L'art de croire             竹下節子ブログ

ワールドカップ  ドイツはロシアで勝たせない?

6/27、ワールドカップの一次リーグで、前回優勝チームのドイツが韓国に負けて敗退した。去年までは大好調で今年もいろいろ言われながらも優勝候補だったのに。

当然、サッカー解説者のコメントがとびかっている。

私には技術的なことは分からない。
もう敗退が決まっていた韓国が絶対格上のドイツに勝った金星のメンタルもすごいと思うが、この試合を落とせないドイツが冴えなかったのは理解できないという人が多い。

そしたら、周りにいるフランス人の団塊世代の男性たちが面白いことを言っていた。

最初からドイツはロシアでは勝てなかった、というのだ。

なぜなら、第二次大戦で、ドイツが独ソ不可侵条約を破って奇襲攻撃を仕掛け、ソ連に多大な犠牲者を出した。ソ連の歴史の中でソ連を侵略し攻撃したのはドイツだけだというのだ。
だからドイツはロシアのワールドカップで勝利するのは政治的に微妙だ、と。
それはメキシコに勝たせたことにもつながる。ドイツは第一次大戦の昔から、アメリカと敵対し牽制するためにメキシコを利用しようとした。このことは前に少し触れた。
だから、メキシコに勝たせることはロシアにおける一種の代理戦争なのだ、と。

この「トンでも解説」を聞いて、さすがの私でも、ドイツのナショナル・チームや監督らがそんな政治的配慮をしているなどとまったく信じられない。

でも、私を驚かせたのは、今回のロシアでのドイツの敗退とメキシコの突破というそれだけのことでその日のうちにこんな連想をする人たちが存在することそのものだ。

もちろん、サッカーのヨーロッパ大会でも、ドイツとイタリアとイギリスとフランスなどが勝ち進むと、第二次大戦のたとえを持ち出す人は必ずいる。

それほどサッカーの国際試合というのは「疑似戦争」の愛国心を誘発するらしい。
それでも、大国の中国やアメリカが予選落ちして出ていないのだから、実際の世界情勢とは何の関係もない娯楽に過ぎないのは自明だ。

それなのにフランスの「戦後生まれ」の世代で「ロシア、ドイツ、メキシコ」という国の組み合わせを見るだけでこういう発想をする人たちがいるというのは、当然ながら例えば日本の団塊世代の持っている世界のステレオタイプとはまったく違うのだなあ、とあらためて感慨を覚える。

そういえば、日本で韓国に対する新世代の?ヘイト・スピーチが生まれてきたのは2002年のワールドカップ日韓共催以来なのだという話を聞いたことがある。
経済的に優位な日本がサッカー先進国だった韓国との組み合わせでないと開催国になれなかったというイメージもあったのだろう。
スポーツの国際大会が平和のきっかけになることもあるというのに、共催という連帯のチャンスがナショナリズムを刺激することもあるのだ。

あらゆる面で「多様性」があるオリンピックと違って、サッカーのワールドカップの「疑似戦争」は前世紀の歴史にまで遡って人々を刺激するらしい。

でも、ドイツが勝つのを遠慮した、なんていうのはあり得ないとしても、こんなことをフランス人が言うくらいなのだから、ひょっとして、「ロシアでは絶対にドイツの勝利を見たくない、勝たせない」という空気がロシア人の集合無意識の中にあったというのは不可能ではないかもしれない。そんな空気を感じたドイツのチームが「勝ちづらかった」ということもあるのかなあ、などと漠然と考えてしまう。

愛国のプロパガンダや「必勝」の空気が時代を変えたり実際の侵略や戦争を誘発したりして来た歴史を思うと、たかが、ワールドカップの妄想、と切って捨てる前に、ここに覚え書きしておく。






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by mariastella | 2018-07-02 00:05 | 雑感
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