(昨日の続きです)
入念に演出された写真で、実際の光景に立ち会っているような大きさ(174cm x 250.8cm)で、不思議な確固としたインパクトを与えるものがあった。
この写真は、1950年代のラルフ・エリソンの『見えない人間』の冒頭シーンを忠実に再現した一種のインスタレーションをカナダのジェフ・ウォールが撮ったものだ。アメリカの黒人は、目に見えない、存在しない、つまり人間としては無視されているという人種差別告発だった。1369個の電球の灯りとぬくもりの中でジャズを聴いている男の孤独や傷が、細部のリアリティから滲み出すようだ。
それこそ、イラストだって、画像編集だってなんでも可能な今の写真術ならどんなものでもできるだろうけれど、手作りディティールへのこだわりの質がクリエイトの質つながっている例だ。
過去にお蔵入りしたという、黒人が主演映画へのオマージュでもあるという。
ちょうど今、これまでは絶対に商業的には成功しないと思われていた黒人カルチャーの中で黒人ヒーローが活躍する『ブラックパンサー』がヒットしている。
隔世の感がある。