金沢美大OBによる銀座での彫刻展の最終日に行って、終了後に作品が梱包されるのを見ていた。
私は絵画や写真の個展には関わるので取り外しのシーンも見るが、かなり存在感のある彫刻作品群が次々に台座から取り外されてしまわれて梱包されるのを見ていると、ショックだった。ついさっきまで、特別な空間を形成していたのに、ひとつずつ片付けられると火が消えていく感じになる。
そこで思い出したのが、
クリプトビオシス(cryptobiosis)という言葉。
有名なのはクマムシ。
乾燥状態になると生命活動を停止して無代謝状態になるが、何年経っても、水分が補給されると復活して動き出す。
で、クリプトビオシスは「潜伏生命」。
梱包された作品群も、占めるべき空間を断たれ、見る人の視線を遮断され、いわば無代謝状態。
芸術作品が鑑賞されなければ、「作品」は残るが「芸術」は消える。
モノとしての芸術作品は、まさに潜伏生命だ。
あの梱包された作品(モノ)はまた開かれて誰かの視線に触れれば、復活し、愛でられれば芸術の命を発散し始めるのだろう。