L'art de croire             竹下節子ブログ

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ニコラ・ユロー環境相の意味、マクロン政権への私のスタンスなど

今朝のラジオで緑の党のダニエル・コーン=ベンディットが、ニコラ・ユローの、環境相就任についてコメントしていた。

これまでサルコジからもオランドからも誘われていたのに断ってきたポストをどうして受けたのか、
どうみても原発推進派の首相のもとでこの人選は、「アリバイ大臣」と言われているがそうなのか、

という質問に対するものだ。

ニコラ・ユローはフランス人の好きな人物のアンケートでいつも上位にある人気者で知名度は高い。
この人をついに入閣させたということは新内閣のイメージアップではある。
ヤニック・ジャドも歓迎していた。

(けれども、一方では、ディープ・エコロジストからは体制寄りのご都合主義者として批判されてもいるのだけれど。)

で、コーン=ベンディットの見立ては、マクロンはユローを守るだろうというもの。
というのは、ユローは、これまでのやり方を見ても、もし、自分が十分に動けないとか妨害をされたと感じたらさっさと自認するに違いない。

マクロンにとって、ユローを環境相にして親エコロジーを演出することのメリットよりも、
ユローに批判されて出て行かれることのデメリットの方がはるかに大きい。

だから、彼を起用するにあたっては絶対に辞任させないという自信がある、というか、彼の立場を守る、という合意があってのことなのだろう。

以上がコーン=ベンディットの見立てだ。わりと説得力があったので紹介する。

新内閣の組閣については、後は、

男女同数と言っても「格」としては女性(シルヴィー・グラール)は5番目に出てくるに過ぎない、
平均年齢がオランドの初期内閣よりも上である、

などがコメントされている。

政治畑以外からの入閣が半数を占め、
全体としては左派に傾いているが、
フィリップ首相の任命を聞いたピエール・ガタズ(フランスの経団連にあたるフランス企業運動MEDEFの会長)がいたく喜んだということからも分かるように、「経済リベラル」の路線は確実だ。

労働組合の緊張は高まっているし、マクロンが財政や失業問題の立て直しに結果を出さなければ、
また「取り残された庶民」の怒り、というシナリオになる。

全体としては、バランスが取れた巧妙な組閣だとも言われるが、国民議会の総選挙の経緯を見てみないと誰にも何も分からない未知数であるということは確かで、夏には例えばバロワン首相とのねじれ内閣になるなどの可能性もゼロではない。

付記: 古川利さんが私のことを名指しで「マクロンにメロメロ」だとブログに書いていた、と教えてもらった。
私の一連の記事でどうしてマクロンにメロメロなどという印象を与えるのか不思議だ。あらためてまとめておこう。

数年前から書いているように、個人的には彼の雰囲気は神経質でナルシスティックで好きではない。
教祖的演出も嫌いだった。
政策の新自由主義にも反対の立場だ。(しかも、ポピュリスト公約の住居税免除は私に関係ないしむしろ収入は低下する。)
政策的にはアモンを支持していたが、大麻の解禁のことで躊躇したし、メランションの言うことも、人間性は別としても基本線においては評価している。
マクロンを支持してもいいかと思ったのは第一次投票の三日前に起きたテロのテロリストがマクロンと同じ39歳だったので、同じ歳で国をリードしようとしている若い世代に希望を見出したくなったからだ。
その後はもちろん、ル・ペンよりもマクロンを支持した。彼が当選して「ほっとした」というのが本音だ。
結果的に、プーチン、メイ、習近平、トランプ、メルケルといった強烈な人達に対して、イメージ的に別のメッセージを発することができているようなので悪くはなかったと思う。
フランス語能力が高いことはもちろん評価できる。
全体としては今の私にとってはマクロンはOVNIだとしか言えない。
夫人が私と同世代であることなどどうでもいいが、そのカップルのありようが、例えばトランプ夫妻の逆であるような部分は痛快だとは思う。
私の周囲の若い世代はマクロン支持が多いので彼らへの連帯感はある。
前の記事でも書いたが目上の公人の頬を人前で軽くたたくような不自然な「父性演出」は個人的に不愉快。

とまあ、こんなところ。
サルコジやオランドと違って、内政では軽々しく「おことば」を発しないと言っているので(実際組閣についての説明もなかった)、まあこれからはそう目につかないだろう。食傷気味だ。
フィリップ首相の姿もあまり見たくない。やはりラジオと読み物中心で行くつもり。


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by mariastella | 2017-05-18 16:30 | フランス

