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L'art de croire             竹下節子ブログ

近頃思うこと---バレーにコンサートにロイヤル・ウェディング

5/17、久しぶりに青空の広がった日、バロックバレーに行った。


公共交通機関に一人で乗ること自体がひと月ぶり以上だ。

午後はじめの生徒のレッスンの後、ゲラの校正に集中するつもりだったのが、クリスティーヌ・ベイルからSMSが届いて青空に誘われて出かけた。

彼女と二人だけだったので、かなり長い振付を通して踊り、バロック音楽と踊りについて、足と体幹のメンテナンスについていろいろなことを話し合った。


今年はクラシック・バレーの主任教師が足を手術することになり、その後、次々と5人の先生におそわった。バレーのレッスン場はヨガのクラスとしても使われていて、いろいろな小道具がある。先生によってゴムの帯や、さまざまなボールを使った訓練の仕方があり、今まで何十年も、一度も聞いたことのないようなヒントがいくつもあった。

そのことをクリスティーヌにも披露した。本当に、ひと昔前と違って、バレーのレッスンの世界は進化している。

私が日本語で作成した子供のためのバロック童話のシャコンヌなどにクリスティーヌが振り付けるというプランも考える。でも、私は演奏に回ったら、彼女といっしょに踊ることはできない。


18日は、カルテットでトルレリの練習をしてからヴィオラ・アンサンブルのシューベルトやビバルディの練習に参加、その後でブランデンブルク三番を弦楽オーケストラ編成での練習にも参加。バッハは、相変わらず、弾いていて夢中になれて楽しい。そして仲間もみんな生き生きしているのが伝わる。来週がコンサートだ。

この週末は聖霊降臨祭の月曜で休日なので、トリオの練習を一日中やることを決めている。

校正は、近代日本の革命とキリスト教の章を読み直している。

昨日の記事でも書いたが、日本の戦力を無化するためにアメリカが絶対平和の憲法を提案したのは皮肉だ。

日本もヨーロッパも「焼け跡」からの復興が第一で、まず人類史上最悪の核兵器を廃絶しろ、という声が世界のどこからも上がる暇がないままに、日本の軍備放棄とアメリカの「核の傘」がセットになってしまった。最初から倒錯的だ。


皇室存続というのも考えてみれば同じように倒錯的だ。

イギリスではヘンリー王子とメーガンの結婚式があったが、このメーガンさんは、黒人ハーフのアメリカ人で、自らも離婚経験があり両親も離婚していて、メキシコに住む父やその親類らをたどると、いわゆる「問題のある人々」が少なからずいる。父親もスキャンダルが発覚したり事故があったりして結婚式に出ることを断念した。

でもエリザベス女王がOKを出して、結婚式にかかる数億円の費用はすべて女王が出す。エリザベス女王は自分が突然王位継承者になったことに伯父と離婚経験のあるアメリカ人夫人との恋があったことを忘れていない。

もちろん、数十億円かかるという「警備」の費用は「税金」から出されるのだが、その何倍も、「経済効果」が見込まれるから、ブーイングは少ない。

BREXITによって、ヨーロッパから孤立するかのような印象を与える危機にあるイギリスにとっては政治的、外交的メリットも大きい。


日本の皇室の女性の婚約が相手の家庭の「問題」でいろいろ叩かれて、何かと言うと「血税」を使うのはいかがなものか、のように言われるのとは大違いだ。

第一、今は女王も「税金」を払っている。

王室にかかる費用よりも女王が払うものの方が大きいと言われるくらいだ。


「大違い」なのは当たり前で、イギリスの王室と国民の間には1760年以来の合意が生きていて、王家は貴族たちと同じように膨大な資産を持っていて不動産収入もあって、要するに「金持ち」のままなのだ。

今の王家はドイツ系だけれどわざわざウィンザーと名を変えて、ドイツとの二度の大戦に「勝利」し、王子たちもみな「軍隊」に参加している。

「戦勝国の王室」なのだ。


長い間「戦闘」とは無縁でやってきた日本の皇室が、明治維新で突然、近代式の国民皆兵軍隊の統率者の役割を担わされて、しかも一神教風味の「現人神」に祀り上げられた。

その挙句、世界大戦に敗れた。

そして、立憲君主システムとは無縁のアメリカのもとに、「皇室存続」が決められたのだ。


イギリスでさえ、王室を廃棄せよという意見はある。


確かに、冷静に見たら、互いに姻戚関係のある数々の王室が今もあちこちに残るヨーロッパって、中世ですか、というくらいにアナクロだ。

でも、多くの王室は、文化財であり歴史の証人であると同時に、メディアを通して消費されることで、国にとってのコストパーフォーマンスを成り立たせているようだ。

王や王妃をギロチンにかけた共和国フランスも、イギリスとモナコという「隣の王室」でロイヤル趣味を満足させているし、「大統領が王で、首相が為政者」というスタイルが暗黙のうちに認められている。


地続きのヨーロッパで「敗戦」国となったドイツやイタリア(しかもこの二国は長い間領邦国家だった)と違って、極東で「敗戦」国となった日本のその後の運命の差は大きい。


日本との共通点は、外国から訪れる元首たちがみな女王との会見と記念写真を望むことだ。首相はどんどん変わって短命な政権も多いが、「定年」も「選挙」もない女王はずっと「顔」であり続ける。1952年の即位以前の王室の顔を記憶している世代は少ない。誰にとっても女王は昔からいた「国母」的イメージ、いや、「祖母」のイメージにすらなっている。


「敗戦国」の負荷を引きずったまま同じ役割を要求される日本の皇室は気の毒だ。政治にタッチしないことと政治利用されることが別であればいいのだが。


by mariastella | 2018-05-20 00:05 | 雑感
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竹下節子が考えてることの断片です。サイトはhttp://www.setukotakeshita.com/

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