ポンシャトーのカルヴェリオに行ってきた
以前、ルイ=マリー・グリニョン・ド・モンフォールの聖遺骨について書いた記事で触れた「ポンシャトーのカルヴェリオ」を見たいという好奇心にかられて出かけた。
快晴に恵まれた14ヘクタールの「巡礼地」はほとんどすべてが野外で季節外れの今、他の巡礼者がいないので独り占め状態だった。 エルサレムに行く代わりに聖地を再現しようという思いつきで、カリフォルニアかどこかのキリスト教テーマパークですか、という感じなのに、さすがルイ=マリー・グリニョン・ド・モンフォールという近代の大人気聖人のひとりが発案したものだけあって、記念の聖堂にも、ここを訪れる人には罪の完全免償が与えられるというピウス9世の銘板があった。 現在見られる実物大の十字架の道の14景の像を造ったのはルルドの十字架の道と同じ人だそうだ。真っ白なので石膏みたいに見えるけれど鋳物を白く塗ったものだ。 ルルドは実際の山の中なので1景ずつしか見えてこないけれど、ここは見晴らしがよすぎて、しかもリアルな描写は要するに残酷シーンの連続だから、もし、キリスト教とは何かを知らない人が迷い込んだら(フリーパスで誰でも入れる)さぞやぎょっとするだろう。フランスがISに占拠されたらすぐに壊されそうだから今のうちに見とかなくては、などとジョークをとばしたくなる。 十字架を背負わされるイエス ブルターニュに行くためにモンパルナスから特急に乗ったのだが、日本の新幹線とは違って、何のゲートもなく外から来た人がそのまま乗り込めてしまう。テロの後だから少しは検問があると思っていたがゼロだった。極端に言えば、切符も持たず、武器や爆発物を持った人が乗り込んでも全く分からない。 ネットで買ってプリントアウトした切符には姓名が書いてあるけれど、車内コントロールさえなかった。帰りも同じだ。いいのか、これで。 レンヌに滞在していたのだけれどパリと全く空気が違う。ブルターニュの人は、外に出ていきたがらないので、結構な学位を持っていてもみな慎ましい職についているし、パリなら外国人がマジョリティである家政婦、管理人、各種の単純労働者など、ほとんど「地元の人」であることにも驚かされる。 日本にいたらテロのことなどあまり話題にならないから平和でいいなあ、日本に行くのは精神衛生にいいなあ、と考えたことがあるけれど、ブルターニュでも十分別世界だなあと思った。 カルヴェリオでは各種の「洞窟」はもちろん、エルサレム神殿のファサードを再現した舞台や、城門スペースや、キッチュなのか本気なのかよく分からないいろいろなところに寄った後で、ミュージアムに行く。 エルサレムの舞台装置。 巡礼に行く代わりの聖地コピーというのはどの宗教にもあるけれど、ここは大がかりで、しかも無料だし、ユニークだ。 ミュージアムと言っても、少し広い売店という雰囲気だ。前歯が1本しかないモンフォリアンの修道士でマラウイに36年過ごしたという年配の神父が一つ一つ解説してくれる。ワニやヒョウのはく製、象の歯や足、蝶々や毒グモの標本、アフリカの民芸品から日本のコケシまで、要するに宣教師が世界各国で集めてきた記念品の展示ということだ。 でも陽気で明るい人で、「象には歯が4本しかなくてね、それが全部抜けると食べられなくなるので象の墓場に行って餓死するんだよ」などと得意そうに1本しかない歯で話してくれるので妙な気がする。 せっかくだからここの記念の小物やグリニョン・ド・モンフォールのメダルを購入したら、満面の笑みで、大きなよくとおる声でしっかりと「祝福」してくれた。 元気で長生きしてくださいね、とすなおに思えた。残った歯をお大事に。
by mariastella
| 2015-11-25 03:56
| 宗教
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