3/22は、マクロン政権になってはじめての公務員ゼネストで、交通が混乱、バロックバレーのレッスンも翌日に変更になったのに、めったにない別の二つの約束が朝と夜にあったので、無理をして出かけた。
全く違う場所にある個人のアパルトマンで、初めて行く場所だったので好奇心はあったのが救いだった。
まず、5番線東の終点ポルトディタリー。

春分を過ぎても肌寒い。
イタリー大通りに面したタワーマンションの24階。
有名な筆跡鑑定家の自宅兼事務所だ。
ある訴訟で日本人の漢字のサインを偽造した件で揉めている。日本人の目から見たら明らかに不自然な線。
一つひとつ、書き順も、楷書や草書も説明する。
とは言っても私は もちろん公的な鑑定の資格などないからただの非公式の助言だ。
実際は、習字を何年も習っていたことがあって、何か忘れたけれど段位みたいなものももらっていたし、何度も何かの賞をもらった。だからフランスのリセで頼まれて日本語を教えていた時も、筆ペンで必修漢字表を手作りしていた。今のようにいろんな書体などがネットで拾えるような時代ではなかったからだ。写経も時々する。
だから私の説明には信憑性があるのだからそれを強調してくれとも言われたけれど、今となっては、大昔に受けた賞だとか、証明するものなんてもちろんない。ただの自己申告だ。実際に筆を持てばなんでも書けるというだけのこと。
後で弁護士とカフェに入ったら、娘夫婦の危機など家庭の打ち明け話をされて驚いた。女性弁護士の夫君は医師で、娘の教育にも必死だったのに、幼なじみの獣医さんと結婚して専業主婦になった後で危機が訪れた。
夜は7区のセーブルバビロンヌのメトロ前にある古い建物。窓からボンマルシェ前のスクエアが見える。

35年続く音楽愛好家メセナのプライヴェートコンサートで、こういう高級マンションだのオテルパルティキュリエ(1戸建のお屋敷)だのでカクテル付きのサロンを開いている。「今年もみんなでウィーンに行きましょう、ハプスブルク家と友達だから彼らのところに泊まって…」などと言っている。
その夜のサロンのアパルトマンの所有者は道楽でやっていた画廊を閉めて、気に入ったコレクションをたくさん残して飾っている。
ピアノはスタインウェイだった。
トリオはサンクトペテルブルクやモスクワの音楽院出身の若いピアニスト、チェリスト、ヴァイオリニストで、めずらしいロシアの曲をいろいろ聞かせてくれたが、19世紀ものはあまり食指が動かないし、ヴァイオリンの音質が悪く、聞き辛かった。
でも、その後、おもしろい出会いもあった。(続く)