L'art de croire             竹下節子ブログ

ノストラダムスとヒトラー暗殺

大晦日にノストラダムスについてのドキュメンタリー番組が2本、TVで放映された。


最初の『Nostradamus, les prophéties révélées 』というのは、2015年のアメリカ制作のもので、フランスでももう何度か放送されていたようだ。2015年にもなってまだこんなものが制作されていたのか、という感じのトンでも解釈の羅列だ。


2本目の『LesProphéties de Nostradamus』はかなりまともで興味深かった。こちらは今はリタイアしたジャクリーヌ・アルマンさんが出てくるのでもっと前の制作だろうが、やはりアメリカのものらしい。アンテクリストがサダム・フセインだという説やオバマという説があるところを見ると2008年以降の編集なのか。

以下、2本目の方を視聴した感想。


ノストラダムスについては、個人的にいろいろ思い出がある。

1996年にサン・レミ・ド・プロヴァンスやサロン・ド・プロヴァンスで取材した後、97年にTBSヴィジョンの誘いで鏡リュウジさんと一緒にもう一度ロケをして番組を作り、98年に朝日新聞社から、99年に文藝春秋社から単行本を出し、私の本にインスパイアされたという岩波書店からのノストラダムスとルネサンスの本に参加するなど、思いがけない展開があったが、もう20年も前のことだ。


日本ではあまりにも「1999年の7の月」の終末論で知られていたからその後は急速に関心が薄れたようだった。それでも2001年のツインタワービルなどの同時多発テロの時は、それもノストラダムスの予言にあるとかないとかで意見を聞かれたことがある。

そういう懐かしいプロヴァンスの風景や博物館の知り合いの姿などを画面で見てノスタルジーに誘われたし、3人のアンテクリストのことを強調して一人がナポレオン、二人目がヒトラー、というのはいいとして、驚いたのはドイツとの関係だ。


ヒトラーの出現やホロコーストをノストラダムスが予言している、という類の解釈のことは知っていたが、出世作の『化粧品とジャム論』が1573年にドイツでも翻訳されていたことは覚えていなかった。

そして、ヒトラーのドイツがオカルト趣味全盛期だったことは知っていたし、ノストラダムスやその他の予言者を研究したり登用したりというのも知っていたが、その事情に通じていたイギリスが、それを利用したプロパガンダをやっていたのは知らなかった。

イギリスはオカルト科学をまったく信じていなかったが、ナチスが信じていたことを知っていたので、6人がヒトラーを暗殺する、という内容のノストラダムスの4行詩をフェイクで作って、それをプリントしたビラをドイツの上空からばらまいていたというのだ。


そんなことを思いつくのも、実行するのもなんだか信じられないが、


それでどういう効果があったのか、

かなり多かったというヒトラーの暗殺計画や暗殺未遂との関連はあるのか、

あるとしたらいつ、どれと、どういう風につながったのか、


そこのところがとても気になったが、番組では詳しいことは語られていない。



(この50分から51分20あたりに出てくる)


ノストラダムスはフランスのルネサンスの人間で、時の政権からも重用された。

著作はフランス語だ。

予言書と言われる4行詩などはわざと分かりにくく書いているし、それを動詞変化の少ない英語やドイツ語などに訳すると余計に分からなくなる。


なによりも、このノストラダムスを利用して対独のプロパガンダに使おうという発想は、まず、フランスではあり得ないタイプのものだ。


アングロサクソンがゲルマン人に対するものとしてならそれがあったのだ。

うーん、なんとなく納得するが、まだ言語化を試みていないので、ここに覚書として書いておく。

けっこうおもしろい切り口になるかも。


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by mariastella | 2018-01-04 00:05 | フランス
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竹下節子が考えてることの断片です。サイトはhttp://www.setukotakeshita.com/
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