(これは前の記事の続きです)
Q 4 もう一つのアスペクトである必要経済というのは、どんなことでしょう?
A それは「他者性」に基づいています。「あなた」は「私」ではない。ある領域に関しては、あなたは私よりも多くを必要としているし、別の領域においては私はあなたよりも多くを必要としている。それぞれの修道者が労働に必要とするために支給されるツールは、とてもシンプルなものから洗練されたものまで幅があります。
陶芸の才能がある修道女のためには、最新式の陶器窯が導入されました。それで修道院の名で販売する陶器を製作するのです。一方で、ソレムのベネディクト会修道院で志願者の教育係を受け持つ修道女はテキストを製作するのに20年前のパソコンを今でも使っています。ノーベル経済学賞を受賞したアマルティア・センの言葉を使えば、それぞれの人にそれぞれのできることを実現するために必要なものを与えるということです。
(ここで「それぞれのできること」と訳したのは、アマルティア・センの「潜在能力」(ケイパビリティ)をフランス語化したcapabilité が括弧付きで書かれていたからだ。
いわゆるキャパシティ、capacitéとはニュアンスが違う。キャパシティが「器の容量」のイメージだとすると、社会的な環境によって与えられた器そのものを、その人に本当に適したものに随時変えることまでを含むニュアンスがある。
日本語のwikiで検索すると、
>>>潜在能力とは 「人が善い生活や善い人生を生きるために、どのような状態にありたいのか、そしてどのような行動をとりたいのかを結びつけることから生じる機能の集合」としている。具体的には、「よい栄養状態にあること」「健康な状態を保つこと」から「幸せであること」「自分を誇りに思うこと」「教育を受けている」「早死しない」「社会生活に参加できること」など幅広い概念である。<<<
とある。修道院で各人に与えられるものとは、才能や仕事の能力だけではなく、その時その時における「well being」に適うような配慮がなされるということだろう。)