L'art de croire             竹下節子ブログ

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マクロンと陰謀論

フランスの新大統領について書くのはもうこの辺で終わりにしておこうと思っていたのだけれど、選出の夜の演出について「やはりそう来るか」、と予想した陰謀論が愉快だった。

夜空に赤く光るルーブルのピラミッドを背景に壇上に立った姿は印象的だった。
ルーブルのピラミッドと言えば、これはもうできた頃から、その三角形の数とか、場所とか、フリーメイスンだなんだと噂されていた。ルーブルも『ダヴィンチ・コード』などで怪しげなオカルトのイメージも作られ、マクロン自体が「神がかり」、「ミスティック」だと評され、本人も自分は超越的なものの存在を信じる、自分にはそこから発せられる使命があると感じる、などと発言している。

で、ピラミッドが赤く光り、頂点に「目」が光り、その前で両手を広げて掲げた(フリーメイスンの「コンパスと定規」の形)映像が、ネット上にすごい勢いで広がって、フリーメイスンだ、イルミナティだ、陰謀だ、ということになっている。

実際は、当初、マクロンはエッフェル党の前のシャン・ド・マルスを集会の場所にしようとしていたのをパリ市長のイダルゴに断られたのでルーブルは第二候補だった。

もっと笑えるのは、カトリック右派で、ル・ペンに投票を呼びかけていたクリスティーヌ・ブタンが、最初にマクロンが66.06%で当選というニュースを聞いたとき思わせぶりにtweetしたことだった。
もちろん、666が黙示録の獣(悪魔の数字)ということをにおわせて、マクロンはサタンの手先、アンチ・クリストだと言いたいわけだろう。(『キリスト教の謎第六章で少し説明しました)

残念?ながら、最終的には66.1%に落ち着いたので、ブタン女史の懸念が払しょくされてめでたい。
それにしても、「政治家」と名のつく人があまり考えなしにその場限りのtweetを残すのって、リスクよりもプロフィットの方が大きいからなのだろうけれど、デジタル環境は確実に政治も陰謀論も変えた。

人間が、自分たちの知覚できる「世界」とは別の「超越」的なものを感じるのは普遍的で、それをどのような表象を使って「シンボル」化していくかは、時代や場所の条件によって変わっていくものだ。
それが「教義」と「典礼」を備えると「宗教」になるし、イデオロギーが形成されると政治的党派にもなる。西洋近代はヒューマニズムの「大きな物語」を掲げることに成功したかに見えたけれど、「ポストモダン」はそれを「小さな物語」のひしめく多様性に解体した。
と言っても、人はいつも「大きな物語」の中に自分の居場所を求める。

マクロンの書いていく物語が始まる。

陰謀論について)

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by mariastella | 2017-05-09 18:08 | フランス



竹下節子が考えてることの断片です。サイトはhttp://www.setukotakeshita.com/
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