もう一月くらい前に、TV5でロマン・ポランスキーの『吸血鬼』を見た。
フランスでは『ヴァンパイアの舞踏会』として有名でホラー・コメディとしてのミュージカルもあるから、なんだかよく知っている気になっていたけれど、初見だということが分かった。
このTV5の映画放映というのもめったに見ないので、最初に昔の日本のTVの「洋画劇場」の淀川長治みたいな人が出てきて解説を始めたのにも驚いた。話しぶりまでそっくりだ。
1967年のポランスキーの最初のカラー映画であること、この撮影でシャロン・テート二恋をして結婚したこと、アメリカでは監督の気に染まぬ編集をされて不満だったこと、完全版が1968年5月革命を経て新しい時代が蠢動していたフランスで封切られて大成功をおさめたことなどが解説された。
フランスと相性のいい外国アーティストは少なくない。
あらためてシャロン・テートの殺人事件のことをネットで検索してしまった。
ポランスキー自体がなんとなく倒錯的な人だから、もっと関わっていたのかという印象が刷り込まれていたけれど、完全に人違いの被害者だったのでトラウマはすごかっただろう。
で、この映画のポランスキーは、さすがに若い。なかなか魅力的でもある。
古いと言えば古いが、独特の味わいがある。
ポランスキーが演じるのは吸血鬼研究者の助手で、城砦に閉じ込められたとき大砲の上に乗ってロザリオの祈り(アヴェ・マリア)を唱えだすところがおもしろい。
「舞踏会」の曲がチェンバロ曲でバロックなのに踊り方がバロックではないことにも興味を惹かれた。
1967年と言えばまだバロックバレーの振り付け譜の研究が始まったばかりだからこんなウィーン風なのかもしれない。
舞踏会から逃げる時に教授と助手がそれぞれ長い剣をとって十字架の形に組むと吸血鬼たちの結界になる。
舞踏会のあいさつでドラキュラ伯爵がルシファーの名を出しているので、要するにキリスト教的な世界での「神か悪魔」という対立の構図がある。
集まった仲間に「血の兄弟」と呼びかけていたのがおもしろい。
「血がつながったきょうだい、血縁」という表現だが、吸血鬼の口から出るとダイレクトだ。
そう思うと「血縁」という言葉もなんだか不気味な気がしないでもない。