オリバー・ストーン監督のドキュメンタリー映画『プーチンとの対話』を先日TVで観た。
少し前にプーチン大統領も鑑賞したそうだ。4時間近くの大作だが意外さ満載で飽きさせない。
オリバー・ストーン監督が2年かけてプーチン大統領と一対一でいろいろな質問をして答えを引き出す。
キューブリックの『博士の異常な愛情』を絶対見るべきだとプーチンに言っていっしょに見ているシーンもある。
60歳で始めたというアイスホッケーをするプーチンと話す場面もあり、プーチンがオリバー・ストーンに柔道の創始者(加納治五郎か?)の座像を見せている場面もある。
プーチンが柔道によって学んだのは「柔軟性が大切」だということだそうだ。
アル中状態だったエリツィンから大統領代行を任され、大統領選への立候補を勧められてその責任の重さに躊躇するところや、産業の民営化がより公正に、より構造的になされるように心を砕いたところや、キューバのカストロ首相が50回も暗殺未遂があったのに対して自分は5回でセキュリティのサービスを信頼しているからだと言うところや、ストイックだけれど適度にジョークを言うところなど、なんだか非現実的だけれど、驚きの好印象だ。
プーチンと言えば、強面の独裁者で冷酷なイメージが強いし、実際、政治の場では強権発動をできる人なのだろうけれど、なんというか、アメリカ人のオリバー・ストーンにいわばつきまとわれて、カメラからなめまわすようにボディ・ランゲージを写し取られているのに、イライラもせず、時々、無防備なほどに誠実なことを口にする。
ソ連が一夜にして崩壊した後の破産国家を再生させようとしてここまで来たことや、「欧米」を友として歩もうと努力したことの本音も垣間見える。
もちろん、一つ一つの政策については突っ込みどころはいくらでもあるだろうが、NATOのやり方や中東政策にしても、ウクライナ問題にしても、アメリカの覇権主義の方がどう見てもひどいのではないかとあらためて思う。
国内のムスリムに対する考え方も、批判の多い性的マイノリティへの対処の考え方にしても、「プーチンの言い分を直接聞く」というのはぐっと視野が広がる。
オリバー・ストーンは「不都合なテーマ」にも遠慮せずに切り込んでいるわけだけれど、ともかく、プーチンの率直さが際立っている。
全部がプーチンによって計算されつくした演出とはとても思えない。
アメリカとの勢力争いにしても、「うちは何しろお金がないのだから比較にならないし…」みたいなすごくまっとうなことを言っている。
眼窩の奥におさまった鋭く小さな目が、無防備な親愛を見せる一瞬などを見ていると、ほとんどかわいいと思えるくらいだ。
オリバー・ストーンの人間性とプーチンの人間性の出あい、と言うのもあるだろうけれど、意外過ぎる。
いろんな意味で貴重な映像を見せてもらった気分だ。