1990/1/1のJP 2の警告、不都合なフランシスコ教皇
1990/1/1のJP 2の警告
これは昨日の続きです。 イエズス会のマルティニと反対のポジションだったと言われるJP 2(ヨハネ=パウロ二世)だが、1990/1/1 に、今回のフランシスコ教皇のLaudato Siの回勅と同じ趣旨、同じトーンの環境破壊警告を発している。 すなわち、新自由主義の経済モデルが環境破壊をもたらしているということだ。 JP 2は、故国ポーランドを含めたソ連と東欧の共産主義陣営を崩すことを優先して英米に協力したけれど、それは別に英米の経済モデルが共産主義モデルよりも優れているとしたからではない。 JP 2が戦ったのは「共産主義」そのものではなくそこから派生した「全体主義」だった。 ラテン・アメリカのイエズス会士の一部が「解放の神学」で共産主義者と共闘したように、原始キリスト教社会のモデルはもともと共産主義と親和性がある。 (階級闘争や「革命」とは親和性がないけれど。だからこそ、ローマの支配に対して蜂起するリーダーとなってくれなかったイエスにイスラエルの民は失望したわけだ) 一方、富が富を生み集中していく弱肉強食の自由競争とか金権主義、マネーの支配などは本来キリスト教と両立しない。 それなのに、新自由主義経済の社会では、キリスト教は 家庭のモラルなどだけ唱えていればいい(どうせ誰も聞いてないから)、 金のことは口を出すな(けれどもメガ・チャーチなどがマーケティング・スキルを駆使して巨大産業になるのはOK)、 というスタンスが定着しつつあった。 共産国の全体主義を倒した後、JP2は間髪を入れずに次の敵に向かったというわけである。 それから25年経ったが、貧富の格差は先進国内でも地球上でも広がるばかりだから、今の経済システムから最大の利権を得ている政界財界の一部の人がフランシスコ教皇の教勅を蒙昧だ、陰謀だと言いたてるのは当然だ。 25年前のJP2はテロの後遺症も含めてすでに健康上の問題をかかえていた。 古いヨーロッパの旧社会主義国出身のJP2がどんなに警告を発しても、グローバリズムの「勝ち組」の耳には痛いものではない。 その後も、多くの人の目にJP2路線を継承し復古的だと映ったB16(ベネディクト16世)の時代になったので、何の歯止めにもならなかったけれど、突然、B16が退位して、新大陸からイエズス会のフランシスコ教皇が誕生して、その歯に衣着せぬ正論はカトリック世界を超えて大人気を獲得した。 Laudato Si も、カトリック世界を超えて世界中に呼びかけている。 「(我々が)誰であろうと、我々は共通の家が(まっすぐ)立ち続けられるようにしなくてはならない」と、地球全体についてすべての人間に語っているのだ。 この教皇の存在を煙たく思っている人は少なくないはずである。 今回の「健康」の風説被害の試みもその一つかもしれない。 教皇庁は「脳腫瘍説」をただちに否定して無責任報道に不快を示した。 何しろ、アメリカの大学教授である脳神経外科のタカノリ・フクシマという日本人医師がイタリアにやってきて診断したとか教皇がヘリコプターで検査を受けに行ったとかやけに詳しい報道だったのだ。 この12月にさらに詳しい健康診断があるというが、それは本当で、79歳の現役の国家首長としては当然だろう。 キューバやアメリカでの強行スケジュールを精力的にこなした姿を見ると、もっともっと頑張ってほしいと思う。
by mariastella
| 2015-10-23 00:49
| 宗教
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