映画館では絶対見ないような映画を最近TVでなんとなく見てしまった。
原題の『ポリス-パイソン357』のコルト・パイソンはマグナム弾357が撃てるリボルバーのロールスロイスと言われたものだそうで、その「回転銃」の回旋、円形のイメージそのものが、時計の文字盤や丸く切り取られた写真などと共にモティーフのひとつになっている。
イヴ・モンタンとシモーヌ・シニョレというカップルが共演しているところにノスタルジーをそそられたのだ。
わりと最近シモーヌ・シニョレの若い頃の映画を観たからかもしれない。
私がフランスで済み始めた頃はまだこのカップルは健在だった。
今はもうどちらもいない。
この映画は1976年制作だから、ちょうど私がフランスに住み始めた頃のものだ。
イヴ・モンタンは50代半ばだけれど、もう初老の哀愁を漂わせる役柄になっている。
こんなにうまい俳優だったんだ、とあらためて思う。
始めはあまりにも遅い展開で、もう見るのをやめてしまおうかと思った。
でも、イヴ・モンタンの演じる独身で拳銃マニアの部長刑事が、有能なのか無能なのか、カッコいいのかカッコ悪いのか分からない不思議な立ち位置で、ほとんど不条理なコメディかと思えるほどに、不器用にカタストロフィへと突き進んでいく。
後半のモンタンはほとんど言葉を発することがなく、刑事の本能で動いているのか、保身の本能なのか、愛する女の死による自我の崩壊なのか、不可解さと不運さが交錯するその姿にはなかなか訴える力があって、結局、文字通り自壊していく最後まで見てしまった。
「運命の女」を演じるのが、なんだか無邪気で清純そうなステファニア・サンドレッリで、彼女からも懐かしさが揺すぶられる。
何といっても学生時代に日本で見た『暗殺の森』(ベルトリッチ)でのドミニク・サンダとのタンゴのシーンだ。
当時の後輩だった映画研究家の平野共余子さんから絶対お勧め、と言われてみたのでそのシーンばかりが記憶に焼き付いている。
この映画は少なくとも、いわゆる「刑事もの」としては異色の性格ドラマで、メルヴィル作品と同様、「フランスもの」の独特の味が際立っている。