ヴァティカンの機密文書流出で高位聖職者らが逮捕されたことについてある読者からメールをもらったのでひとことだけ。
小児病院の改装にあてられるはずだった寄付金がある枢機卿のアパルトマン(700平米!)の改装に使われていたというすっぱ抜きがあった。
フランシスコ教皇は2年半前の就任以来ヴァティカンの改革に努力しているけれど、何世紀にもわたるイタリア貴族の権益メンタリティを変えるのはそう簡単なものではないだろう。
なにしろ、大西洋の向こう側、南半球のブエノスアイレスの大司教が突然ヴァティカンの主になったのだから。
沖縄の知事が突然日本の首相になっても、やはり何十年にもわたる霞が関官僚の権益メンタリティに抵抗するのは至難の業だろう。
まあ、沖縄の知事が日本の首相になる可能性はほぼゼロなので、ブエノスアイレス大司教がローマ法王になってしまうことのすごさが分かる。
彼はヴァティカンで枢機卿たちの投票によって選ばれたのだから驚きだ。
700平米のアバルトマンを改装させた枢機卿はフランシスコに投票したのだろうか。
したかもしれない。
中世と違って、今の時代にカトリック世界で枢機卿の地位にまで昇りつめるような人は、個人的な使命感(あるいは召命感)があって「聖職」を選択したのだろう。
その後で、権力を消費するようになったりいろいろな誘惑に負けたりあるいは特権に慣れてモラルが麻痺してしまったりすることがあっても、教皇選出選挙でシスティナ礼拝堂に閉じ込められて世俗と遮断されているうちは、「聖霊」にインスパイアされて、初心に帰り、フランシスコの言葉にすなおに共鳴した可能性はある。
ブエノスアイレスでも司教舘に住まずに小さなアパートで自炊していたことが知られているフランシスコ教皇は、選出された後も教皇宮殿に住まないで聖マルタの宿舎に入った。
多くの使用人にかしずかれて立派な居館に住む枢機卿たちは、教皇の有言実行ぶりに焦ったかもしれない。
ヴァティカン市国は世界で一番小さい主権国でも、その歴史は長く地政学的な意味も重要なところだ。
その元首を国籍や勤務地の制限がない選挙で決めてしまうという驚くべきシステムと、歴史のヴェールに閉ざされたその秘密主義の落差も半端ではない。
この国が国家として「改革」を遂げられるのか、本当の改革には何が必要なのか、注目し続けていきたい。