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L'art de croire             竹下節子ブログ

アレクサンドル・ジョリアン その6

(これは前の記事の続きです)

>>>とはいっても、苦しみは実際にありますよね。そしてあなたの場合、具合の悪さというのが、パーソナリティが2種類出てくることによってそれをさらに強めている気がします。メディテーションの方法論のアドヴァイスをしながら一方でストリップショーを見に行くというような。

A.J. ええ、その歪みはひどいもので耐えられないほどでした。自分がひどい矛盾の中にいる詐欺師のように感じていました。この本の大きなテーマはアクラシーです。聖パウロの提起した問題でもある「内的な分裂」です。私は明らかに、毎日の生活の中で、私の弱さや脆さ、自分が抹殺したいと思っている過去の男の数々の習慣を隠そうとしています。この内的な戦いをどうすればいいのでしょう。愛情にまつわる依存は、普遍的な苦しみの一つの形です。私たちは明らかに、自分をコントロールできる主人ではない。あらゆることが「意志の力」に頼むというあり方を無化してしまいます。たんに意志を強固にすることに比べれば、「禁欲」など繊細で楽しいものだと言えるでしょう。

Sekko : ここでのアクラシアはアリストテレスのアクラシアではなくパウロに関係がありそうだ。

「内的な人間」に関するパウロの言及にはこういうものがある。

I –「内なる人」(ローマ人への手紙 7, 7-23).
II –
「外なる人」「内なる人」 (2 コリント 4, 16).
III –
「内なる人」(エフェソ 3,16-17).
IV –
「成熟した人間」(エフェソ 4, 13-16)
V –
新しい命/古い自分(ローマ 6, 2-11).
VI –1
人の新しい人(エフェソ 2, 14-19).
VII –
情欲に迷わされ、滅びに向かっている古い人/「古い人」「新しい人」(エフェソ 4, 22-25 et コロサイ 3, 9-10).

この I  は示唆的だ。 長いけれど引用。(前にもスコセッシのことで引用した。)

パウロってすごい哲学者でもある。しかも弱く、真摯だ。パウロがいなかったらジョリアンもこんな本を書かなかったのではないか。

>>>では、どういうことになるのか。律法は罪であろうか。決してそうではない。しかし、律法によらなければ、わたしは罪を知らなかったでしょう。たとえば、律法が「むさぼるな」と言わなかったら、わたしはむさぼりを知らなかったでしょう。

ところが、罪は掟によって機会を得、あらゆる種類のむさぼりをわたしの内に起こしました。律法がなければ罪は死んでいるのです。

わたしは、かつては律法とかかわりなく生きていました。しかし、掟が登場したとき、罪が生き返って、

わたしは死にました。そして、命をもたらすはずの掟が、死に導くものであることが分かりました。

罪は掟によって機会を得、わたしを欺き、そして、掟によってわたしを殺してしまったのです。

こういうわけで、律法は聖なるものであり、掟も聖であり、正しく、そして善いものなのです。

それでは、善いものがわたしにとって死をもたらすものとなったのだろうか。決してそうではない。実は、罪がその正体を現すために、善いものを通してわたしに死をもたらしたのです。このようにして、罪は限りなく邪悪なものであることが、掟を通して示されたのでした。

わたしたちは、律法が霊的なものであると知っています。しかし、わたしは肉の人であり、罪に売り渡されています。

わたしは、自分のしていることが分かりません。自分が望むことは実行せず、かえって憎んでいることをするからです。

もし、望まないことを行っているとすれば、律法を善いものとして認めているわけになります。

そして、そういうことを行っているのは、もはやわたしではなく、わたしの中に住んでいる罪なのです。

わたしは、自分の内には、つまりわたしの肉には、善が住んでいないことを知っています。善をなそうという意志はありますが、それを実行できないからです。

わたしは自分の望む善は行わず、望まない悪を行っている。

もし、わたしが望まないことをしているとすれば、それをしているのは、もはやわたしではなく、わたしの中に住んでいる罪なのです。

それで、善をなそうと思う自分には、いつも悪が付きまとっているという法則に気づきます。

「内なる人」としては神の律法を喜んでいますが、

わたしの五体にはもう一つの法則があって心の法則と戦い、わたしを、五体の内にある罪の法則のとりこにしているのが分かります。 <<<


III は、

>>どうか、御父が、その豊かな栄光に従い、その霊により、力をもってあなたがたの内なる人を強めて、 信仰によってあなたがたの心の内にキリストを住まわせ、あなたがたを愛に根ざし、愛にしっかりと立つ者としてくださるように。<<<


ジョリアンは自分のことを「キリスト者」であるとは言わないのだけれど、キリスト教の教養だけではなく信仰がそのルーツにあるのだなあと思う。

それにしても、日本語に訳されている『人間という仕事』だけでなく『弱さ礼賛』『なぜと問わずに生きる』など、「障碍者」という「弱者」のルーツから生き方を哲学して人々を鼓舞してきた哲学者が、依存症という形で地獄を経験してからパウロの言葉に到達したというのはすごい。

( 「わたしは自分の望む善は行わず、望まない悪を行っている。 」というのは、いつ聞いても、身につまされる。でも、前にも書いたけれど、私に関して言えば、実は、「望む善」というのは行っているし、「望まない悪」は行っていないのが実感だともいえる。問題は、「望まない善」と「望む悪」が山のようにあることの方なのだ。)


by mariastella | 2018-10-29 00:05 | 哲学
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竹下節子が考えてることの断片です。サイトはhttp://www.setukotakeshita.com/
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