ウィーンの話 その2 スピノザ賛歌を作ってきた
ウィーンで考えたことをいろいろ書く前に、東京やパリと違うなあと思ったことをもう少し。
私は文房具フェチでミュージアム・ショップのボールペンの類はどこでも買い込んでしまう。 で、ウィーンで最初に買ったボールペン、試そうとしてペン先を出そうとしたら出なかった。 蓋つきでない場合は、たいていは、ペン先の反対側にあるでっぱりを押すノック式か、本体を回すとペンが出てくる。 たまに、ポケットなどに引っ掛けるための取っ手みたいな部分を押し下げると出てくるというのもある。 それを全部試したのに出てこなかった。 ペン先を出すには、ペン先の出てくる円錐部分だけを回す仕組みになっていた。 珍しいなあと思ったが、その後、私の行ったすべてのミュージアム・ショップや土産物店にあったボールペンが、先を回す方式だった。プラハなどでは気づかなかったからやはりこれはウィーン限定なんだろうか。 ピアノ型のオルゴールも買ったけれど、私の持っている他のピアノ型のオルゴールは、グランドピアノの三角型の蓋を開けると音が鳴るものだけれど、ウィーンのものは、鍵盤の蓋を開けると音が鳴るものだった。これでは鍵盤の蓋を開けて飾っておけない。 なんだか、ペン先といい、鍵盤の蓋といい、小手先というか、よく言えば繊細だが、なんだかウィーンのどこかにはりついているデカダンスな感じに呼応しているような気分にだんだんなってきた。 もう一つおかしいのは、今夏のバーゲンセールの時期なのだろうが、どこでも英語でsaleと書いてあるのは日本でもそうだから分かるとして、多くの店に「SALE %」とか、時には、大きく、ただ「%」とだけ書いてあるのだ。 もちろん中には「-50%」とか「bis -50%」と書いてあるものもある。それは50%引きなんだろうなとか、最高50%までの値引きなんだろうなと分かるけれど、ただ「%」って…。 初めは数字が抜けたエラーかと思っていたけれど、「SALE %」とか「%」だけの店がたくさんあったので、要するに「%」というのが「バーゲンセール」とイコールなんだと分かる。 日本のお店にも英語やフランス語でへんなものは時々あるけれど(そういえば、フランス語ではsaleというのは汚いという形容詞なので、英語圏や日本でsale, sale,とあちこちに貼り紙がしてあると慣れないフランス人は妙な気分になる)、それにしても、ただの「%」だけで、いいのか、オーストリア人、と思ってしまった。 と言っても、前者は、右と左のサイコロを振って、弱起付きのヴァイオリンパートとチェロのバートを交互に6種類の中から組み合わせて、最終小節はちゃんとまとまるようにプログラムされているもので、それを楽譜にしたものをもらうこともできる。 後者は、自分の名前をアルファベット打ち込むと手書き風の楽譜が現れて、音を聴くことができて、さらにそれをハーモニゼーションしたもの、楽器演奏したものを試聴でき、プリントアウトされた楽譜をもらうことができる。 アルファベットに対応して何にでも使いまわされるようなモティーフがプログラムされているのかもしれないが、私はもちろん、先月帰天したスピヌー(スピノザ)の「賛歌」を記念に作った。 私たちのトリオの共通の友人にルイ・ロートレックがいる。 トゥールーズ=ロートレックの本家にあたる家系のギタリストだ。 彼のために私たちで彼の名を使った曲を作って演奏したことがある。 ロートレックというのはフランス語でLAUTRECと書く。 これは LA - UT - RE -C と分解できる。 LAはラ、UTはドの古い読み方(フランスではつい最近までよく使われていた)、REはレ、Cはドの音名、 で、「ラ、ド、レ、ド」をモティーフにして組み合わせた小曲を彼に捧げて弾いたのだ。 そんなことを思い出してしまった。 このウィーン風スピヌー賛歌、スピヌーの動きが目に浮かぶようで気に入っている。
by mariastella
| 2017-08-06 06:20
| 雑感
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