リビア、アフガニスタン、BHL、Christophe de Ponfilly
リビアの暫定政権CNTが、4月3付けでカタールの内閣府あてに、政権をとればフランスに石油利権の35%を譲渡するという手紙を出していることについて、「ほーら、やっぱり石油利権ほしさの侵略だった」とか「ベンガジの部族がトリポリの部族を倒すための陰謀だった」などという声がある。
もっとも、アフガニスタンのような貧しい国と違って、リビア人は自分たちの豊かさを知っていて、軍事支援に対して「論功行賞」を約束するのは彼らのカルチャーとして当然だという専門家の見解も、この手紙をスクープした「リベラシオン紙」が同時に紹介している。 http://www.liberation.fr/monde/01012357324-petrole-l-accord-secret-entre-le-cnt-et-la-france もちろん与党はそんな手紙のことは知らなかったと言っているから、一応は後ろめたいのだろう。(カタールにはフランスの常設軍事基地がある。) 確かに歴史的にみると、いつもいわゆる欧米帝国主義陣営が、虎視眈々と資源を狙ってアジアやアフリカに一方的に介入したり侵略したりするというわけではない。 途上国が内乱中に「欧米」に「支援」を求めることも少なくない。 その時に「欧米」がとる態度には「論功行賞」の計算があるにしてもだ。 ダライラマが中国の侵略に対して「国際社会」に最初に訴えた時、「欧米」は耳を貸さなかった。中国に対する色気の方が勝っていたからだ。 アフガニスタンのマスードもタリバンに抵抗するために国連に訴えたしフランスにも訴えたのに、支援を得る前に暗殺されてしまった。 マスードは、ソ連赤軍の侵略に対して果敢に戦った勇者で、その後はタリバンと戦っていたが、戦闘における人道主義で稀有な人柄だったと語り伝えられている。キューバのカストロを思わせる。 マスードが殺されて二日後にアメリカが同時多発テロにみまわれて、アフガニスタンには多国籍軍が侵入した。 シラクはBHL(ベルナール=アンリ・レヴィ)をアフガニスタンに送って、マスードの碑を建てさせて、BHLは賛辞の後に(20年来の友、BHL)と銘を入れた。 それは真っ赤な嘘で、彼がマスードと一度だけ出会ったのは1998年だった。 1980年代のソ連赤軍との闘いの頃からマスードに入れ上げて盟友となったのはフランス人ジャーナリストのクリストフ・ド・ポンフィリーである。BHLも、1998年にマスードに会うために彼に仲介してもらった。 ポンフィリーはマスードの死から立ち直れなかった。その後アフガニスタンのソ連兵士を主人公にした映画などを現地で製作したりしたが、結局2006年に自殺した。 今年の初めにリビア介入についてサルコジをたきつけたのはBHLである。できたばかりのCNTをわざわざエリゼ宮にまねいて「リビアの代表」として世界で初めてサルコジに認証させた。そうなるともう後には引けないから、カダフィが死ぬまでCNTを「支援」し続けるしかない。 しかし、CNTの方には、「マスード」はいない。「カストロ」もいないし、40年前のカダフィすらいない。 BHLもサルコジも自己顕示欲の突出した人たちだから、自分たちさえCNTから「英雄」視されれば、その後で、CNTが「新しいリビアはイスラム法を基盤にしてやっていく」と宣言しても平気なのだろう。 イラクやエジプトでは、サダム・フセインやムバラクの時代には保護されていたカルデア派やコプトのキリスト教徒たちの大量虐殺が始まっている。今の世界で宗教の帰属によって最も大量に殺されているのはキリスト教徒である。 自由で安定した社会の建設にはマイノリティの尊重が絶対に必要なのだということは明らかなのに。 同じように、真の経済成長だの財政赤字の解消だのには、弱者の保護が必要だ。福祉を切り捨てて景気を回復することはできないのと同じだ。 貧しい母子の健康を守ったり若者に教育や職業訓練の投資をしたりすることは、未来の納税者や生産者や消費者を育てることであって、決して、剰余金を恵むことなどではない。 苦しい状況にある時こそ、最も苦しい人の手当てをしなくてはならないのだ。 世界規模でもそれは同じで、「民族浄化」の殺戮も、ソマリアの飢饉も、独裁者の暴虐も、エコロジーの問題と同様に、全世界を、蝕む。
by mariastella
| 2011-10-28 01:53
| 雑感
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