L'art de croire             竹下節子ブログ

マイノリティがマイノリティを差別する

私はケルト、ラテン、ゲルマンが混在する白人がマジョリティのフランスで長年暮らしているので、フランスのマイノリティのあり方については当然関心がある。


フランスはユニヴァーサリズムが国是の国だから、公的な人種別統計も禁止されているし、いわゆる何々系フランス人という言葉も建前としてはない。


けれども、アラブ・アフリカ系の旧植民地との確執の歴史はあるから、いわゆるアラブ人やアフリカ人へのある種の偏見は残る。(特に昨今のイスラム過激派のテロリズムのせいでひどくなった)


でも、いわゆるアジア人に対しては、旧植民地の仏領インドシナ出身の人も、東アジア人に対しても、目立った偏見は感じない。共同体を作るいわゆる華僑などは確かに目立つけれど、特に、私の交友範囲であるアーティスト系やインテリ系のカテゴリーはもともと国籍も含めて多様性が高いので「差別」を意識することはない。

ビジネス界でも今は完全にグローバルな感じだ。

でも、例えば、政界などは、やはり圧倒的に「キリスト教文化圏の白人」が多いので、そんなところに、東アジア人の顔が見えると気になる。

近年、目立つ存在だったのは、フラール・ペランとジャン=ヴァンサン・プラセという、フランスの名前だけれど日本人の目からは「韓国系」と考えてしまう二人だ。


1973年生まれのフラール・ペルラン女史は、オランド大統領の社会党政権での文化とコミュニケーション担当大臣だった。生後数日でソウルの街角に捨てられていたのを養護施設に引き取られ、生後六ヶ月でフランス人原子核物理学者の家庭の養女となりフランスで育った。その後はいかにもフランスらしく問題なく高学歴と高キャリアを積むことができた

よくメディアに登場したが、若く美しい人だ。

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もう一人はジャン=ヴァンサン・プラセで、彼は民主党と緑の党合併のリーダーで、ペルランの少し後に改革担当国務大臣としてこれもメディア露出度が高かった。

彼もソウル出身で、ペルランより5歳上の1968年生まれ。7歳の時にフランス人弁護士夫妻の養子となってノルマンディで育ち、1992年にフリーメイスンのグラントリアン(大東社)に入会し、急進左派の政治活動を始めた。1999年に緑の党に転向、以後、地方議会や欧州議会の緑の党リーダーとなり、上院議員にも当選した。

ペルラン女史がすらりと美しいのに、彼の方は、年のわりにでっぷりとして政治家としての迫力や風格がない。日本で人気の韓流スターなどの爽やかさとは程遠い。

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同じ東アジア人としては、こういうメディア露出の多い人たちは外見も見栄えがいいといいのにと思ってしまう。何しろ東アジア系フランス人政治家はこの2人しかいないのだから、「外見」が気になってしまうのは人情だ。

おまけに、このプラセが、最近、大変なことになった。

45日の深夜2時に、酔っ払って人種差別発言をして暴力を振るい逮捕されたというのだ。

パリ六区のラ・ピシーヌというバーに議員と一緒に入り、若い娘たちに近づき、10 代の女性に、議員と踊るなら金をやると言った。女性は自分が娼婦だと思われているのかとショックを受け、バーのガードマン(おそらく黒人だったのだろう)が止めに入ると、「ここはマグレブ(アルジェリア、チュニジア、モロッコなど北アフリカのアラブ国)じゃないぞ、朝の便でウガドゥグー(これはいわゆるブラックアフリカの旧フランス植民地ブルキナファソの首都)に送還してやる」などと、 アラブ人も黒人もいっしょにした人種差別ヘイト発言をしたという。駆けつけた警官までも罵倒して、逮捕され二日間拘留されたという。

自分もいわゆるマジョリティの白人ではないのに共和国政策でエリートコースを進んで国務大臣にまでなった人が、こともあろうにレイシズムをむき出しにしたのだ。

極右政治家ではない。

マニュエル・ヴァルス(この人もフランスに帰化したスペイン人だが首相になった)内閣の一翼を担っていた人だ。

あまりにも自然に「普通のフランス人」になって権力の一端まで握ってしまうと、低劣な差別主義の本音を抱えるということなのだろうか。

フランスで、アラブ系やアフリカ系のテロリストの名や顔がメディアで出るたびに、似たような名や外見を持つ「フランス人」はさぞや居心地が悪いだろうといつも思っていた。

昔は日本赤軍というのがあったが、たとえば今のフランスで日本人がテロをしてその顔や名前がメディアにさらされるとどんなに気分が悪いだろうと想像する。


東アジア人の外見を持つフランス名の政治家が差別発言をしたと聞くだけで不愉快だ。

マイノリティは、マイノリティの矜持を持って生きてくれないと困る、という気持ちと、根強い人種差別の前にはフランスの共和国主義ユニヴァーサリズムが実は機能していないのではないかという懸念とが、交錯する。





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by mariastella | 2018-04-12 00:05 | フランス
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