聖堂の奥の方に、昔は壮大な修道院棟が続いていた。
今は残ったその一部が博物館になっていて、19世紀のヴィオレ=ル=デュックが柱頭彫刻などを修復した記録が残っている。
その一部は、修復できなかったオリジナルで、新しいものと取り換えられた。
ここではオリジナルを見ることができる。
たくさんの紋章がかかっていた。これは、ヴェズレーが単独で世界遺産になってから、再びサンティアゴ・デ・コンポステーラへの巡礼の道の一つ(フランスのサンティアゴ・デ・コンポステーラの巡礼地)として1998の年に世界遺産に指定されてから20周年ということで、サンティアゴに行くまでに通過する場所の紋章を展示したものだ。
ヴィオレ=ル=デュックの仕事は驚くほど緻密だ。
デッサン。
こういう天使が
こうなる。
描かれた聖書と言われる柱頭群は傑作ぞろいだけれど、聖書だけではなく聖人伝もある。
これは聖アントニウスを誘惑する悪魔。
これも聖人と悪魔。ブルゴーニュ風の葡萄畑の場面もある。
3月はまだブドウの木が成長していない。
4月になると葡萄の葉をヤギに食べさせることができる。
この場所でしか見られないのは「奏楽の天使」ならぬ「奏楽の動物たち」。
これはヴィエルを弾いている。弓が欠損している。
完全形はこれ。
これは、楽譜を持っているのではなく、パンフルートを吹いているところ。
ヴィエルもパンフルートも、鳥の求愛の連想で堕落した「世俗音楽」とされ、この動物の横には、片側に、淑女が配され、反対側には、音楽を聴いて踊り、胸をはだけた遊女風に「堕落した」姿が配されていたという。
なぜかこの奏楽の動物の柱頭は復刻されないままになった。
本来ならこの部分だ。
ネットで「奏楽の動物たち彫刻」をフランス語で検索したら、ところどころに残ってはいるようだ。
でも最初にヒットするのがグリム童話の「ブレーメンの音楽隊」の彫刻だったのは笑える。
修道院跡から裏手に回るとブルゴーニュ風景のパノラマが見える。