ウクライナ情勢を見て
ウクライナ情勢の移り変わりとロシアの軍事介入を日本からよりはずっと近い位置から見ていたら、はじめは絶望的になった。
デジャ・ヴュというか、独裁者が金と権力を私物化して弱者を踏み潰し、弱者がついに反抗して、臨時政府ができたと思ったらそこでは政治的に偏向した勢力が突出して、そこにまたいろいろな思惑を持った外国が介入して、という構図はもう、リビアでもイラクでもシリアでも中央アフリカでも、みな同じ。 イスラム圏だから、とかアフリカだから、とかアラブだから、とか、まったく関係がない。「人間だから」欲望の歯止めが利かなくなる構図もみな同じ。 それを言うなら一党独裁や軍事独裁の歴史は東南アジアでも東アジアでも、近い過去にあったし今もある。 文化や宗教などとは関係なく、「人間の愚かさ」だけが普遍的で、しかも「歴史に学ぶ」ということをしないのか、お前らは、とちゃぶ台をひっくり返したくなる気分になる。 ウクライナの場合は、臨時政府は真っ先にロシア語を第二公用語から外し、いくらソビエト時代に強制移住させられたとはいえ1400万人もいるロシア語母国人にとって屈辱的な仕打ち。ロシアがクリミア半島にすでにある基地を守ろうと乗り出すと、臨時政府も武力衝突を辞さない強硬姿勢だ(アパルトヘイトの後で白人への報復政策をとらなかったマンデラはやはりそれだけで価値があったなあと改めて思う)。 しかしこれらの事態を招いている根源は、NATOが冷戦終結時に解消されなかったことだ。アメリカは今でもNATOを通じて、ウクライナあたりにロシアに向けたミサイル基地を打ち立てておきたい冷戦時代の夢を引きずっている。 地政学的にロシアが許せないのはウクライナが親ヨーロッパになることではなくて、NATOに取り込まれることなのだ。アメリカだってたとえばカナダやメキシコが中国と同盟することなど絶対に許せないわけで、別にプーチンだけが強面の悪の皇帝というわけではない。 ひどいのはフランスで、一時はNATOからも距離をおく気概があったのに、今回はアメリカの代理人のような行動をとって、ドイツからさえ批判されている。これならまだ、同じような状況の2008年のグルジアでの南オセチア戦争の時にEU の議長だったサルコジが停戦に持ち込んだ時の方がましだったかもしれない。 ともかく「冷戦終結」以後でさえ、旧ソ連圏をめぐって疑心暗鬼の仮想敵が対立する状態は、実は変わっていないわけだから、中東やアフリカのもっと複雑な紛争地域に「国際社会」が単発的に軍事介入して騒いだところで「民主化」は愚か「紛争の鎮静」すら難しいのは不思議ではない。 でもフランスから眺めていると、アフリカやイスラム圏のことは「異文化」だからなあ、という距離感があるのだけれど、ウクライナとなると、日本人の目から見ると「欧米」と同じ白人、正教と言えどもキリスト教文化圏だし、なんだなんだ、どこもかしこも文脈は違えこそすれ大量に血を流しまくって・・・といっそう悲観的になる。 しかし、人間、ごく私的な生活でも、悪い部分だけが記憶に残るメカニズムがあるので、たとえば、「先月は1週間寝込んだ、今月も風邪を引いた、ああ、もう抵抗力も免疫力も落ちるばかり」と嘆きがちでも、先月の残り3週間は元気だったことや、全体として健康上のアクシデントを黙々と克服する抵抗力や免疫力は働いていることは無視することになる。 そう考えると、やはり視野を広げると、昔に比べて、外交によって多くの危機を乗り越え、武力衝突を回避している地域や分野もたくさんあることを忘れてはならないと思う。 「人間の愚かさ」は普遍的かもしれないけれど、それを回避しようと働く「賢明さ」もまた普遍的に働いているのだ。 そして、独裁者の執行する「悪」が時として「個人」のキャラに左右されるように、「悪」を是正する力も時としてたった一人の賢人の言葉の力に左右されることもあるのだ。 そんなことを考えさせて希望の明かりを灯してくれるのがフォルカー・シュレンドルフ久々の新作 『Diplomatie(外交)』である。 長くなるのでこれについてはまた次の記事で。
by mariastella
| 2014-03-03 02:37
| 雑感
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