うちのネコ(今年12歳の年男のスピノザ君)は私の書斎にあるソファの上の羊の毛皮の上に座ってそれをざりざりなめていることが多い。
昨日、風呂に入ってからテレビでセザール賞授賞式の続きを見ようと思って、湯冷めすると困るからパジャマの上から毛皮のコートをはおった。
先日えらく寒かったので久しぶりに出して着ていたもので、もう30年以上前に買ったものだ。
お出かけ用のキツネと違って、ジーンズの上からはおるためのざっくりシンプルなオオカミの毛皮だ。
今はパッチワーク風の繊細なものが多いが昔のものだからある意味ワイルドである。
最近これを着て出かけたら、メトロの中でエコロジー原理主義者に襲われるんじゃないか、と若い連れに心配された。
でも、ちょっと見にはフェイクファーと区別がつかないじゃないかとも思ったので、あまり気にしなかった。。
で、毛皮にくるまって長椅子に座ってテレビを見ていたら、ネコがやってきた。
この態勢だといつもすぐに腹の上に乗ってくる。
ネコがオオカミを舐めたらおもしろいかもしれないと思って呼んでみたのだが、長椅子には上がってきたが、絶対に毛皮の上に乗ろうとはしない。
いつもは私の頭を差し出しても舌でせっせと「毛づくろい」してくれるネコなのに、触れようとはしない。
無理矢理に口のあたりに毛皮の袖を持っていくと、逃げられた。
その様子を見て、おお、これは本当にオオカミの毛皮なんだなあ、と思った。
ネコってオオカミが嫌いなんだなあ、ふわふわであたたかければなんでもいいわけじゃないんだ。
キツネとかミンクとかウサギならどうなるのだろう。
オポッサムの毛皮ならフクロネズミだから大喜びかな、いやあれはネズミじゃなくて有袋類で別物かもしれない。
そう思いながら見ていたセザール賞のセレモニーは、いつもながら政治的公正とは無縁のいかにもフランス的なエスプリに満ちていて、フランスじゃアーティストはみな自由人の位置づけなので、とんでもないフレーズが飛び出してくる。
放送禁止用語のリストを読み上げる者とか、ロシア風のラ・マルセイエーズのコーラス(税金逃れでフランスを離れようとしてプーチンからパスポートをもらったドゥパルデューを揶揄したもの)、名指しで業界人のモラルハラスメントを告発する者とか、司会者までが「僕のおじさんはいつも、俳優は皆ユダヤ人かフリーメイスンだと言っていたものだ」などというきわどいことを言っている。
カウボーイがcowなのに馬に乗っていると言ったら本物の馬が舞台に出てきて、ルーマニアから来たcowです、とかジョークをとばした。そういえば牛飼いのカウボーイだが、そのイメージには牛など出てこないで馬だよなあ。
一時はアカデミー賞を意識してショー的要素を増やした時期もあったセザール賞セレモニーだが今やすっかり開き直って、昔のように、エリート学生たちの内輪のお祭りみたいになっている。
でも、主演男優賞と女優賞が79歳と86歳の男女というのは、ある意味すごくフランス的だ。
アメリカとフランスのメンタリティの違いはショービジネスの世界で一番はっきりすると、あらためて思った。