さあ、後6匹。
Rubis sur l'OngleとSerpolet
リュビー・シュル・オングルくん、つまり「爪の上のルビー」くんは大のミルク好きだったそうだ。
フランスは酪農国だから牛乳はふんだんにある。そして「猫はミルク好き」と決まっている。
昔の日本人が残り飯に味噌汁をぶっかけたものを猫飯としたように、フランス人は硬くなったフランスパンの残りをミルクに浸して猫パンにしていた。
これを猫と犬の両方に与えていたフランスの農家の人を見たことがあるが、猫は喜んでパクパク食べ、犬は悲しそうな顔をして飼い主を見上げたのを覚えている。
今は人間と同じで成猫にはミルクは消化できないのでやってはいけないなどと言われているが。
「爪の上のルビー」というのは別に爪が紅いわけではない。
Rubis sur l'Ongleとは口語の慣用句で「すっかり、きっちり」と言った意味だ。
リシュリューと同時代の17世紀が起源の言い回しで、ルビーというのは、あの紅い宝石ではなくて、赤ワインの最後の一滴のことだ。
最後の一滴は、爪の上にたらされて、舐められたと言う。
金をすぐにきっちり払うという意味でも使われるようになった。
この表現は今でも通用しているのだがその由来を知らずに、ルビーの指輪をはめているような人は金持ちで金払いがいいという意味じゃないのか、と思っている人もいる。
「爪のルビー」くんはミルクの入った皿をいつもさぞぴかぴかに舐め上げていたのだろう。
少なくなってきたらほんとうに前足ですくうようにして最後の一滴を爪にひっかけようとしていたかもしれない。
なかなかフランス的でかわいい響きの名だ。
セルポレくんの「Serpolet」は香草タイムの一種で日光を好む性質がある。
セルポレくんは猛烈に日向が好きだったそうだ。
時に連れて陽だまりが移動していくと、そこから離れないようにこまめに移動していく猫の姿はほほえましい。
たまに黒猫で強い日の光を浴びて寝てしまって温度が上がり過ぎ、自分でもあわてて熱くなった側を影の床にすりつけて冷ましている猫がいるが、それも愉快だ。
パリの緯度は高いので冬は部屋の奥まで陽がさす。
でも17世紀は寒冷期に向かった時代だから陽の差す日は少なかったかもしれない。
こたつのない国の猫たちは暖炉の前に集まって丸くなっていたのだろうか。