最近TVで観た映画その2
『ボヴァリー夫人とパン屋』アンヌ・フォンテーヌ
ついこの前観たルルーシュの映画に出てきたエルザ・ジルベスタンがやはり、彼女にぴったりな軽いインテリまがい、アーティストまがいの女性の役で出ている。
これほど「それらしい」キャラばかりやっていたら、役の幅が広がらないんじゃないかと気になってしまうくらいだ。
パン屋の夫妻と、その向かいに越してきたイギリス人夫妻の話だが、イギリス人の妻がパン屋に買いに来た時に出会うフランス人女性の役だ。
ひまわりの種のパンを説明する時にヒマワリという言葉を英語で言えないパン屋に「sunflower」だと助け舟を出してくれる。彼女はイギリス人と結婚しているのだ。(フランス語ではtournesolで、「陽周り」という感じだからヒマワリに近い)
で、三組の夫妻が食事をするシーンがあって、イギリスとフランスの互いの文化に対する憧れと国民への悪感情の両立を吐露して百年戦争はやめよう、などというジョークが出てくる。
彼らの言葉が英語になったりフランス語になったり、どちらもなまっていたり、少し不自由で仲間外れの気分になったり、という微妙なカルチャー・ショック、国民性や階級差、パリと地方、などのテンションが通奏低音になっているので、日本語版の予告編を見て、全部日本語の字幕を読んでいたらこの映画の言葉の面白さが抜け落ちてしまうなあと思う。
それにしても、ルキーニって、文学好きの妄想男役がはまりすぎていて、いつもは感心するばかりだけれど、この映画を観ていて、本当に大丈夫か、この人、って思ってしまった。
ジェマ役のジェマ・アータートンの魅力で成り立っているのかもしれないけれど、あまりこちらの琴線には触れない。
確かに公開当時は話題になった映画だし、ある種のフランス文学(マリヴォーとか?)にもあるフランス的くどさというか素直でない不自然さがべっとりとしているのが、ノルマンディの美しい風景で救われているという感じだった。