか思えない。トランプの就任を「悪夢」のように感じた多くのアメリカ人に同情の念を禁じ得ない。

ル・ペンの姪のマリオンも政治活動を停止したし、マリーヌも今のところ気配を消している。

週明けの組閣や総選挙の行方が注目される。


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by mariastella | 2017-05-14 21:49 | フランス



竹下節子が考えてることの断片です。サイトはhttp://www.setukotakeshita.com/
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