ここ20年以上はバロック・バレエとバロック舞曲三昧の生活だけれど、子供時代にクラシックバレエのクラスで踊りと共に心身にしみ込んだクラシック・バレエ曲は、いつ耳にしても、「識っている」という記憶の「型」にすっぽりはまって懐かしい。
私はヴィオラ弾きで、ヴィオラの音域はほぼ私の歌える音域と重なるので、歌っている気分になるのが好きだ。
チェロは男声の音域に重なるだろう。
で、ヴァイオリンは天使の音域、これを清らかにかつしっとり響かせるのは至難の業だ。
それでも、時々聴きたくなるのが、グラズノフの『ライモンダ』のグランド・アダージョだ。
1898年マリンスキー劇場の初演でばりばりのロマン派音楽なのに、このレオニード・コーガンの演奏だけは別世界に誘ってくれる。音と、空気と、バレエの振付が同時に喚起される。
(ここには3曲入っているがそのうちの最初のもので4:07くらいまで。)
ヴァイオリン曲は鳥の求愛の歌の模倣とされて、教会の中で弾くのがタブーだった時期もあるが、確かにこれを聴くと、天使の音なのか悪魔の音なのか分からない。