洞窟の前で祈ったセルジュは、天に昇った心地になった。
思わず自分の額に指で十字を切った。
それまで一度もしたことのない仕草だった。
マリアがベルナデットに促したように、セルジュも水を汲み、飲み、顔を洗った。
その後で立ちあがって歩いた。
10メートルほど進むと、左足全体に強烈な痛みが走り、セルジュは倒れた。
人々が駆けつけた。気分が悪くなったのだと思われたのだ。
セルジュは木にもたれて落ち着こうとした。
けれども激しい痛みがまた襲ってきて、脚がもぎ取られるかと思った。
セルジュは叫んだ。
この時にセルジュの体に何が起こったのかは分からないが、ともかくそれは、強烈な痛みとして感じられるものだったのだ。
体の歪みを治すと称する施術の後でも、痛みが取れる前に、一時、施術前よりも痛みがひどくなる、というような症状はよく耳にする。
「治り方」が超自然でも、「感じ方」は普通の生理的神経的なものになるのだろうか。
直前にセルジュの得た多幸感と、その後の激痛は対照的だった。
(続く)