マクロン内閣はやっぱり… ジェラール・コロン国務相

(注:タイトルの「コロン」はコロンブではありません。最初の打ち間違いが全部にコピーされてしまったのに今気づいたので訂正します。)


任命前のモラルと資産の「身体検査」に時間をかけたということで遅くなった内閣のメンバーが発表された。

バイルーが法務相、
ル・メールが経済相、
ニコラ・ユローが環境相、
ル・ドリアンが欧州・外務相

と、中道、共和党、緑の党、社会党の大物が大方の予想通りちゃんと要職に…。

突っ込みどころは多いけれど、予想通り、ジェラール・コロンの名が真っ先に国務・内務大臣として上がったのは感慨深い。

マクロンの就任式で握手をされ、抱かれて、涙を流していたからだ。

私はマクロンの握手やハグの仕方が嫌いだ。
オランドに肩を抱かれたりするのが困る、というのは分かる。ル・ペンから揶揄されるような父と子のような印象を与えたくない。だから自分もオランドの肩や背中に手を置いた。

で、就任の時に握手に回った時も、かなりの人の頬や首にふれていた。ジェラール・コロンにも例外ではなかった。

大統領のイメージに、「父なる神」ならぬ「神なる父」を印象付けているように見えた。
握手やハグをしながら手を相手の肩や腕においたりポンポンと軽くたたくのは「父親的」だ。

トランプの強引な「引き寄せ握手」とはまた別の「慈愛に満ちた」上から目線。
もちろん彼が若く、若く見え、トランプやシラクやジスカールやドゴールのように高身長でもなく、恰幅がいいわけでもなく、ギニョールで「赤ん坊」扱いされてきたことを考えると、こういうちょっとしたしぐさのシンボリックな意味によって父性的なものを演出する必要は分かる。

でも、今年70歳のベテランで、マクロンを最初から支えたリヨン市長にことさら涙を流させるような演出は不愉快だった。私には広島でオバマが高齢の被爆者を父性的にハグする写真も不愉快だった。オバマも背が高いから誰と並んでも「上から目線」になるのは仕方がないけれど。

ほんとうに「大統領」にハグされたり頬にふれたりされることに感激する人がいるのだろうか。

メルケル首相との最初の公式会談ではまずメルケルに腕を回され



来るG20やG7でのトランプとの握手が楽しみと言えば楽しみだけれど…。


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by mariastella | 2017-05-17 23:33 | フランス

フランスの新首相

大方の予想通り、アラン・ジュッペの側近だったル・アーヴル市長のエドゥアール・フィリップがマクロン政権の首相に任命された。がたがたになった社会党シンパの多いマクロンのLREM党には共和党の取り込みが必要で、しかも、「手垢のついていない」人が必要だから、共和党のこの人が選ばれた。

46歳と若いし、マクロンと同じく、労働者の階層から「共和国の聖職」である教師になった祖母や曾祖母に文学を学んだ。母はカトリックで教師の父は無神論自由思想家、自分は信仰はないが信仰のある人や聖なるものを尊敬する、と言う。月曜から木曜までパリ9区に夫人のエディット・シャーブル(一つ違い)と3人の子供(10代の二人の息子と7歳になる末娘)と住み、週末に母の住むル・アーヴルに行くという。
夫人とは政治学院で知り合い、行政学院では15位以内(マクロンは5位と言われるが、彼の年の順位は手続きのせいで無効になり訴訟も起こされた)のエリートだが、祖父が共産党員で、ジュッペに誘われるまでは自分も最初は社会党に席を置いた。ミッシェル・ロカールに心酔したのはマクロンとの共通点だ。経済よりも法律に詳しく弁護士でもある。
ボクシングが趣味で、マクロンのように「愛される」ことを標榜するタイプでなく嫌われるのは平気だそうだ。
フィヨンの選挙運動からは途中でドロップ・アウトしている。

マクロンとチームを組むのによくこういう「ぴったりな」人材がいたものだと思うが、それもマクロンの「運の良さ」かもしれない。

新首相は高身長で、小柄なカズヌーヴ首相との引継ぎは対照的だったが、マクロン政権の前衛で戦うには頼もしそうだ。

マクロンは予定通りドイツに。
サルコジ以前のように外交と軍事に専念して、内政は首相を前面に立たせる方針だそうだから、明日の組閣発表が楽しみだ。

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by mariastella | 2017-05-16 01:52 | フランス

マクロン大統領の就任(追記あり)

