手術台の上でミシンとコウモリ傘がふいに出会ったように美しい…
というのはシュールリアリスムにも大きな影響を与えたロートレアモンの有名な言葉で、一つ一つの単語が普通でも、くみあわせが普通でないと詩の言葉になり得る例としても知られている。
私はフランス・ジョークが好きでその紹介を雑誌に連載していたこともあるくらいだ。
その中に時々「謎々」があり、たいていは駄洒落の類なのだけれど、たまにその不条理さがほとんど詩的かも、と思うものがある。
フランス語がオリジナルなのかどこにでもよくあるジョークなのかは分からない。
そのひとつは、
Q. 象はどうやって木から降りるでしょう?
というもので、すでに質問からしてナンセンスで禅問答みたいだ。
で、
答えが、
A. まず葉っぱの上に乗って、秋が来るのを待つ。
というもの。
短い謎々の中に、
象が木に登らないこと、
登れたとしたら葉っぱの上には大きすぎて乗れないこと、
葉っぱの上に乗れたとしたら重すぎてすぐに落ちること、
象が住むような環境で秋は来ないこと、
秋が来てもそれまで待てないこと、
葉っぱといっしょに落ちるのは、「降りる」こととはちがうこと、
など、大小、軽重、自然条件などの不条理が満載で、
それでいてイメージが鮮烈かつほのぼのしているという不思議な謎々だ、
と思うのは私だけだろうか…。