L'art de croire             竹下節子ブログ

ある戦没者追悼碑

第一次世界大戦の終戦100年記念式典で、リーダーシップをとったのはフランスのマクロン大統領だったけれど、Brexitを前に式典をスルーしたテレザ・メイ、平和フォーラムには欠席したトランプ、こわもてのプーチンに、レームダック化しているメルケル首相らの間では、マクロンがいくら平和や共存の美辞麗句を並べ立てても空回りの観が免れない。

そんなフランスだけれど、そして、第一次大戦の悲惨の後で結局第二次大戦に突入してしまった懲りないヨーロッパではあったけれど、それでも、このフランスに希望があり信頼がおけると思わせるものがある。

ロワール県の サン・マルタン・デストレオー市(Saint-Martin-d'Estréaux)にある有名な戦没者碑だ。

c0175451_18063909.jpeg


第一次大戦の後の戦没者碑はフランスの津々浦々まで広がった。

基本はその町の戦死者の名を刻むもので、第二次大戦の後でさらに書き加えられたものも多い。

で、このサン・マルタン・デストレオー市の碑も、表は戦死者の名前のクラシックなものだが、裏の碑文が3面に渡る徹底した平和主義のものですごい。

c0175451_18065912.png


第二次大戦に入るまでの間に再び高まるナショナリズムの中で、碑文を考えた市長への脅迫や碑を破壊する呼びかけなど、さんざん物議をかもしたが、第二次大戦後に文化財認定されている。 (1922年に64名の戦死者の名が刻まれて建立、裏の文は終戦の10年後に書き加えられ、第二次大戦後には11名の戦死者の名が加わった。)

すばらしいので後に全文コピーしておく。

抄訳、意訳すると、

「平和が欲しいなら戦争に備えよ」というモットーは危険なものである。

平和な未来のためには健全な指導で国々と個人の精神を高めなければならない。


戦争のために費やされた全ての努力や金が平和のために使われていたら?

社会や産業の発展のために使われていたら?

人類の運命はずっと違ったものになっていただろう。

この世から多くの悲惨がなくなり、次世代への膨大な負の遺産のかわりに普遍的な善を残せるだろう。

戦争と戦争を始めた人々は呪われるべきだ。

>>

この戦争のバランスシート :

千二百万人以上の死者。

同じ数だけの生まれなかった人。( Sekko : 兵士のほとんどは健康な若者だから生きていたら確かに戦後に平均1人は子孫を残していただろう)

さらに多くの傷痍者、未亡人、孤児

破壊による数えきれない何十億のさまざまな損害

人類の悲惨の上に築かれたスキャンダラスな財産

罪なき者たちの制裁

罪ある者たちの褒賞

すべてを失った者の辛い人生

膨大な支払い請求

<<

この戦争はもう十分な苦しみと悲惨を与えただろうか ?

十分に人を殺しただろうか ?

人類が今度は戦争を殺すという知性と意志とを持つにいたるほど十分に ?

>>>

いやあ、第一次大戦後の世界で、一応の「戦勝国」で、大統領までドイツへの報復感情を隠していないような時代に、こういうことを考えてきっちり文にした視野の広さ、知性、先見の明と勇気には驚嘆するばかりだ。

結局第二次大戦に突入したし、百年経った今の世界も武器や軍事力を拡大するばかりで全然進歩していない、などと嘆く前に、こういう言葉を希望と共にしっかり継承していこう。

(碑文)

« SI VIS PACEM. PARA BELLUM ! ... ou
Si tu veux la paix. prépare la guerre !
est une devise dangereuse

SI VIS PACEM. PARA PACEM ! ... ou
Si tu veux la paix. prépare la paix !
doit être la formule de l'avenir
C'est à dire :
QU'IL FAUT AMÉLIORER L'ESPRIT DES NATIONS
EN AMÉLIORANT CELUI DES INDIVIDUS.
PAR UNE INSTRUCTION ASSAINIE ET LARGEMENT RÉPANDUE.
IL FAUT QUE LE PEUPLE SACHE LIRE.
ET SURTOUT COMPRENDRE LA VALEUR DE CE QU'IL LIT.


SI TOUT L'EFFORT PRODUIT ...
ET TOUT L'ARGENT DÉPENSÉ POUR LA GUERRE
L'AVAIENT ÉTÉ POUR LA PAIX... ?
POUR LE PROGRÉS SOCIAL, INDISTRIEL ET ÉCONOMIQUE ?
LE SORT DE L'HUMANITÉ SERAIT BIEN DIFFÉRENT
LA MISÈRE
SERAIT EN GRANDE PARTIE BANNIE DE L'UNIVERS, ET
LES CHARGES FINANCIÈRES QUI PÈSERONT SUR LES GÉNÉRATIONS
FUTURES. AU LIEU D'ETRE ODIEUSES ET ACCABLANTES ...
SERAIENT AU CONTRAIRE
DES CHARGES BIENFAISANTES DE FÉLICITÉS UNIVERSELLES

MAUDITE SOIT LA GUERRE. ET SES AUTEURS !


BILAN DE LA GUERRE :
PLUS DE 12 MILLIONS DE MORTS !
AUTANT D'INDIVIDUS QUI NE SONT PAS NÉS !
PLUS ENCORE DE MUTILES, BLESSES, VEUVRES ET ORPHELINS
POUR D'INNOMBRABLES MILLIARDS DE DESTRUCTIONS DIVERSES
DES FORTUNES SCANDALEUSES EDIFIEES SUR LES MISÈRES HUMAINES
DES INNOCENTS AU POTEAU D'EXECUTION
DES COUPABLES AUX HONNEURS
LA VIE ATROCE POUR LES DESHÉRITÉS
LA FORMIDABLE NOTE À PAYER

La guerre aura-t-elle enfin ...
assez provoqué de souffrances et de misères ..?
Assez tué d'hommes...?
pour qu'à leur tour les Hommes aient l'intelligence
et la volonté de tuer la guerre..? »


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by mariastella | 2018-11-15 00:05 | フランス
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