私は日本にあるロシア正教の教会がどの主教区に属しているのか知らない。
フランスでは最近、11月28日に大異変が起こった。
コンスタンティノープルの大主教が、西ヨーロッパのロシア正教会を切り離すと宣言したからだ。
日本もそうだろうが、1917年のロシア革命のせいで、多くの白系ロシア人(これは白人という意味ではなく、共産主義の赤に対する色だ)が日本にもヨーロッパにも亡命した。
フランスでの白系ロシア人コミュニティは自分たちの教会を創ったけれど、本家のロシア正教会がソ連に従属しているのを見て、ソ連配下のロシア正教会の大主教を頂くのを拒否した。
で、1931年以来、彼らはコンスタンティノープル大主教を頂いている。
今回コンスタンティノープルから切られるとなると、同じ「ヨーロッパ」のギリシャ正教会に向かうとみられる。
ロシアのキリスト教と言えば、もとはウクライナ、キエフから広がった。
(ここ とか ここ 参照)
それなのに、ウクライナの正教会は歴史の流れとロシア帝国主義の中で、もう332年も、ロシア正教会に組み入れられてしまっている。
もともと、迫害の時期を経た後でキリスト教を国教にしたローマ帝国が、ローマからコンスタンティノープルに首都を移してから、コンスタンティノープルは「第二のローマ」といわれていたが、イスラム教の登場でギリシャ・トルコの東方正教は力を失った。で、正教の信者数が世界一となったロシア正教がモスクワを「第三のローマ」と自称することになった。
で、もう数年越しのウクライナとロシアの対立、一触即発の事態を前にして、10月15日にコンスタンティノープル大主教が、ウクライナ正教会をモスクワから独立した「正教会」だと公に認めたのだ。それは、コンスタンティノープルが「ロシア正教会」によるウクライナ支配を否認したことになる。
その結果、それまでコンスタンティノープルの大主教を頂いていたヨーロッパのロシア正教会も「離縁」を余儀なくされたというわけだ。
私にはパリのロシア正教会に通う友人もいるので、他人事とは思えない。
ロシアとウクライナ情勢もフランスにいると脅威の種だ。
ウクライナの作家が、もともとウクライナとロシアの民衆の政治感覚はまったく違う、と言っていた。
ロシア人は皇帝を崇めるのが好きだ、皇帝が気に入らなくなったら殺して別の皇帝を立ててまた崇める(イワンでもエカテリーナでもレーニンでもプーチンでもOK?)、でもウクライナの民衆は代々民主主義メンタリティの持ち主で、独裁など耐えられないのだそうだ。
これからどう展開するのか分からないけれど、忘れないようにここに覚書しておく。