L'art de croire             竹下節子ブログ

エルナンド・デ・ソトのベーシック私有権保障

(沖縄シリーズはこの後に続きます)


ペルーの経済学者エルナンド・デ・ソトについてここに覚書を書いておく。

日本語で彼について何が書かれているかまったく知らないので、ネットで検索してみた。


こういうもの

こういうもの

こういうものがでてきた。

(ここで説明する暇がないので興味がある方はどれかに目を通してください)


うーん、全体に、これは私有財産権のはっきりしない途上国の貧困の問題としてだけ理解されているようだ。しかも、結局はうまく開発援助に結びつかなかったかのようにも思えるのだけれど。

とはいえ、実際は、途上国どころか、現在、高度資本主義におけるすべての「先進国」で拡大している貧困の問題に深く関わる問題である。

貧困ラインにある無産者に尊厳ある生活を保障するためには、共産主義(すべての資本を国有にする)、社会主義(剰余利益の再分配を国が行う)も、うまく機能しないことがすでに分かったし、トリクルダウンなんていうお話もあり得ないことが分かった。

それに代わる代替経済の一つとしてベーシック・インカム理論があり、それをインスパイアするものとして「修道経済」があることはこのブログ(4月)ですでに紹介したけれど、このデ・ソト理論は、「ベーシック・インカム」の対極にある代替経済である。

すなわち全ての人に最低収入を保障するのではなく、すべての人に最低「資本」、私有財を保障するという考え方だ。

フランスのような国では具体的にどう適用するかというと、

全ての個人が、自分の持ち物や身体的知的能力を使って得る収入には、月500ユーロ(7 万円くらい)までを、まったく税金の対象としないというモデルとなる。

これは自分の車を貸したり、ベビーカーを貸したりなどの、私財のささやかな「運用」から、副業や日雇いや短期、単発の仕事で得た収入などに適用される。

ユニヴァーサル補償だから、生活保護を受けていようと、夫が高収入のある妻が小遣い稼ぎをしようと、同じように、収入にカウントされない。

収入があるからといって生活保護がカットされたり配偶者控除的なものが取り消されたりすることもない。


「自分の所有しているもの」を使って収入を得ることの自由化だ。

勤労意欲、利益を生み出す意欲が促進される。

新自由主義経済の申し子で金持ち優遇だと批判されるマクロン大統領が関心を示している政策である。


マクロンと同じ社会党だったブノワ・アモンが「ベーシック・インカム」を固持するのに対して、逆方向からの弱者保護、貧困対策ということになる。


フランス型社会民主主義の行き詰まりを打開するものとなると意識されているのだろう。


理論としてのベーシック・インカムには説得力があると思うけれど、この、逆のやり方は、例えば「修道経済」とも逆の方向だということになる。


しかしこれが効を奏するのは、若い世代の貧困に対してだけだろうという気がしないでもない。

高齢者や病人、ネット環境についていけない人などは、取り残されるか、一定のアシストが必要になると思う。

ポイント還元やネットでのアフィリエイト収入、オークション、物々交換などですでにさまざまな「副収入」を享受している人はいるだろうし、スタートアップを支援する税制優遇もすでに存在はしている。


ただ、デ・ソト理論は、ベーシックでユニヴァーサルだから、いわゆる不法滞在者や難民にだって適用されるべきであるはずで、それなら、滞在許可待ちの人々がブラック企業に搾取されたり申請を取り消されたりするリスクは減る。

収監された先で過激派に洗脳されたりドラッグなどの違法取引にかかわったりするのとは別の道が開けるかもしれない。

とはいっても、そもそも国家主導の経済政策で、今の貧困の形が解決するのだろうかという疑問も残る。

平日にこんな記事をネットで書いたり読んだりできる人には関係ない、という話ではない。

同じ国のどこかで、同じ地球のどこかで、社会構造的に尊厳を奪われ、生存権を奪われる人々という「同胞」がいる限り、「全体」の調和と平衡は阻害される。


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by mariastella | 2018-05-16 00:05 | 雑感
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