マクロンの就任セレモニーを中継で見た。

1月にトランプの就任セレモニーを中継で見てしまったことを記事にしたので、一応バランスをとっておこうかなと思ったのだ。

5年前に連れ合いのジャーナリストと手を取り合って現れてその後スキャンダラスな別れ方をしたオランドが1人で現れたので、マクロンもすべて一人で仕切った。

フランスはひとりの「人」を選んだのでカップルを選んだのではない、というシンボルをきっちり踏襲している。(ビル・クリントンが当選した時は一人で二人分だからお得、みたいな言説があったことを思い出す。リーダーの夫人が家庭内野党と称されていた国もあったようだけれど…)

すべてにそつがない。

就任の演説も、オランドがサルコジに触れなかったのと違って、歴代の大統領の功績にちゃんと触れて、模範的によくできていた。
まあこれは当然予想されていた範囲だ。
失敗は許されない。

すばらしかったのは、そのすぐ前のローラン・ファビウスによるスピーチだった。
社会党ミッテランの秘蔵っ子で37歳で首相になったファビウスは社会党オランドの秘蔵っ子で39歳で大統領となったマクロンを前に感慨深いものがあっただろう。

大統領に与えられるレジオンドヌールのグランドマスターのメダルにはHP(honneur et patrie)つまり名誉と祖国、と軍隊らしい標語が入っているが、ファビウスはきっちりと共和国の標語、

自由、平等、同胞愛 を出して、

自由には大胆さが、
平等には厳律が、
同胞愛(これは人類皆きょうだいの意味)には意志、意欲が必要、

という言葉を引いた。

すなわち、

自由を得るには、恐れていてはならない、思い切った大胆さが必要だ、

平等を実現するには、事なかれ主義やなれ合いや建前だけではいけない、客観的にきっちりと厳しくチェックしなくてはならない、  

すべての人ときょうだいのように共存するには、それを望み、志すことが必要だ。

ということだ。そして、

それを通して「持続する平和」を実現しなくてはならない。

ということをちゃんと言葉にしていた。

このファビウスの言葉とマクロンのスピーチの組み合わせは、フランス語と、フランスの共和国主義と社会民主主義の「建前」が揺るがないことを見せてなかなか感動的だった。

壇上でペーパーを参照できたマクロンと違って、70歳のファビウス、このスピーチを全部そらで言えたのだから、それも大したものだと思った。

さすが百戦錬磨。

百戦錬磨と言えば、マクロンの外交顧問になったフィリップ・エチエンヌも頼もしい。

ファビウスもそうだが、マクロンが2度一次試験で落とされたパリ高等師範を出ている。しかも数学のアグレガシオン保持者で、経済学の学位、セルビア=クロアチア語の学位も持ち、
ENA(行政学院)では、オランドやドヴィルパンやセゴレーヌ・ロワイヤル女史らを輩出した有名な「ヴォルテール同窓生」の学年だ。ENAの卒業順位は公表されているが、総合部門ではオランドが117名中の8番、エチエンヌは経済学部門の42人中8番だった。(ちなみに総合部門でロワイヤルは64番、ヴィルパンは25番)。

ヨーロッパの様々な国の大使を務め、最後はドイツだった。選挙前のマクロンとメルケルの会合を手配したのも彼だ。(追記: 防衛相に任命されたシルヴィー・グラールが直接の手引きをしたそうだ。彼女もドイツ語、英語、イタリア語を自由に話す)

61歳の経験豊富なエリートのエチエンヌの他に、特別顧問として、なんと30歳の、戦略とマーケティングの天才イスマエル・メリアンという人もいる。
19歳でDSK(ドミニク・ストラス=カーン)の支援に入り、22歳でマクロンと出会った。この人は経験豊富とか百戦錬磨とか未来のマクロンという感じではなく、ただひたすら「ある部門の天才」という感じだ。

マクロンは人に恵まれている。いや、人に恵まれている人が成功するのだろう。

意志はオプティミズムで理性はペシミズムだ」と誰かがコメントしていた。

誰もが、39歳の大統領の中に「希望」を見ようとしている。
エリゼ宮のパーティ会場で演奏された曲にはモーツァルト、フレンチ・カンカン、ハンガリー舞曲など、独立記念日の祝祭のような陽気なものが流れていた。

想像するのも嫌だけれど、もしル・ペンが選ばれていたらどんなスピーチ、どんな就任式だったろうと思うと、やはり「あり得ない」としか言えない。ル・ペンはそもそも実際に選出されることを想定していないとしか思えない。トランプの就任を「悪夢」のように感じた多くのアメリカ人に同情の念を禁じ得ない。

ル・ペンの姪のマリオンも政治活動を停止したし、マリーヌも今のところ気配を消している。

週明けの組閣や総選挙の行方が注目される。


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by mariastella | 2017-05-14 21:49 | フランス



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