ミッシェル・セールと若者たち(続き)ミッシェル・セールが、 7人の若者と話し合った記事の続き。 まず、こういう場合、7人のうち過半数の4人が女性であることはフランスではかなり普通な感じがする。 ミッシェル・セールは、若者たちをテーマに、『親指トム』のフランス語である「小さな親指」を女性形にしたタイトルの本を出した。それがなぜことさらに女性形なのかと聞かれた答えはこうだ。 私の世代の教師たちはみな女生徒の方が男生徒よりも頭がよいこと、より集中力があり、よりプロフェッショナルであり、よりモティヴェーションがあることを体験してきた。なぜか? その時代の女性たちには獲得すべきポジションがあったからだ。学校では、いい成績を得るために男子よりも努力した。女性の地位を大いに引き上げることになったこの世代に敬意を表するために女性形にしたのだ。 だって。 これってかなり微妙な気がする。 東京医大の不正入試のことも思い出されるけれど、同じ条件ではたいてい、どこでもなんでも女性の方が成績がよくなる。 そのことについてことさらに、女の子はまじめにコツコツ努力するのに男の子は自由で独創性があって、コツコツでは負けるけれどいざとなったら力を発揮する、とするのは、私が子供の時から言われていた。 小学校でも、女の子の方が成長が早いからはじめは男の子にまさっていても、「身体が変わる」と成績が落ちるという言説があったし、高校でも、たとえば、1年生では女生徒ががんばっても、2年生くらいで「男生徒が本気を出す」とぐんぐん伸びて最終的には女生徒を追い越す、のような言説があった。これはプロフェッショナルでも同じで、最初は男と互角か男以上の仕事をしていた女性も「結婚、出産、育児」、果ては「更年期障害」でコスパが落ちるという」たぐいの言説がついてまわる。 「理数系の頭」を上位として、理科系かどうか、という男女差もよく言われていた。例えば東大でも理3を目指すのは圧倒的に男生徒で、文系はそれこそその後のコスパのよさそうな法科や経済は別として人文科学系の文3は、「他の学部は難しい」人、職業選択の優位を考慮しなくてもいい女生徒向き、というイメージだった。 (私に関しては、人文科学以外の分野に興味がなかったので選択ははっきりしていたけれど、確かにこういう偏見で見られるのは不愉快だったことを覚えている。いわゆる進学校にいたので、その高校で学年50番以内だか、100番以内だかの生徒で文3に落ちた人はそれまでにいない、とかいう統計もあった記憶があるけれど、「理3にいけないから文3」などと思われるのが嫌なので3年の時点では意味もないのにトップでいた気がする。いや、意味と言えば、私はお稽古事好き少女であらゆる競争が嫌いで学校ではサボリの怠け者でもあったけれど、さまざまな偏見にさらされている周りの女生徒たちの嘆きや諦めを知っていたので、それを相対化して同性に自信を持ってもらうという使命感は自覚していた。) ミッシェル・セールはジェンダーにまつわるいろいろな言説に考慮して、彼自身が教師として体験した「知的活動における女性優位」の実態をリスペクトしてこういう表現になったのだろう。 でも、それなら、今は、もう「女性の地位が上がったから、男子よりも努力する必要がなくなって、成績も自然に拮抗している」とでも言いたいのだろうか。 確実に言えるのは、全体の傾向というものがあったとしても、ミッシェル・セールのような人が「一般化」して表現してはいけないということだ。 そして、遺伝学的な違い(例えば、雌猫は子猫の数を数えて確認できるような機能が遺伝子的に組み込まれているので一般的には明らかにオスより頭がよくて複雑で警戒心が強い。)はあったとしても、別のところでも書いたけれど、人には様々な「発達障害」があって、それがどういう環境で矯められたり克服されたり迂回されたりしてきたかによっての違いが実は非常に大きいと思う。 そこに気がつくと、いわゆる「男女差」なんて時代と文化の文脈による恣意的なものしかないなあ、と近頃つくづく分かってきた。
by mariastella
| 2018-11-19 00:05
| フェミニズム
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