うちの近くには歩いて5分くらいのところに月水土と週三回の朝市がたつ広場がある。
メトロを乗り継いで買い出しに来る人がいるくらい新鮮で安い青果や魚がたくさんある。
衣服や靴も売っている。私はめったに行かないのだけれど、たまに行くとその安さに愕然とする。
昔、生活に困窮していたフィリピンのメイドさんがそこで革のバッグなどをよく買っていたが、100 円ショップほどではないにしろとにかく安い。セーターやジーンズなども5ユーロ、10ユーロなどがいくらでもある。化粧品や雑貨などは1ユーロでほんとうに100円ショップ並みだ。
私はもう30年くらい前、従兄に頼まれてサントノレの日系高級プレタポルテの名目社長を少しの間やっていた。その時、前の年のバーゲン(フランスでは条例で決まったバーゲン期間や条件が細かく決まっていた。「規制緩和」の今もその名残はある)で売れ残った商品は地下室にしまわれていて、それをliquideurという専門業者が買いたたきに来ることを知った。彼らは付近のブティックから売れ残りの服を一括買いし、ブランド名のタグを外して地方の朝市などに卸すのだった。だから、朝市に並ぶ既製服の中には「元高級品」があるので見逃してはならないと教わった。
でも、実際そういうものにあたることは少なく、今の朝市には、「安かろう悪かろう」風のペラペラの服がたくさんあり、それが飛ぶように売れている。赤ん坊や幼児の服はなるほどと思う。長い期間着るせるわけではないので、洗って着まわして捨てるという方法もあるだろう。あまりにも種類が豊富なので私もつい買ったことがある。5ユーロの猫柄のパジャマを買って、一度洗濯したら終わりかなと思っていたら、意外と縫製もしっかりとしていて驚いたこともある。
で、暮らし向きが楽ではないだろう移民の女性たちが朝市で実によく服を買っているのを見て、女性は安くてもこうしていろいろな服を買うのが楽しみなんだろうなあと思っていた。
ところが、先日のラジオで、今地球を汚染しているものの第一セクターは燃料系だけれど、その次がローコースト衣料なのだときいた。
ローコースト衣料が第三世界の女性や子供の低賃金長時間労働搾取によって成り立っていることを知ってはいた。ところがそれだけではない。
世界に出回るローコースト衣料の大半は綿製品で、その綿花の栽培には大量の農薬が投下されていて、その綿を染める染料も無規制で毒性のあるものが多いのだそうだ。染める人にも健康被害がある。すなわち、栽培、染め、縫製の全ての過程で自然環境も社会環境も汚染している。これを防ぐには、ローコースト衣料を大量に買っては捨てるという消費の仕方をやめるしかないという。
同じエコロジーでも、大企業であるエネルギー産業や自動車産業のコンプライアンスだとか直接口に入る農作物のことには注意が向きやすいけれど、衣料も巨大な環境汚染セクターなのだと聞いて、昔ながらの「いいものを長く着る」ことの大切さをあらためて思う。
今フランスは公式のバーゲンシーズン。「お買い得」そうな品々を眺めていろいろな感慨を覚える。