最近、フランスの大女優たちが相次いで亡くなった。
ジャンヌ・モローにミレイユ・ダルク。
ミレイユ・ダルクはもともと心臓に疾患があり、何度も手術したのは聞いていたが、ジャンヌ・モローより10歳も若いし、TVや雑誌で今もよく見かけるので79歳の訃報に驚いた。
この二人の映画をいろいろ日本の映画館で見ていた頃を思い出す。
ミレイユ・ダルクはボーイッシュで素敵だった。
けれども、そのころの「新作」のジャンヌ・モローは私にとってはすでにかなり年配の女性だった。彼女は私の母とほとんど同じ世代だ。
そのことに驚いたのをはっきり覚えている。
それはルイ・マルの『ビバ ! マリア』を観に行った時のことだ。ブリジット・バルドーとの共演で、ジャンヌ・モローはかなり老けて見えた。パンフレットを読むと、彼女はすでに38歳で、バルドーでさえ32歳だった。私は14か15だった。30代の女性二人があのようなはじけた役柄をしていることに驚いた。私はそのパンフレットを地下鉄の中で読んでいる自分を思い出す。中学3年でひとりで映画館に通うようになって見た初期のころの映画だからだ。
ちょうど兄が高3で、いわゆる受験期だったから、母が日曜ごとに私について映画を見に行くのを控え始めたのだ。ビデオもない時代だったから、二本立てや三本立ての映画もよく見に行った。いわゆる「洋画」ばかりだった。(日本映画に目覚めたのは大学で中沢新一くんと出会ってからかもしれない。)
で、38歳のジャンヌ・モローは、今風に言うとかなりイタく見えた。
私はまだ中学生だったのに、もう「年相応の役」という日本風先入観に毒されていたらしい。
ミレイユ・ダルクの方は、テレビの番組でアラン・ドロンに直接「あなたが私をおいて出ていったことが私にとってどんなにつらかったかあなたは知らなかったの?」と質問したシーンが印象に残っている。アラン・ドロンは「知っていた。知っていただけではなくて今もそのことを自分の中に抱えている」と答えた。
ダルクもドロンも二人とも大スターで、それが放映された頃はもうかなり年配だったのに、なぜかとてもシンプルで誠実そうで、ほとんど初々しく見えた。
ミレイユ・ダルクはテレビのドキュメンタリー・ジャーナリストとして、女囚や売も春婦など、「底辺の女性」を取材して女性の権利擁護に活躍、それが彼女に似合っていた。自らもつらい少女時代を体験してきた人らしい。
ジャンヌ・モローは、一番正統派の女優らしい女優だった。奔放に見えたミレイユ・ダルクよりもずっと自由奔放な生き方をした人だ。確か、息子さんに会ったことがある。
もう一人の「ビバ ! マリア」のブリジット・バルドーはと言えば、80台で健在だが、こちらは女性の権利擁護よりも動物愛護原理主義のアイコンになって久しい。
いろんな生き方、いろんな老い方がある。