L'art de croire             竹下節子ブログ

6/23 沖縄慰霊の日に思ったこと

(これを書いたのは6/23です


今年の沖縄慰霊の日は、春にはじめてアブラチガマなどを案内していただいて、沖縄戦の犠牲の話などを子孫の方からお聞きした年だったのでしみじみと平和への気持ちを新たにした。

この日に向けて、案内してくださった沖縄のカトリックの方々に7/10発売の『カトリック生活』8月号の平和特集に載る記事の原稿を見ていただいてご意見もいただけたことも嬉しかった。


けれども、同時に、返還交渉で米軍が核貯蔵権を要求していたという米の公文書が公開されたり、名護市の農作業小屋での流弾事件などのニュースもあり、「慰霊」といっても犠牲者の魂を慰めるには程遠い現実がある。


その現実だけをクローズアップして眺めると、いったい沖縄の人たちはどうやって毎日を耐えながら暮らしていけるのだろう、とさえ思うこともある。

幸い人間には精神の安定を保つための防衛機制というものが無意識に働くので、戦争や暴力や治外法権や騒音や危険と隣り合わせに生きているとある種の「慣れ」が生まれるという。そのおかげもあってか、厳しい環境の中でポジティヴな取り組みも生まれているのが嬉しい。


最近ネットで知ったのは嘉手納外語塾という町立の学習塾の存在だった。

嘉手納町は極東最大の米軍空軍基地(品川区と同じくらいの広さ)が町の面積の88%大半を占める町だ。前に書いたことがある。


そんな町で、「耕す土地がなければ、頭を耕せ!(なんていい言葉だろう。ヴォルテールの『カンディード』の結びの句「自分たちの庭を耕さねばならない」というのを思い出す)」をコンセプトにして20年前に外語塾が発足したという。


入塾資格は本人か両親が町内に3年以上居住している1825で、受講は無料、塾生全員に給付型の奨学金が用意されているという。基本支給額は月25千円で、資格取得などの成績に応じて最高5万円が支給され、米軍基地内の事業所などでのインターンシップや、米国への短期留学も支援する。留学先で学生は沖縄の文化を紹介するプログラムもあり、グローバルな人材を育成しているという。

毎年15人程度の枠があるのに半分くらいしか埋まっていないというのが残念だけれど、これまでの19期で181人が卒業し、国内外の大学や大学院に在学中の者もいるそうだ。

沖縄戦では、追い詰められて断崖絶壁から身を投げた人々がいる。


ヴァレリーは『海辺の墓地』という詩の中で、「風立ちぬ、いざ生きめやも」という堀辰雄の訳で有名な「Le vent se lève. Il faut tenter de vivre ! (風が立つ、生きようとしなければならない!)」と書いた。


沖縄の美しい海は、死の場所ともなった。

それでも今も、陽が照り、風が吹く。

断たれてしまった多くの命を思う時、それでも、いや、だからこそ、「生きようとしなければならない」と、慰霊の日は教えてくれる。

 生きるために、頭を、心を耕そう。
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by mariastella | 2018-07-03 00:05 | 沖縄
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