ウタツグミ (閑話休題)
子供の時から鳥を飼っていた。
ジュウシマツのつがいがひなを育てるのを見るのも好きだったし、手乗り文鳥も何羽も育てた。 手乗り文鳥がいる頃に読んでいた本はページの多くがくちばしの形に三角にちぎれていた。 猫を飼うようになってから、鳥とは縁がなくなった。 それでも時々、鳥を近くで観たくなるし、鳥の声を聞きたくなる。幸いうちの猫たちは完全室内外なので、庭には出さないから、庭が鳥たちのパラダイスになっている。 その中で、何度か、ウタツグミの声を聞いた、と確信したことがある。 姿は見ていないので、定かではないけれど。 「ウタツグミ」という名前はこのブログを書くために日本語をネットで検索して見つけた。「歌」という名前がついていてほっとした。 日本では珍鳥中の珍鳥の野鳥だとあった。1860年にヨーロッパから来た、英語ではソング・スラッシュだという。 この鳥は、学名そのものが Turdus philomelos という。philoはフィロソフィーのフィロで愛すること、つまりメロディを愛するツグミ。 フランス語名はGrieve Musicienne (ミュージシャン・ツグミ)。 このネーミングがすごく好きだ。 1km先からも聞えるという鋭い鳴き声、しかも、早朝一番に高いモミの木のてっぺんで歌ったりすることが多い。 鳴き方に即興性があって、独特のモティーフを数回繰り返し、終わりのストロフもちゃんと区別できる。最後に他の鳥の鳴き方を真似て終わることもあるという。 鳴き方を解説したビデオもある。 鳥の鳴き声の音楽と言えば、メシアンを思い浮かべる。 『鳥の小スケッチ』と呼ばれる小品集の題四番がこのウタツグミだ。 Messiaen - Petites esquisses d'oiseaux: IV. La grive musicienne ちなみにこのメシアンの曲六つのうち半分がヨーロッパコマドリで、他にクロウタドリ、ノヒバリがある。 野ヒバリは、今急激に減っていて絶滅を危惧されているが、50m-100mの空を水平飛行し、フランスの初春を告げる鳥だ。 メシアンがウタツグミの鳴き方を音楽的に分析した文は驚くべきものだ。 作曲家がインスパイアされたのも不思議ではない。 バロック時代は逆に、作曲家たちが自分の曲をカナリアに覚えさせて歌わせていたこともある。 鳥の歌と人間の音楽は互いに通じ合い、インスパイアし合えるということだ。 フランスのサイトでは、あるウタツグミの楽節の一続きの連鎖をこういうオノマトペで表したものがあった。 Pii-èh pii-èh pii-èh Kvièt kvièt Pii-èh pii-èh pii-èh Trruy trruy trruy codidio codidio 確かにヴァリエーション豊かだ。 その他に、《Tu dis oui》と表すのがある。 チュディウィ、と聞えるのだろうけれど、 「君がウィという。」(いいって言ってくれる、いいんだね、いいって言ってちょうだい)のような様々なニュアンスで、「チュディウィ」と繰り返すように聞こえるわけだ。 日本の鳥で「ブッポウソウ(仏法僧)」という鳴き声の名を持つ鳥がいるが、実際は間違いで、ブッ・ポウ・ソウと鳴くのはコノハズクだという。 ネットで聴いたがいまひとつ心を動かされない。 「日本三鳴鳥」というのがあって、 ウグイスの「ホーホケキョ」、オオルリの「ピリーリー」、コマドリの「ヒンカララ」だという。うーん、鳥は「歌い手」「音楽家」として認識されているというより、いわゆる「花鳥風月」の一要素という愛でられ方のような気がする。 「カッコ―」などの鳴き声も、ヨーロッパ音楽ではダカンなどすばらしい曲のモティーフになっているけれど、そしてドイツ民謡やカッコウ・ワルツなど、日本でも知られているし日本の童謡としても知られているけれど、あれほどはっきりした下降三度で真似られる鳴き声なのに日本では曲にならなかったのだろうか。 鳥の歌を取り入れることはフランス・バロック音楽の感性と近い。 それを考えると、日本の古謡や伝統音楽にもっと鳥の歌のモティーフがあってもいいと思うのだけれど、検索したら「笛・鼓・鳴子などで囃し物をして鳥を追い払う『鳥追舟』」が出てきて、鳥が追い払われていた…。 能管などは鳥の歌にぴったりだけど、即興以外に実際の鳥の歌にインスパイアされてモティーフかされたものは存在するのだろうか。 私が知らないだけかもしれないのでもう少し調べたり考えたりしよう。
by mariastella
| 2018-05-29 00:15
| 音楽
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