なかなかまとまった本が読みないので、できるだけ新しい本を買わないようにしているのだけれど、このヒルデガルド・フォン・ビンゲンの研究書は画期的だ。
ベネディクト16世によって「教会博士」の称号を授与されたとはいえ、20世紀末以来のヒルデガルドのブームは、音楽作品などを除いては、主として、幻視にまつわる神秘主義的サブカルや、自然食や医食同源の「中世の知恵」的サブカルの二つに回収されていた。
あるいはカトリック界で政治的影響力を行使したとしてフェミニズムのコンテキストで語られることもあった。
そんな彼女についての「通説」を覆して、中世史の碩学であるマインツのフランツ・シュターブが、ヒルデガルドを本格的な歴史研究のテーマにして取り組んでいたことはよく知られていた。けれどもシュターブが2004年に61歳で亡くなったので、それきり新しい研究成果のことは知らなかったのだけれど、この夏、パスカル・フォトリエが、シュターブの研究を踏まえたヒルデガルドの伝記を出版した。
フランス語で読める!
パスカル・フォトリエは、ショパンやナポレオンの伝記も出している女性の文学研究者だ。
ナタリー・サロートの専門家でもあり、シモーヌ・ド・ボーヴォワールの研究もしている。ヒルデガルドも、そういうフレンチ・フェミニズムの視点からもとらえられているかもしれない。
日本では1994年に種村季弘さんが青土社から『ビンゲンのヒルデガルドの世界』という本で、ヒルデガルドの魂のドラマとか宇宙論の全容などと風呂敷を広げていたのを読んだことがある。種村さんだから、「幻視者」寄りではある。
今度の本で知ることのできる新事実が楽しみだ。
公式サイトに昔いろいろ書いていこうと思っていたのが、そのままになっている。
このブログ内でヒルデガルドを検索したら一つしか出てこなかった。
でも読んでみるとなつかしい。
こうしてみてみると、けっこう長い間ヒルデガルドについて書くことを封印していたのだろうか。
でも、彼女のことはずっと考えていたので、この本を読むことでブレイク・スルーの予感がする。