9/19-22、フランシスコ教皇がキューバに行く。
南米出身でキューバと同じくスペイン語が母国語のフランシスコ教皇。
今も経済格差が広がり政治警察による任意逮捕が増えているという多くの問題を抱えるキューバだが、昨年12月にアメリカとの国交復活が発表され今年の7月には互いの大使館が復活した。
その陰にヴァティカンの存在が大きかったのは知られているところだ。
無神論共産主義を掲げたキューバを最初に訪れた教皇はJP2(ヨハネ=パウロ二世)だった。
ポーランド人のJP2は冷戦終結の立役者でもあったが、
冷戦を「共産主義」対「新自由主義」の二元論であると見ていたわけではない。
彼にとっては、無神論共産主義が一党権益独占の全体主義に向かったことと同じように、弱肉強食の新自由主義の向かう神なき拝金主義も戦うべき相手だった。
(それを無視して冷戦後、新自由主義がマルチ・ナショナル企業の利益追求を軸にグローバル化したことが今日のイスラム過激派による聖戦テロという大問題につながっていることは明らかだ。)
「神なき拝金主義」を批判する点では、その後の教皇たちのスタンスも変わっていない。
共産党独裁の中国や北朝鮮はいわゆるキリスト教文化圏ではないから話は別だが、スペイン領から出発したキューバにとっては、自由主義世界に経済封鎖されて陥った袋小路から出る道のひとつがヴァティカンによる調停だった。
ヴァティカンは経済封鎖を弾劾していた。
2014年10月にアメリカとキューバの代表団がヴァティカンで国交回復の最終調整をした。こういう場所を提供できるのがそもそもすばらしい。
今年の5月10日、普通なら訪問客を迎えない日曜の朝に教皇はキューバのラウル・カストロの訪問を受けた。
二人は母国語のスペイン語で1時間話したという。
その後の記者会見で、ラウル・カストロは、
自分は教皇のすべてのスピーチを読んでいる、もし教皇がこのように語り続けるならそのうち自分は祈りはじめて、カトリック教会に戻るだろう、と言った。
19日から22日に教皇があげるすべてのミサにも出席すると言っている。
私は『ローマ法王』(中公文庫)でキューバのことにすでに触れている(P166-169)。
今回のフランシスコ教皇の訪問が今の世界でどういう意味を持つのかを数回にわたってあらためて考えてみよう。 (続く)