スウェーデンのストックホルムのカトリック大司教が6月末にローマ教皇から「枢機卿」に任命された。次の教皇を選ぶ選挙権もある枢機卿はカトリック行政の上では教皇の下の最高位だ。(霊的にはすべての司祭の上に上下関係はない)
ヨーロッパの国の首都の大司教なら枢機卿になるのも順当に思えるかもしれないが、実は、スウェーデンでは初めてのことだ。
なぜなら、スウェーデンはいわゆるプロテスタント国で、カトリックは人口の2%というマイナーな国だからである。
(スウェーデンの宗教などについてはここで書いている)
しかも、67歳のアンダース大司教、
カトリックには20歳で改宗した人で、
元カルメル会の修道士で、
プロテスタント改革以来、はじめてのスウェーデン人司教(それまではドイツ人やポーランド人が任命されていた)だという。
なるほど。
日本のカトリックもスウェーデンよりさらにマイノリティで、昔は外国人司教ばかりだったけれど、戦中の国策ですべての外国籍司教が辞任して日本人司教に代わっていった経緯がある。20世紀の世界大戦で中立国だったスウェーデンではそういうナショナリズムはなかったのだろう。
アンダース大司教と共に枢機卿に任命された他の4人のうちの2 人もマリとラオスという「非カトリック国」の人であることも、カトリックは「カトリック教会」にとっての辺境や周辺地域でこそ仕えなくてはならないという今の教皇の方針を反映しているのだろう。
で、もっと驚いたのは、ルター派の福音ルーテル教会をスウェーデン国教会としているバリバリのプロテスタント国だと思っていたスウェーデンが、実は、今は世界でも有数の非宗教、非信心国であるという話だ。多くの国民は「キリスト教」が何であるかも漠然としか分かっていない完全な「ポスト・キリスト教」社会なのだそうだ。(宗教帰属意識が低いと言われる日本人にとって冠婚葬祭から初詣や各種の祭りなどけっこう「信心」行為のハードルが低いのと比べ物にならないようだ)
で、もっと驚いたのはそんなスウェーデンで、カトリックが今人気になりつつあるという話だ。プロテスタント離れしてしまったので、過去にあったアンチ・カトリックの偏見はほぼ消えてしまった。それどころか、今は注目されている。
それは「スウェーデン国教会」に対してカトリックが超国家的でユニヴァーサルだということで、スウェーデン内のいかなる共同体よりも、カトリック共同体は文化的にも民族的にも多様性があるからだという。
国教会に集まる「信者」は、人種的にも世代的にも社会的にも似たような人たちだが、カトリック教会に集まる「信者」は100以上の国籍が共存していて、多くの移民がいる。
そういえば、スウェーデンと言えば、2013年にシリアからの難民を制限なくすべて受け入れると宣言していた。今や国民の5人の1人は外国生まれだともいう。
ラテン系や旧植民地国も多く人種の混ざり具合が大きいフランスなどと違って、金髪碧眼率の高い北欧諸国では中東やアフリカの難民、移民は目立ちすぎて同化できないんじゃないかとか、カトリック教会が勢力拡大に移民を利用しているんじゃないか(ベルリンの例など)などというこれまでにも書いてきた私のゲスの勘繰りは、ほんとうに、ただゲスなだけなんだろうか…(続く)