先日、年末から続いたイランのデモ行進が話題になっている時、Arteでイランとフランス合作映画『Les pieds dans le tapis』を観た。les pieds dans le tapisというのは、se prendre les piedsdans le tapis (絨毯に足を取られる、つまづく、うっかり失敗する)という表現と、主人公のモルテザがペルシャ絨毯の製造販売の会社の跡取りだということをかけている。
イラン映画は深刻なものばかり見てきたが、これは珍しくコメディだ。
モルテザは特に中国に向けての販売を受け持っていて中国語も話す。経済封鎖のせいで経営は難しく、従業員がストをするのに、社長である父は毎年恒例の泥スパ保養のために韓国に行っている、はずだったが、フランスの地方都市で急死したと知らせが入る。
モルテザの妻との関係、一人娘の婚約式での両家総出の様子、テヘランの排
気ガス公害などのディティールもおもしろい。
モルテザは母親といっしょにフランスに渡る。地方都市だからテヘランより空気がよい。母親はフランス語ができて、ワインを作る市長の弟から言い寄られ、母が通訳してくれないのでモルテザは中国人女性の通訳を雇う。中国語とフランス語の通訳だ。モルテザはその中国の女性(国に4歳の息子を置いてきているフェミニスト)から言い寄られる。
フランスのお役所仕事で、遺体をイランに返すことが経済封鎖の貿易禁止に引っかかるかどうかを確認しなくてはならないなどと言われて困惑する母と息子。
また、父は、レストランで倒れた時に40がらみの金髪女性とウェディングドレスの写真を見ていたという証言がある。その女性は自閉症患者のセンターを経営していることが分かり、訪ねていく。父はそのセンターのためにずっと寄付を続けていたのだった。
実は、父はフランスで医学生だった時代に出会ったフランス女性との間に子供を二人作っていた。二人目の男の子が自閉症だと分かり、女性と協力して自閉症センターを開設する。
金髪女性は父の最初の娘だった。
でもその後でイランに帰った父は母に恋をして結婚し、フランスでの医学も捨て、母子も捨ててペルシャ絨毯商人となったのだ。しかしその後、時々フランスに来てはセンターで子供たちとも過ごしていたわけだ。父には夭折した自閉症の弟がいた。
モルテザは中国人通訳を介して、「ギャング」に、父の遺体を病院から盗み出す依頼をする。「ギャング」だというから「アラブ人」かと思っていたら、元ボリショイバレーのダンサーや医者や宇宙飛行士やエンジニアからなる亡命者グループなどだったという今のフランスの社会風刺もある。
今風と言えば、スマートフォンでのやりとりが効果的に使われているのがうまい。音楽もいい。
最後はコメディらしいドタバタも少しあるのだが、別に特に「共感」できるわけではなく、カルチュラル・スタディみたいなおもしろさの映画だったが、私にとって特別な縁のあるイランの来し方行く末のことを考えていたところだったので、興味を惹かれた。
こういうすごく国際的な設定なのに地方色全開の映画を作れるのはフランスだからこそだなあ、と思う。